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椎の実拾い

 場所によっては遅いけれど、俺が住むエリアではこの頃に収穫する楽しみがあるのが椎の実だ。この実はアクが無いので生食も可能だけど、炒ったり、クッキーにしたりといった加工をしても美味しいのだ。

 ここに引っ越しして、椎の実が拾える場所を見つけてからは毎年拾いに来ている。

 そんな訳で土曜の休みに雪華と彩夏と一緒に椎の実拾いにやって来た。この場所は犬の散歩とかで気軽に立ち寄ることは出来無いので汚染されていない。


「それじゃ、拾っていくか!」

「はーい」

 元気よく手を挙げて拾い始める彩夏にホッコリしながら俺も拾い始める。とはいえ、バラバラに落ちているのではなく、ある程度まとまって落ちているので拾うのは簡単だ。


 30分も拾えばかなりの量を収穫できるので終了して帰宅することに、帰り道で。

「かなり拾えたね」

「だな。ただ、ここから食べられない実を選別するから実際に食べられるのは8割位だと思う」

「そうだね。ところで銀杏は拾わないの?」

「銀杏は競争率が高いしさ、それに食べられるようにするまでの加工中はクサイだろ?やりたくないのが本音」

「あはは。確かに」


 俺は彩夏と手を繋いでいて、彩夏は若干スキップ気味で歩いていると。

「あら、双子ちゃんのお兄ちゃんじゃないの!」

 げっ。保育園では有名なスピーカーおばさんに遭遇してしまった。この人、噂話が好きな上にかなり盛って話すから嫌われているんだよね。

 まてよ?今回は利用させてもらうか!

「どうも、こんにちは」

「お散歩?」

「そうですね。天気も良いので」

「あら?皆で何を持ってるの?」

「これは椎の実ですよ。ご存知かと思いますが家族が多いので、大切な食料なんですよ」

「あらあら、そうなの」

 とここでタイミングよく彩夏が。

「おにいちゃん。早く帰って食べようよ」

 と言ってくれたので。

「すみません。妹も家に居る双子も、この実を食べるのを待ちわびているので、これで失礼します」

 そう言って別れる。別れ際に「ふーん」と面白い話題を見つけたとばかりの顔をしたので、俺も内心ニヤリとする。


 スピーカーおばさんから離れたところで。

「何であんな変な言い方したの?」

 と雪華が不思議そうに聞いてくるので。

「あのオバサンてさ、双子の通う保育園では有名なスピーカーおばさんで嫌われ者なんだよ。だから今回は利用させてもらった」

「利用ってw 何するつもりよ」

「双子の通う保育園にねクレクレママがいるらしくてさ、三歳児クラスより下の保育クラスだから、俺は顔も名前も知らないんだけどね。で、ウチは双子だから目立つじゃん?だから少しの貧乏アピールでクレクレママを寄せ付けないようにしたわけよ」

「なるほどね。でも、そんなんで防げるかな」

「そこは、スピーカーおばさんの腕の見せ所だな」

「んもう。完全にひろ君てば面白がってるでしょ!」

「あたりめーよ」


 帰宅して、スピーカーおばさんに話した内容を母さんに話すと「良くやったわ!」とサムズアップをしてくる。保育園のママ友も被害に合いそうだったけど狙ったのが小学生の兄のだったらしくて泣きわめいて、園は大騒ぎに。そして、クレクレが旦那にもバレたらしいんだけど、この旦那も変人でクレクレの何が悪いのか理解していないらしい。現在、次に被害に合ったら旦那の働いている会社に抗議の電話をする事になっているそうだ。


 さて、収穫してきた椎の実は水を入れたバケツで椎の実同士を軽くこすりつつ、汚れを落とす。この作業を何回かした後に、たっぷりの水を入れたボウルに椎の実を少量ずつ分けて入れる。すると、水に浮かぶものや若干浮き気味のものがあるので、それらを取り除き完全に沈んでいるもののみに選別する。この完全に沈んでいる椎の実が食べられるヤツだな。

 大量に拾ってきたので、食べない分は新聞紙の上に並べて天日乾燥させてから冷蔵庫で保管する。まあ、ウチの場合は2週間位で無くなるけどね。


 食べる分はフライパンで軽く炒るんだけど、この時に蓋をした方が安全。たまに、勢いよく()ぜるやつがあるからケガする可能性もあるからだ。

 炒ると皮が少し破けるんだけど、破けないのもある。俺は念の為に破けないのは食べないことにしている。ほら、アサリとかの二枚貝でもあるだろ?熱を加えても開かない貝がさ、それは食べないだろ?それと同じさ。


 フライパンで炒ったら、熱いうちに食べる。冷めてくると実が少し固くなるからだ。まあ、固いほうが好きって人もいるだろうから、好きな状態で食べればいいと思うよ。食べるのは皮を取り除いた中身だからな?念の為。


 そんな炒った椎の実をポリポリしながら、他の椎の実を皮が破れたところから開き、中身を取り出していく。小さいからチマチマした作業で大変だけど、中身を全部取り出したら少し残してミキサーで粉砕して粉状にしたのをクッキー生地と混ぜていく。

 彩夏に型抜きしてもらい、上に粉砕していない椎の実を乗せて焼けば椎の実クッキーの完成!


 折角なので、飲み物は紅茶にして雪華も含めた家族全員でクッキーを食べる。

 三時のおやつから少し時間は過ぎているけれど、少しだけだし妹弟の晩ご飯には影響しないだろう。


 次は椎の実ごはんでも作ろうかな。栗ごはんに比べたら落ちるけど、意外と美味しいんだよな。

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