広也の誕生日
今日は11月28日、俺の誕生日だ。といっても祝ってくれるのは家族と雪華だけ。
中学から仲の良い厳さんと昌史も俺の誕生日は知らないし、俺も二人の誕生日は知らない。年に一回だけだし、わざわざ言う必要も無いしな、と俺は思っているんだけれど、同年代の男子の友達同士って教えてプレゼントとか渡すものなの?小学生時代に一切触れてこなかったから不明なんだよね。今更聞けないってのもあるし、さ。
雪華と釣りをしてきたので、数日は魚の献立だったから、今日は俺の要望でステーキとなっている。妹弟は好き嫌いがほとんど無いからな、グレしゃぶも喜んで食べていたよ。
まあ、愛美と朝輝の2歳の時のイヤイヤ期は大変だったけどな、成長する上で欠かせない期間とはいえ泣き喚いてスゴかった。ただ、食事に関しては大好きな兄の俺が二人の目の前で美味そうに食べると興味を示して手を伸ばしてくるので、二人用に作ってあるのを口に入れるやり方で食べさせていた。すんなり食べるものだから、朝と夜の食事担当になったのは懐かしい思い出だな。イヤイヤ期が終われば何事も無かったようにパクパクと食べるんだから不思議だよ。
さて、内宮班の皆にもわざわざ誕生日を教える必要も無いので、雪華と一緒に普通に帰宅する。
ただ、帰宅したら愛美と朝輝から「「おにいちゃん、おたんじょーびおめでとう」」と言って俺の似顔絵をプレゼントされたので、しばらくの間は部屋に飾っておく事にした。彩夏からも「おたん生日おめでとう」の言葉とともにシャーペンをくれたので「大切にするね」と言って受け取った。このシャーペンは使わないでおこうと決める。
それぞれのプレゼントを受け取った後は三人の頭を撫でておく。年の近い兄弟だと喧嘩が多いと聞くけれど、俺の場合は年が離れているから可愛くてしょうがないのだ。
晩飯のステーキを食べ終えたら雪華がケーキを持ってきた。今回はフルーツケーキのホールだった。俺に内緒で雪華が注文していたらしい。愛美と朝輝は“フー”しないの?って顔だけれど流石にやらない。やれと言われても勘弁してくれ、恥ずかしいから。
ケーキを食べ終えて、まったりしていると両親が封筒を渡してきた。
「これは?」
「私達からのお祝いだ。これで好きな物を買いなさい」
「そんな、高校生になったし別にいいのに」
「広也もわたし達にとっては大事な息子なの。だから受け取って、ね」
「わかった。ありがとう、父さん、母さん」
「じゃあ、次はあたしね。ひろ君、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
雪華のプレゼントは財布だった。今使っているのが少し痛んでいるのを見て選んでくれたのだろう。
「これは、仕舞っておかずに使ってね。その為に買ったんだから」
「わかった。後でこれに移しておくよ」
「うん」
こうして俺の誕生日は終わったと思っていたのだが、俺が風呂に入っていると。
「おじゃましま〜す」
と雪華が入ってきたのだ。俺は慌てて大事な所を隠して雪華を見ると、黒の布面積の少ないビキニを着ていらっしゃった。
「雪華さん?何のお戯れでございましょ?」
「背中を洗ってあげようと思って」
「いや、でも、目のやり場に困る装いなんだけど?」
「そりゃ、誕生日サービスだし」
「こんなの雪華の両親に見られたら、同居解消かもしれないぞ?」
「大丈夫!お母さんの許可は得てるし、子供はダメよって言われたけどね」
「そういう問題じゃなーい」
俺の大声は風呂場に虚しく響いたのだった。だって結局は背中を洗ってもらったのだから。
その後。
ウチの浴槽は大人が足を伸ばして入れるほど広いんだけど、雪華ってば俺の足の間にスッポリ入って一緒に入浴してるんだよね。
「なあ雪華。流石に血流が良くなりすぎて、のぼせそうだから出たいんだよ。だから、先に出てくれない?」
「あはは、あたしも同じだよ。風呂上がりに一緒にアイス食べようね」
そう言って先に出て脱衣所に行ってくれたので一気に力が抜ける。刺激が強すぎますって。
雪華が脱衣所から出て行ったのを確認して、俺も浴室から出てパジャマに着替える。
ダイニングテーブルで待っていてくれた雪華と一緒にアイスを食べて、歯を磨き寝ることに。寝る前にはキスもしてくれたよ。
雪華が俺の部屋から出て行き、ホッと一安心していたら今度は彩夏が入ってきて一緒に寝ると言ってきた。そういや、去年の俺の誕生日も一緒に寝たっけなと思い出して一緒に寝ることにした。
(こんな楽しい誕生日をありがとう)




