愛美と朝輝の誕生日
テスト前期間で勉強に集中したい人もいるのに文化祭に向けての紛糾が続いているので、クラス内の空気は最悪だ。情報通の鳳来さんの話しによると、内容に口は出すくせにやろうとしないので反感を買っているのに、煽ることばかりを繰り返しているそうだ。内宮班は離脱して無関係だからこの空気を面白がっているけど、当事者はたまったもんじゃないだろうな。
雪華はバイト休止期間なので家で勉強しているのだけど、家にいるから嬉しくて妹弟から遊びに誘われてしまう。遊びに付き合ってくれるのは嬉しいけど無理に付き合う必要は無いと伝えている。
でも「勉強の息抜きになるし、無理はしてないから大丈夫」と言ってくれる。確かに無理している様子は無いけど、注意して見守ることにする。
テスト前期間も終盤の今日、10月17日は愛美と朝輝の誕生日だ。
学校帰りに洋菓子店に寄り、注文していたホールケーキを二つ受け取る。前回の彩夏のよりも小ぶりで種類は定番中の定番である、イチゴのショートケーキだ。雪華提案のリンゴケーキじゃないのかよ?と思うかもだけど、誕生日ケーキだから好きなケーキのほうがいいだろ?
彩夏の時はピザやフライドチキンだったけど、今日はオムライスにハンバーグ、オニオンスープとなっている。これには妹弟もニッコリだ。
食事が終わればケーキの時間。愛美と朝輝の前にそれぞれホールケーキを置いて部屋を薄暗くする。父さんと母さんは彩夏の時と同様に撮影をしているので、雪華が愛美を彩夏が朝輝を後ろから抱いている状態だ。
四本立てられているロウソクに火をつけると二人の興奮状態はピークとばかりに大はしゃぎとなっている。
バースデーソングを歌い終えたら、雪華と彩夏が二人の耳元で「ロウソクにフーして」と伝えてフーをすれば無事に消える。そのタイミングで部屋を明るくしたら母さんが。
「あみちゃん、あっくん。お誕生日おめでとう」
「「「「おめでとう」」」」
ロウソクにフーしてまだ少し興奮している二人に雪華と彩夏が「ありがと」って言ってと再び耳元で教える、そして。
「「ありがとっ」」
笑顔な二人に拍手する。
その後は愛美と朝輝のケーキそれぞれから均等に取り分けて食べる。半分ずつ残っているケーキはタッパーに入れて冷蔵庫で保存しておく。どうせ明日の朝には食べ終わるから問題無いしな。
さて、ケーキを食べ終えたらプレゼントタイムだ。ただ、今日は両親のプレゼントはなし。後日、両親の祖父母も一緒に買いに行くことになっている。俺達みたいに個別では無く、彩夏も含めた三人で一緒に遊べるオモチャにすると予想している。
「まずは、お兄ちゃんとお姉ちゃんからは愛美にはメンダコのぬいぐるみ。朝輝にはジンべエサメのぬいぐるみだぞ」
二人にとっては特大のぬいぐるみだ。渡すのは危険なので隣に置いてあげる。
「「ありがと」」
そう言ったら早速抱きつく二人の頭を撫でる彩夏。
彩夏も何か渡したかったみたいで相談してきたので、俺と彩夏の連名で渡すことにしたのだ。
「次は、あたしからだよ。ハイ、愛美ちゃんにはお絵かきセット。朝輝くんには恐竜のブロックだよ」
ぬいぐるみに抱き付く二人に俺が「雪華お姉ちゃんからもプレゼントがあるから受け取って」と言って抱きつくのをやめさせてある。
「「ありがと」」
嬉しそうに笑う二人に自然と笑顔になる俺達だった。
普通ならテンションが上がった幼児を寝かしつけるのは大変なんだけど、上がりすぎて疲れたのか俺がプレゼントしたぬいぐるみが抱き枕代わりになっている影響かは不明だけど、すんなりと寝てしまったそうだ。
後日、父さんと母さんが購入したのは家庭用トランポリンだった。見た目は四角い箱型のクッションなんだけど、乗って飛び跳ねることが出来る。危ない可能性もあるので、兄である俺や母さんや父さんがいる時のみ使用可となっている。
雪華はまだ他人なのでケガのリスクがある以上、責任が発生する可能性があるものに関わらせる気は無い。このトランポリンなんだけど、意外にも楽しくて夢中になる魔性のアイテムだったよ。
祖父母からは子供用カメラと子供用ピアノだった。ピアノは鍵盤数も多いし、カメラも画素数がある本格的なものなのに、まだ夢中にはなっていない。
女の子なら子供用の化粧道具やお姫様になれるドレスが喜ばれる、なんて記事を見るけど彩夏と愛美にその兆候は見られない。姫は姫でもおてんば姫だな。
男の子なら皆大好き変身グッズがオススメ!なんて記事もあるけど朝輝はそれ自体が嫌いだし、ロボット系にも興味は無い。
祖父母として、そういう贈り物がしたいなら他の孫やひ孫に贈るといいよ。大体さ、俺が欲しがったのだって変わったモノばかりだったろ?