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家庭科実習

 現在、家庭科目は裁縫実習となっている。基礎縫いで見極めた難易度調整があるので、全員が同じものを作製しない稀有な授業だな。俺はこれからの季節にピッタリな半纏(はんてん)を作製している。難易度高すぎない?と思われるかもしれないけれど、自宅で着る妹弟の半纏は俺の手作りだったりする。今年着れても来年は着れないから、買うのはもったいないからさ。そんな裁縫実習は今日で終わり、作品を提出して評価をもらう。

 現在、俺の半纏は内宮班のみんなが試着している状況だ。ウチでは冬の時季は普通に部屋着扱いで着ているけれど皆の家は違うみたい。風呂上がりの湯冷めを防ぐのに最適なのにな。


 授業終わりの時に「まだ提出できていない人は放課後に居残りで仕上げて下さい」と、一部の人達にとっては絶望のセリフを伝えるのだった。

 そして、次回は久々の調理実習とのこと。作る料理はぶり大根。俺は思わず「えー」と言ってしまい、多澤先生から話しがあるから残るように言われてしまった。


「それで内宮君。ぶり大根の何が不満なんですか?」

 実習のあった被服室にはまだクラスメイトがいる状況で多澤先生からお小言を言われる。

「すみません。自分はぶり大根よりさけ大根、さらに言うと鮭かま大根が好きなので、思わず言葉に出てしまいました」

「はあ〜、なるほど。なら、内宮君はぶりなら何が好きなんですか?」

「照り焼きと竜田揚げですね。これからは、ぶりしゃぶも美味しいですよね」

「美味しいですよね、じゃ、ありません。家でも料理するのは知ってますが、次から次へと美味しそうなものは言わないで下さい!昼前でお腹が空いているのに!」

「そんなあ。先生の質問に答えただけですよ、俺は。それに蔵持先生なら鮭かま大根を食べたいと言うハズです」

「わかりました。なら、聞いてみましょう」

 との事で校内放送で蔵持先生を被服室に呼び出した多澤先生なのだ。この後は昼休憩だから、次の授業の心配は無用だぞ。


 蔵持先生が来るまでの間、多澤先生と雑談をして過ごしていると。

「多澤先生。どうされましたか?」

「蔵持先生ごめんなさい。次回の調理実習で、ぶり大根を作ると言ったら内宮君が「えー」と言ったのよ」

「ぶり大根、いいじゃないですか!何が不満なの内宮君?」

「ぶり大根より鮭かま大根が好きらしいのよ。蔵持先生なら良さをわかってくれるって言うけど、どう思いますか?」

 少しの間、俺のほうを見て固まる蔵持先生。これは勝ったな!と確信する。

「多澤先生。内宮君に鮭かま大根を作らせましょう!そして試食には是非、私も呼んで下さい!」

 と、多澤先生の両肩に手を置き少し興奮気味の蔵持先生。

「そんなに食べたいのですか?」

「鮭のかまの部分は脂のノリが最高なんです。それが染み込んだ大根に鮭のかま自身の美味しさ、学校でなければビールも欲しくなりますよ!もちろん、ごはんとの相性もいいですよ。それに実習なら量が多いですからね、家で少量作るよりも、より美味しくなるのは確実ですよ、きっと!」

 と蔵持先生の熱弁に負けて。

「はあ、わかりました。内宮君の班は鮭かま大根を特別に許可します。そのかわり、実習評価基準は厳しくしますからね。そのつもりで」

「わかりました!先生、ありがとうございます」

「多澤先生、私からも感謝を。内宮君、私の分の鮭かま代は払いますから美味しいのを頼みますよ?いいですね?」

「もちろんです!時間制限はありますが、染み染みの大根になるように頑張ります!」

「よろしい。来週の調理実習が楽しみですね、多澤先生」

「はあ」

 蔵持先生が盛り上がる中で、深いため息をする多澤先生なのであった。


 〜雪華side〜

 鳳来「ねえ、ゆきちゃん。その、鮭かま大根?てそんなに美味しいの?」

「美味しいよ。下手したら、ぶり大根に戻れなくなる人もいるかもね」

 鳳来「他のみんなで、鮭かま大根を食べたことのある人いる?」

 首を横に振る、内宮班のみんな。

 鳳来「今回は班が別れるかもしれないわね。内宮のことは信じているけど、評価基準が厳しくなるみたいだし」

「みんなまで巻き込む事は無いと思うよ?あたしは、ひろ君と一緒だけどね」

 今回は一時的に班を離脱する人達がいるかも、そう思っていた時があたしにもありました。


 ◇◇◇


 放課後に俺と雪華は、商店街の魚屋にいる。

「大将こんにちは〜」

「おう!」

「今日はお願いがあって来たんだよ」

「珍しいな、どした?」

「来週までにさ、鮭かまを14個欲しいんだけれど調達できる?無理なら最低2個でもいいんだけどさ」

()()()か。そんな大量にどうすんだ?」

「実は高校の調理実習で、本来はぶり大根なんだけど俺が鮭かま大根の美味しさを伝えたら、俺の班だけ鮭かま大根を許可されたんだよ」

「ははは。あんちゃんらしいや。で、最低の2個ってのは?」

「先生達の分だね。魚好きの先生がいてさ、その先生の分は鮭かまにしたいからさ」

「なるほどな。来週なら少し時間大丈夫だな、仲卸で扱っているか確認するよ。スマホに電話するから待っていてくれ!」

「ありがとう、大将。じゃあ、よろしくね」

「おう!」

 それから数日後、無事に調達できると連絡があった。これで内宮班と舞原さん、それに先生達の分を確保できたぜ。

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