日曜は別行動
今が開花時期のランに寒蘭というのがある。日本の在来種で野生のは減少して保護されている地域もあるけれど、様々な品種が作出されていて出回っているのは人工栽培されているものがほとんどだ。この寒蘭は一部の洋ランみたいに花からすごくいいニオイがする。
似たようなので、春に開花する春蘭があるけれど、日本に自生しているものはニオイがしない。まあ、一部地域にはニオイがするのもあるにはあるけれど、ね。
さて、そんな寒蘭の展示即売会に俺は来ている。雪華は残念ながらバイトなので不在。なら、昨日椎の実なんて拾ってないでこっちに一緒に来いよ!と思われても仕方ないけれど、椎の実拾いも一緒にやりたかったんだからしょうがないだろ!
会場内は寒蘭独特の花のニオイが充満していて心地よい空気となっている。今回の会場は前回雪華と一緒に来た多肉植物の即売会場とは違う場所で、屋外の開催となっている。
俺が狙えるのは作落ち品(※前年よりも出来が悪いこと)や選別外(※選別時の基準に漏れたもの、選別漏れともいう)が対象になる。
正直に言うと選別品や有名品種になると、値段は5桁6桁は当たり前になるからな。色々やっている俺にとっては悩んでしまう金額だ。まあ、その位する値段でも即決するものは即決するんだけどさ、寒蘭に関しては申し訳ないけどあまり力は入れていない。
そうして会場を物色して、自分にとって気に入った開花中の個体を数点購入したら帰宅する。雪華が一緒なら物産展とかも覗いたかもしれないけどね。
購入した寒蘭とウチで栽培中で開花しているのを玄関に飾る。来客なんてほとんど無い我が家だけれど、芳香剤代わりにもなるからさ。
雪華をバイト先に迎えに行った帰りの会話で。
「あたしも寒蘭展行きたかった」
「そう拗ねないでくれよ。昨日の椎の実拾いだって雪華と一緒にやりたかったんだから。それに毎年開催されているから来年行こう、な。それに他にも展示即売会はあるから一緒に行く機会は多いからさ」
「う〜。ま、全部無理なのはわかってはいるんだけどね」
猫の唸り声みたいな声のあとに、そんな事を言ってきた。頭ではわかっているんだけど、気持ちとしてはってヤツだろうな。
「よし!話題を変えよう。そういえば、結局ガサガサは夏休み最後あたりので終了したし、釣りも最近行ってないね」
「そう言われると、そうだな。雪華と二人だけの釣りは行ってないな。ガサガサは自然消滅したって感じだけれど俺の中では、やり残した感覚は無いんだよな」
「ガサガサはもうやらないの?」
「うーん。ショウジンガニの代わりにワタリガニを採りに行くのもアリだけど“潮”によっては満ちてる時間だし、難しいよな」
「ならさ、飼育部屋にある冷蔵庫で飼育しているダンゴウオとかエサ用を採りに行くのはどうかな?」
「無理に行く必要は無いな。肉食魚のエサも通販購入で問題無いしさ。それにダンゴウオは夜行性だからさ、夜の冬場の潮溜りは危険だから購入したほうが安全だしさ」
「そっか。じゃあ釣りは?」
「雪華と二人だけの釣りは冬休みまで無いかもしれないな。今度明槻さん達と釣り具屋に行くだろ?そうなると、明槻さんと一緒に行くのは確定になるかもしれないだろ?それに12月になれば期末試験が近いし、それが終われば冬休みだからさ」
「そう言われると、行ける日はもう無いね」
「だろ?でも、それは今年の話で来年というか長いスパンで見れば、行く機会は多いよ」
「それは分かるんだけど、ね」
「まあ、俺も雪華の気持ちは理解できるけど、これから先も夫婦になって長い年月一緒にいるんだしさ」
「んもう。高校生のこの時間に行くのがいいんじゃん!」
軽くペシッと肩を叩いてくる。
「あはは。ごめんて」
最後はイチャつきながら帰宅する。けれど、雪華には言えない。もし、文化祭を含めた内宮班で打ち上げをする場合は前回同様に一人である魚を釣りに行く、とは。家族用でも釣りに行く、とは。ヤツが生息する場所は磯場だから雪華を連れては行きたくないけれど、釣ってきたのが美味しいのであれば許してくれるハズだ。