ダブルデート再び
さて、今日は陽翔と笹嶋さんとの二回目のダブルデートだ。笹嶋さんと最寄り駅で待ち合わせをしてから電車で陽翔との待ち合わせ駅へと向かう。以前の食フェス会場とは違い一回だけ別路線に乗り換えが必要となる。
待ち合わせ駅から出て、バスの発着場付近で陽翔から声をかけられる。
「笹嶋さん、お久しぶりっす」
「久しぶり。今日は楽しもうね」
おー。遠距離恋愛中の恋人みたいな雰囲気があるぞ!
「色々と話したい事もあるだろうけど、とりあえずショッピングモールへと行こうぜ!陽翔、案内よろしくな」
「おう」
ここは陽翔の地元エリア、とは言っても自宅からは数駅離れてはいるけどね。
俺の行くショッピングモールとは違い送迎バスは無いので徒歩で向かう。陽翔と笹嶋さんは隣同士で会話していて、その後ろを俺と雪華が歩いている。
「初めて来るけど、今住んでいる場所より都会だね。さっきからコンビニが何軒もあるよ」
「だな。でも俺は、今住んでいる場所がいいな。幼い妹弟には危険が多そうだし」
「そうだね」
そんな田舎者丸出しな感想を抱きながら歩き、目的地のショッピングモールに到着する。
「どこか見たい店はある?」
案内板の前で陽翔が笹嶋さんに尋ねる。
「買う目的で来てないからなあ。雪華ちゃんは買いたいものはあるの?」
「あたしも特には無いかな。とりあえずブラつけばいいんじゃないかな?」
「そうだね」
という事でウインドウショッピングというオシャレな名前のブラつきを開始する。
男が雪華を見る視線があるので、雪華とは腕を組んでいるし、ペアリングも装着している。
陽翔達もいつの間にか手を繋いでいるし、いい雰囲気になっている。
洋服屋では秋物の服を雪華と笹嶋さんが二人で見たりしながら過ごしていく。女子の買い物は長くて男子には苦痛と漫画やドラマで言ってるけど、俺はそうは思わない。俺だって趣味に関係する店なら長時間は当たり前だからな、苦痛と感じる人はのめり込むものが無い貧しい人なんだろうな、と思ってしまう。
最後に食料品売場を俺の希望で見させてもらい、ショッピングモールを後にする。
次に行くのは座敷席のみの地鶏を扱う飲食店だ。こちらがメインと言っても過言ではない。
予め陽翔に予約してもらっていたので、到着と同時に席へと案内される。
ドリンクバーで飲み物を持ってきたら軽く乾杯する。注文した料理を待つ間。
「陽翔君、改めて洋服買ってくれてありがとね」
「いえいえ。帰りの荷物になるから迷ったけど喜んで貰えたなら嬉しいよ」
「雪華は買わなくてよかったのか?」
「あたしは冬物を買いたいから、少し先だね」
「雪華ちゃんは今頃水着買うなんてどうしたの?」
「今度ひろ君家族が通っているジムの家族プランにあたしも入れてもらうの。そこのプールで泳ごうと思ってね」
「なるほどね」
そんな話をしていると鍋が運ばれてきたので陽翔と一緒に準備する。
〜雪華と佳奈のヒソヒソ話〜
「雪華ちゃん、あの大胆なビキニもジムで着るの?」
「まさか!あれは、ひろ君悩殺用。家のお風呂で着てあげるの」
「あたしも正式に陽翔君と付き合ってビキニ着たら喜んでくれるかな?」
「佳奈ちゃんはおムネ様が大きいんだから自信持って!」
「う、うん」
あのさ雪華様?ヒソヒソ話しているつもりかもですが、ここは座敷席でテーブル席よりも互いの距離が近いから丸聞こえなんですわ。陽翔なんて顔が赤いし、多分俺も赤い。ヒソヒソ話している雪華と笹嶋さんも赤いから全員が顔が赤い空間になってる状況なのを理解して頂戴!
雪華と笹嶋さんから顔が赤いと指摘を受けたけど、鍋の熱と誤魔化しておいた。俺達から二人への指摘はしない、ややこしい事になって困るのは俺達だからな。
食べ放題は無い店なので、四人だけど多めの人数分を注文して食べる。もちろん時間制限なんて無いのでじっくり味わって食べて完食する。ここは赤蕎麦も有名なので、もちろん全員が注文した。
赤蕎麦とは赤い花が咲くソバの実で作った蕎麦になる。ちなみに普通のソバの花は白色だ。実はウチでも赤ソバも普通のも栽培している。栽培していると言っても実から蕎麦を作るためでは無くて若芽を天ぷらにして食べるためだけどな。山菜や野菜の天ぷら同様、美味いんだぞ。
最後のシメに黒糖のアイスクリームを食べて店を出る。
前回のデートの時と違い暗くなるのが早いので帰宅する事にする。駅に向かう途中で雪華に呼ばれて、雑貨屋みたいな店に入る。少し店内を見てから店を出ると二人の雰囲気が少しだけ変だけど険悪なムードでは無いので放置しておく。
時間的には夕方前で明るいので最寄り駅で笹嶋さんとは別れる。
その日の夜に陽翔から笹嶋さんと正式に付き合うとの報告があった。
〜笹嶋side〜
ショッピングモールで雪華ちゃんとの打ち合わせ通りに飲食店から駅に向かう途中で陽翔君と二人きりにしてくれた。
「陽翔君あのね、これからは友達じゃなくて恋人として正式にお付き合いしてくれませんか?」
「もちろんです!こちらこそよろしくお願いします!」
「今度は二人きりのデートもしたいね」
「なら、俺がそちらに行きますよ。暗くなるの早いから心配なんで」
「うん、ありがと。二人戻ってきたから行こ」
そう言って手を差し出す。
「はい」
優しく握ってくれた彼の温もりがとても幸せに感じた。
こうして、あたしにも彼氏ができた。




