日曜日の出来事
「雪華。今日の一杯目のごはんは特別だから、味わって食べてくれな」
朝食の為に座って「いただきます」を言った雪華に伝える。ごはんとおかずをパクパク食べる雪華が好きだけど、今日の一杯目のごはんはダメ!おかわりからは好きにしてくれていいから。
「何かあるの?」
「今日の一杯目のごはんはウチで収穫したお米なんだよ。二杯目からはいつも通りでいいから」
「そうなんだね。角型タライで栽培してたもんね。そういえば、あの中にいたホウネンエビはどうなったの?」
「あれは飼育部屋で孵化させている餌用に販売されている種類では無くて、自然にいたやつだから来年になればまた出てくるよ」
「へえ〜」
「このお米が特別なのは、もう一つあってな。小学四年生の時にバケツ稲を学校で育てたの覚えてるか?」
「あー。あったね、そんなこと」
「これ、あの時のお米なんだよ」
「そうなの!?そういえば、ひろ君の部屋のコルクボードに飾ってあったね」
収穫した稲穂は天日干ししてから全クラスの全員分まとめて白米作業までしてもらった後に分配された。分配といっても茶碗一杯分位の量だ、いつものお米に混ぜて出されたと中学生になってからは思っていたけど、その量で炊いてくれたと知った時には感謝の言葉が自然と出たね。
「だな。何か魅力的なものがあってさ、一穂だけこっそり持ち帰ってきたんだよね。で、ここに引っ越ししてから最初は小学校同様バケツ栽培から始めて増やして今の収穫量にしたわけよ」
「なるほどね。この収穫量だとあたしのところに送る余裕は無いもんね、同居したから食べられる味だね」
そう言って一口ずつ丁寧に食べてくれる雪華。
「すごく美味しいよ」
多分嘘を付いていない笑顔に嬉しくなる。ただ、二杯目からは反動なのかいつも以上にパクパク食べていたのに笑ってしまう。
家庭で稲栽培すると大変な作業は籾摺りだと思う。籾殻と玄米を分ける作業なんだけど手作業だと少量でも半日作業になるだろう。でも我が家では籾摺り機能搭載の家庭用精米機なので、すぐに終わる。父さんの会社であった家族参加OKのパーティのビンゴ景品なんだよね。支社長が俺のことを知ったのって、この時かな?でも何もなかった気がするけど…。そんな事を考えながら、二杯目のごはんを食べるのだった。
今日は雪華はバイトなので、洋菓子店に送ったらそのまま少し離れた場所にあるホームセンターへとやって来た。
雪華から頼まれた冬期のキュウリ栽培のヒントを探しにきたのだ。結論から言うと栽培の目途がついた、ビニールハウスに俺が入る必要の無い栽培する植物だけが入るサイズを作ればいいのを考えついたので、折角だから材料も購入する。
雪華にはキュウリ栽培の目途がついた事はまだ内緒にしておきたいので、鳴き虫を飼育している小部屋で育苗することに。この時期の室温なら育苗するだけなら問題ないしな。種は一晩水につけてから蒔くけど、これは風呂に入る前でいいだろう、ついでに小型メロンも育ててみることにした。雪華のおかげで楽しみが増えたな、あとは上手くいけばいいんだけど、ね。
そんな事を考えながら帰宅すると、愛美と朝輝から遊んでと言われたので一緒に遊ぶことにする。彩夏は友達と遊びに行ったらしくて不在だった。
先に少しだけお散歩してからブロック遊びをすることにした。この前、笹嶋さんと一緒に行った陽翔が案内してくれたショッピングモールへの道だと怖くて二人一緒の散歩なんて無理だな、と思ってしまう。手を繋いで三人横並びで歩いたら邪魔になる道幅だったしな。住む場所がこの辺で本当によかったと実感する。
え?小学生時代に住んでいたエリアはどうなのか、って?どうだったっけなあ、覚えてないや。遊びは雪華とだし、彩夏とは室内遊びしかしてなかったしなあ。記憶にございません、てヤツだな!
お散歩は公園に行きたがるかな?と思っていたけど、余程嫌な思いをしたのか公園方向にすら行こうとしなかったな。
そんなお散歩も終わりにして帰宅する。手洗いうがいをしたら、ブロック遊び開始。
砂場で遊ぶことが出来ないので代わりにブロックでトンネル山を作り、そこに朝輝の電池で動く列車を走らせてあげると二人はキャッキャキャッキャの大喜びで、しばらくの間興奮状態が続いてしまい母さんが心配して様子を見に来る事態になってしまった。まあ晩飯になったら落ち着いてくれたけど、壊して箱の中に仕舞うのは嫌がったのでブロックのトンネル山はリビングの片隅に鎮座する事となってしまった。
雪華を迎えに行くと今日もバイトの鳳来さんと姉御先生の赤ちゃんの話題に。
「赤ちゃん、いつ頃見れると思う?」
「首がすわるだろう、年末以降じゃないかな?」
「そっかー」
「年末年始はここも休店だから、しばらくは先だと思うぞ?今は外出している俺達に会わせて風邪とかの病気も怖いだろうしな」
「それもそうだね」
そんなやりとりを少しだけしてから雪華と一緒に帰宅する。
その会話を店長に聞かれていたのか先生と赤ちゃんのツーショット写真を送ってくれた。




