文化祭へ向けて
厳さんと昌史、下津木さんと新山君には河口でのハゼ釣りはもう無理そうだと伝えた。今度いつ行くかにもよるけど、釣れる数が減っているのは事実だからね。代案として、ライフジャケットを着用すれば堤防での釣りに連れて行くと言っておいた。
その日の放課後に文化祭について少しだけ話しがあるとの事で居残りになった。
「文化祭だけど、飲食店希望が多くて最終学年の三年生を優先することになり、セカンド案の脱出ゲームで出展することになりました」
このクラスの文化祭実行委員長の言葉にザワつくクラスメイト。
「それから、校庭ブースに名乗りを上げていた彼らは具体案を提示することが出来なかったのでクラスでの参加になりました」
すると、離脱表明していた男子達から。
「だってよ、校庭ブースは全額自己負担なんだぜ?やってられるかよ。それに飲食関係じゃなくなったんだから別にいいだろ?」
「そうだ!てか、最初は内宮が言いだしたんだから内宮がやれよ!全額自己負担でな!」
と言い出したので。
「いいよ。なら内宮班が校庭ブースに行くよ、委員長もいいかな?ブースの管理もあるだろうから迷惑かけたくないし」
「クラスとしては構わないけど、いいのか?」
「はっ、強がるなよ!俺達が聞いたのだと飲食関係は10万近くはかかるんだぞ!」
金額を聞いたクラスメイトはザワつくけど。
「その位なら俺一人でも問題ないね。何せ今すぐ雪華と結婚式を挙げることが出来る位のお金はあるし」
俺の衝撃発言に今度は逆に静かになった。
「九條先生、そういう訳なので校庭ブースには俺達11人で参加しようと思いますがどうですか?」
「わかりました。では今週中に提案書を提示して下さい。早いほうがこちらとしてはありがたいです」
「わかりました」
鳳来さんのほうを見るとサムズアップしたので問題はないだろう。
あとは念の為に釘を刺しておくか。
「言っとくけど、邪魔をしようと考えないほうがいいぞ。俺達の私物では無くレンタル品になるから器物破損で警察に捕まるし、損害賠償も請求される。レンタル会社と学校側両方から訴えられることになり、働いている両親も解雇つまり会社をクビになるだろうな。レンタル会社には事情を話して監視カメラを設置してもらうからな」
俺の言葉に邪魔を考えていたのか、言葉をなくす。さらに追い打ちで九條先生が。
「そうですね。もちろん退学になりますね」
この言葉がトドメになったみたいだな。すっかり意気消沈している。
バイト組もいるし、予定がある人もいるから喫茶店に集まれたのは俺と鳳来さんだけ。でも鳳来さんがいれば問題ない。
「結果的には校庭ブースになったか」
「そうね。班分けは別日にするみたいだけど、一波乱はあるかもね」
「出店は当初の予定通り、焼きおにぎりメインで数品のおかずでいいんだよね?」
「ええ。値段も抑えてあるしね、レンタル代によっては上乗せね」
「加熱調理だから多分問題は無いと思うけど、衛生面は気を付けないとな」
「そうね。当日体調が悪い人は調理エリアへの立ち入りは禁止にしましょ」
「大まかにはこれ位か」
「あとは、審査が通ってテスト明けに本格始動すれば問題ないでしょ。団結力のある班だし」
「だな。明日、これで九條先生に提案書として提出するよ」
「お願いね。細かい事を聞かれた場合は内宮の判断で答えておいていいから」
「了解だ」
それでその日は解散する。バーべキュー場あたりで焼きおにぎりの焼き方講習をする必要はあるのだろうか?と考えながら帰宅する。
就寝前のいつもの時間に。
「あたしとの結婚資金あるんだ」
「当然だろ。ただ、式を挙げるだけで生活費は働いてないから無いけどな」
そう言って笑う。
「んもう。でも、お金目当てで近寄る女子が出るかも」
「雪華以外は愛さないから心配無用。いざとなれば趣味を公言するし、実は金遣いが荒いようにも振る舞うからさ」
「うん」
軽くキスしてから雪華は自室へと戻った。まずったな威圧の為の発言だったけど、金目当てのヤツが出るかもしれない事に気がつかなかったや。しばらくは気を付けよう!
翌日、九條先生に校庭ブースの企画書を提出。その後も九條先生には軽く話しをしておいた影響もあり、スムーズに進んで無事に焼きおにぎり屋としてのブース出店が決まった。まあ、どのレンタル品にするかや最終的な価格設定、衛生面の調査等課題は多いけどね。
一方でクラスは班分け含めて紛糾している状態だ。授業中含めて空気が悪くてしょうがねぇや。




