ハゼパーティ(後編)
「では、先に先生達のハゼから揚げようと思う。多澤先生には申し訳ないけど指導していただきます」
多澤先生「よろしくね」
「多澤先生の天ぷら指導を希望する人はここのコンロでお願いします。五枚揚げたら他の人と交代して下さい」
「鳳来さんはさっき揚げた感覚があるから、こっちのコンロで一人でお願い。とは言っても俺が見るから安心して」
鳳来「了解よ」
シンクを挟んで両側にコンロがあるから二台で天ぷらを作ることが可能だ。危険を考慮してコンロ一台に一人で作業する。効率が悪いと感じる人もいるだろうけど油を使用するから無理はしない。
「多澤先生、指導ありがとうございました。揚げたての美味しいうちに召し上がって下さい。あとは大丈夫なので」
多澤先生「そうですか?では、お言葉に甘えて。ただ、厳しいと感じたら声をかけなさいね」
「はい。油を使用しているので、無理はしないです」
多澤先生には戻ってもらい俺達のみで作業する。
さて、俺は揚げる人の様子を見ながら先生達の刺身も準備する。もう一方は雪華が見てくれている。
下津木「三枚おろしにしている時にも思ったけど色鮮やかな魚だよね、美味しいの?」
おや、下津木さんが珍しい。何だか普通だね、これが素なのかな?
「美味しいよ。白身の刺身では上位だと思うよ」
桃瀬「種類は何なの?」
「これはキュウセン。この青いのと赤いの両方キュウセンで、青はオスで赤はメスなんだ」
まあ、赤のオスもいるけど話がややこしくなるから言わない。見た目で判別できないし。
笹嶋「このシマシマは?」
「これはカゴカキダイ。タイと名前に付いてるけど、タイの仲間では無いんだ。笹嶋さんが釣ったのは正真正銘タイだけどね」
「「「へえ〜」」」
大根のつまは無いけど大葉でそれっぽくして種類ごとに中皿に盛り付けて先生達の元へ。
「お刺身出来ましたよ。魚種ですが、キュウセン・カゴカキダイ・オキナメジナになります。キュウセンは上側がオスで下側がメスとなっています」
蔵持先生「内宮君、何でオキナメジナの刺身なんですか?他の刺身の妨げですよ?」
多澤先生「蔵持先生?どうしたのですか?」
蔵持先生「オキナメジナは磯臭い魚で有名なんですよ」
「「「「「えっ」」」」」
先生達はもちろん新山君や昌史、天ぷらを終えた女子組からも視線を向けられる。
「そういう情報もあります。でも安心して下さい、美味しいのは確認しましたから」
まあ、色々と言たいことはあるけど専門家による協議の場じゃないんだから言わない。
蔵持先生「なら信用します。ただ、わたしが駄目と判断したら下げてもらいます」
「わかりました」
蔵持先生「では」
醤油やワサビは無しでそのまま食べる。
蔵持先生「へえ〜、大丈夫ですね。白身で普通のメジナに近い味です」
「安心していただけましたか?では、他の白身魚も堪能して下さい。あ、寄生虫のアニサキスとかはいないのを確認済みですので安心して下さい」
ショウジンガニの味噌汁も先生達のところに運んでもらう。具材はササノハべラで刻みネギを少々入れたものになっております。
時間は進み、現在残るは男子組のみ。厳さんが少し遅れているから待っている状況だ。女子達も待つと言ってくれたけど、折角の自分が釣って自分で揚げた天ぷらだから先に食べてもらっている。
「高校前に着いたと連絡来たから俺らも揚げよう。昌史はココで新山君はあっちな」
昌史「おう」
新山「はい」
二人が揚げ始めてから少しして厳さんが到着する。
「悪いな、渋滞に巻き込まれちまった。先に食べていると聞いて安心したよ」
「いやいや。厳さんには世話になったんだ、ありがとな。ところで、全員自分の食べる分は自分で揚げたけど厳さんもやるか?疲れたなら俺が揚げるけど」
「悪い。内宮頼めるか?少し前から走ってきたから休みたい」
「ははは、了解だ。揚がるまで一休みしていてくれ」
「すまんな」
雪華「なら、ひろ君のはあたしが揚げるね」
「ありがと、頼むね」
キッチンの後片付けを先に終わらせてから食後のデザートとして、白ブドウ味のシュークリームを先生達含め食べながらまったり中だ。
鳳来「内宮さ、ハゼっていつ頃まで釣れるの?」
「あの場所では今月末までかな?それ以降は海の深場に行っちゃうから。天ぷら気に入った?」
鳳来「ハゼの天ぷらがかなり美味しかった。大げさかもだけど、他の天ぷら含めて今までで一番だったよ。あ、内宮のも佳奈っちのクロダイの刺身も美味しかったよ」
「クロダイは別だけど俺の刺身はオマケだからさ。メインは自分で釣ったハゼなんだから、天ぷらが美味しければそれが一番さ」
自分で釣ったハゼを自分で揚げて食べるんだから美味しいよな。
笹嶋さんのクロダイのほかにも撮影していた鳳来さんの動画を見つつ、釣れた時の感覚とかの話題が尽きないけど解散の時間になった。先生方とは部屋の前で別れ、女子組は親御さんが迎えに来てくれる人もいたので一人で帰る人はいないので安心する。厳さんと昌史ともバスの車内で別れて、雪華と二人で帰路につく。
「ハゼパーティ楽しかったね」
「だな。ハゼも数が釣れて良かったよ」
「家族分も含めて釣れるなんてスゴイじゃん」
「な。俺もビックリだよ」
結局、助っ人はダメだった。奥さんの機嫌が悪いままで釣りどころでは無かったらしい、本当かよ?と疑ってしまう。
自宅に到着して、風呂に入る。妹弟は俺が帰るまで起きてようとしてたみたいだけど寝てしまったらしい。明日は遊んであげるからな、と思いつつも楽しかったけど疲れたのですぐに眠りの世界へと向かった。




