作戦会議をした後に
「笹嶋さんて何が好きなんだろうなあ」
「俺も良くは知らないんだよね。雪華は何か聞いてないか?」
「う〜ん。とりあえず食べるのは好きみたいだよ?あたし達みたいに」
「本来なら遊園地とかにデートに行くんだろうけど、日帰りは無理な距離だからなあ」
「水族館は?」
「俺が夢中になって援護できない」
「あはははは」
今日は陽翔が家に来ている。まあ陽翔の両親が祖父母宅に来たんだけど陽翔はこっちに来たって感じだな。
で、議題は笹嶋さんとのダブルデートのことだ。正直言うと笹嶋さんの趣味趣向は知らんのでどこにデートに行けばいいのか不明なのだ。
デートの定番であろう遊園地は残念ながら泊まりが必要な距離なので無理。郊外で暮らしやすいけど、こういう時は難儀だな。
「雪華さ、笹嶋さんに電話して今から遊べるか確認してくれるか?」
「いいけど、どうするの?」
「今、陽翔が来ている事を伝えてペットショップに行かないか聞いて欲しいんだ」
「待ってくれ広也!急にそんな、心の準備が」
「落ち着け。陽翔の両親だって長居するわけじゃないだろ?なら、軽く昼飯を食べに行く感じで会えばいい。そして、さり気なく今度どこに行きたいか聞けばいい」
「ハードル高いって!」
「俺らがデートどこ行きたい?って聞くのも違うだろ?わからない以上正直に行きたい場所を聞いたほうがいいって。笹嶋さんはそんな事で軽蔑する人じゃないから」
「あ、ああ。わかったよ」
「という訳で雪華頼む」
「は〜い」
「ふう〜〜〜〜〜〜」
「陽翔、それは失礼すぎないか?」
雪華が笹嶋さんに確認したところ残念ながら会えないとの事だった。まあ急な話だったから仕方ないけど、陽翔の安心した空気はどうなんだよと思うぞ?
「仕方ない。メッセージで確認してみろよ、毎日やり取りしてるんだろ?」
「まあな」
「とりあえずダブルデートは中間テスト前に一度行くのは決定してるんだから頼むぜ」
「ああ」
「お前、本当に笹嶋さんの事が好きなんだな」
「な、何だよ。急に」
「いや。俺と同じ雰囲気があったから嬉しいんだよ。そこまで好きなら逃がすなよ」
「お、おう」
陽翔は俺とは別の意味で焦燥感があったからな。交際しているとは言っても実際に会ったのは前回だけだ。笹嶋さんと親密になって、笹嶋さんが陽翔のことを支えてやって欲しいと願うよ。
陽翔は笹嶋さんと会うことが無くなったので祖父母宅に戻っていった。昼飯を食べたら帰るそうだ。
俺と雪華は折角だからとペットショップへとやってきた。
「ここが以前はアーケード商店街にあった店なの?」
「おう。前の雰囲気は皆無だけどな」
「へえ。ひろ君としてはどうなの?」
「まあ普通かな。飼育用品の品揃えは増えているから緊急時の利用は増えそうだな。生体に関してはどうだろ、でも新着情報で確認できるのはありがたいかもな」
「なるほどね〜」
そんな会話をしながらも店内を冷やかす俺達。雪華は爬虫類売場にすぐに向かったけどレオパは二匹しか売られていなかったので、ガッカリしていたよ。
そんな中で熱帯魚売場で珍しい魚が販売されていた。
「なあ雪華。今日は帰っても平気かな?」
「! 欲しいのいた?」
「おう。これなんだけど」
「真胎生メダカ?」
「ああ。グッピーとかは稚魚で産仔するけど卵胎生、親からの栄養は無しで稚魚になるんだ」
「そうだね」
「ところがこの真胎生はへその緒があって、親から稚魚に栄養がいくんだよ」
「何それ、すごい。神秘的だね」
「だろ?その代わり産仔数は少ないけどな」
「ペア販売だから産仔見れるかな」
「頑張ってみるよ。それにウチにいない種類だからな」
「じゃあ購入しよう!水槽は大丈夫なんだよね」
「ああ。バッチリだ」
という訳で思いがけずレアな魚を購入した俺達は帰宅することに。
帰宅後はいつも通りに水合わせ。雪華には飼育している他の真胎生メダカを見てもらった。彩夏は何度か産仔を見せているので今度は雪華の番だなと思いつつ楽しみが増えたぜ。




