生徒会からの要望
雪華のバイト先である洋菓子店でクリスマスケーキの予約注文が開始した。種類は定番のイチゴのショートケーキとチョコレートケーキの二種類となっている。クリスマスケーキは完全予約制で当日の購入分は無しとなっている。これは店内ポスターで告知されている。それと、クリスマス前後は多忙のため特注品の依頼もお断りすることも併記してある。
「クリスマスケーキの注文開始か〜。年末が近づいてきたって感じがするよな」
「そうだね。年末といえば、おせちはひろ君の家はどうしているの?小学生時代は気にしていなかったけどさ」
「質問に質問で返して悪いけど、雪華の家はどうなの?」
「あたしんところはカタログ注文だったよ」
「なら、俺んとこも似たようなもん。これからの時期はテレビの通販番組で紹介が増えるだろ?それを注文だな。あとは、蒲鉾とかの単品をスーパーで購入する感じだな」
「意外かも。凪咲さんなら作りそうだけど、ね」
「俺と母さんは大食いだろ?作るのが面倒なんだよ。それに彩夏と双子は、栗きんとんや黒豆が好きだから単品を購入しないと間に合わないしさ」
「なるほどねー」
「去年はローストビーフの入ったやつでさ。あれはウマかった」
「へえ〜」
◇◇◇
放課後、俺は何故か生徒会室に呼び出された。何かをやらかした覚えは無いんだけれどね。内宮班のみんなも心配して教室で待っていてくれるらしい。文化祭の窓際組はギャハハハハと下品な笑いをしてたけどね。
そして生徒会顧問の先生とともに生徒会室に入室する。
「失礼します。内宮広也です」
すると、真正面に座る会長(男子)が。
「急に呼び出して申し訳ありません。実はキミにお願いがあってね」
「お願い、ですか?」
「実はキミが文化祭で提供した焼きネギと焼きおにぎりをもう一度食べたいとの要望が寄せられてね。近々ある球技大会で提供してもらうことは可能だろうか?今回は生徒会の予算で行う事にはなりますが」
「えっと、失礼ですが会長はキャンプやバーべキューとかのアウトドアはやりますか?」
「いや、学校行事以外ではやらないね」
「自分達の商品が売れたのは焼きたてを提供したのが大きいんです。コンビニでも焼きおにぎりは販売されていますが、レンジでチンでは味わえない美味しさなんですよ。なので、休憩時間が同じだと提供は無理になりますね」
「なるほど。つまり、予め焼いておいたのを温めて提供すると校庭ブースの時と味に違いが出る可能性があるんだね?」
「はい、その通りです。あと、食材にもこだわりましたので高めですよ?焼き鳥に使用した鶏肉は業務スーパーの冷凍品ですが」
「値段を教えてもらうことは可能かな?」
「もちろんです。何か用紙はありますか?」
「では、こちらに」
そう言って紙をくれたのは生徒会室の入口近くに座る、確か会計の女子だ。そして、食材の値段をお米はキロ単位でネギは箱単位、一応鶏肉も記入しておく。
「確認お願いします」
紙をくれた女子に渡すと。
「な!」
と声を上げるも他の生徒会役員に渡して全員が値段の確認をする。最後に会長が。
「この値段は本当ですか?」
と少し疑いの声で聞いてくるので。
「本当です。今はありませんが、納品書や領収書も保管してあるので見せることは可能ですし、一緒に作業した人達からも聞いてもらっても構いません」
「わかりました。予算含め提供するにも問題がある事が判明したので、この話は一旦保留にさせて下さい。また改めて依頼をするかもしれない事は覚えておいて下さい。今日はありがとうございました」
「わかりました。それでは失礼します」
軽く頭を下げて退室する。
俺が教室に戻ると厳さんが。
「無事に生還できて嬉しいぜ!」
と言って泣き真似をするので笑ってしまった。
「結局何だったのよ?」
鳳来さんの言葉で全員が注目するので。
「球技大会の時にね、焼きおにぎりと焼きネギの臨時販売をして欲しいって生徒会直々の要望だったよ」
「「「「「ええ〜」」」」」
「それで、どうしたのよ」
「焼きたてだからこそあの美味しさだし、お米とネギはこだわりの食材ってことで材料費の値段を見せたら、一旦保留にしてくれってさ」
舞原「後から入っておきながら申し訳ないけれど、ネギの値段は本気?って思ったもん。生徒会の人達が驚くのも納得だと思う」
烏野「それに、内宮君が言うように焼きたての魅力はありますからね。球技大会みたいに一斉に昼休憩になる場合の提供は厳しいですよね」
舞原さんと烏野さんの言葉に頷く班員達。
「まだどうなるか不明だけれど、球技大会の種目に不参加でいいやって人は手伝ってくれると助かるからさ、一応は頭の片隅に覚えておいて」
「「「「「はーい」」」」」
って事で解散して帰ることにする。舞原さんも一緒にいたって事は内宮班の居心地が良いのかな。