雪華の挑戦(雪華side)
ひろ君が双子ちゃんのお迎えに行った後、しばらく経ってからあたしは彩夏ちゃんにリビングの端へと連れて行かれる。
「彩夏ちゃん。何するの?」
対戦ゲームだと思っていたけど、違うみたい。この位置はテレビから離れているし。
「お人形遊びしよ」
お人形遊びかあ…。ゲーム機はテレビ台の中にありソフトも何本かある。
「ゲームでもいいよ」
そう言ってハードを指さす。
「ゲームはおばあちゃん家でやってきたからお人形遊びがいい」
なるほど、そういう事なら付き合いましょう。
「何の役をやればいいかな?」
「ツンデレ令嬢やって、あやかはお姫様やる」
そう言いながら箱の中からお人形を取り出して渡してくる。
「つ、ツンデレ令嬢?」
「うん。お兄ちゃんがね、ツンデレ令嬢は悪役令嬢?の進化系なんだって。困っている人に遠回しにアドバイスするのが役目って言ってた!」
「おーほっほっほってクセのある笑い方をするのがコツだって」
そう言いながらキャッキャする彩夏ちゃん。
(なるほどね。多分だけど、ひろ君が参考にしているのはフ○ーザ様かな?あたしはド○○ジョ様にしとく?真似するのは声真似では無くきっと口調だよね)
こうして、あたしは設定が不明な上にアドリブのみのお人形遊びをやることに。
☆☆☆
「おーほっほっほ」
何度目かの高笑いがリビングに響く。
「めでたし、めでたし」
彩夏ちゃんがそう言って締めた。
(ふう。とりあえず困ったら高笑いしといたけどあれで良かったのかな?)
「彩夏ちゃん。次のお話の前にお水飲んでいいかな?のど渇いちゃって」
高笑いって、のど渇くのね。
「ごめんね、雪華お姉ちゃん。見たいテレビがあるからおしまいでいい?」
時刻はもうすぐ16時50分になる。17時から見たいのがあるらしい。
「わかった。またやろうね」
そう言いながらお人形を片付けるのを手伝う。
「凪咲さん麦茶もらっていいですか?」
「そっちの黒い冷蔵庫に入ってるわよ」
自分の家から持参したコップに麦茶を注ぎ、ラーメンを食べたダイニングテーブルのイスに座らせてもらう。
「雪華ちゃんお疲れ様」
凪咲さんが労いの言葉をかけてくれる。
「お人形遊びなんて、保育園の時以来かもしれません。なので、勝手がわからず大変でした。ひろ君はいつもアレを?」
「そうね。本人曰く“俺は自他共に認めるシスブラコンだから平気だ”との事よ」
「シスブラコン?」
「シスコンとブラコン両方って意味らしいわ」
「お兄ちゃんしていて偉いなあ」
何か言いたげな凪咲さんの視線を無視する。多分、あたし達の子供なら……とか言いそうだ。今でさえ考えついて多分顔が赤いのに実際に言われたら、ひろ君の顔を見れないよ。
ふと、テーブルの中央を見るとひろ君のスマホがあった。
(しばらくの間はスマホの確認をしてあげたほうがいいかもね)