水曜日のひと幕
金目鯛を刺身と煮付けで美味しく食べた翌日水曜日。金目鯛の煮汁がもったいないので煮こごりにして朝食に出しました。冷蔵庫に入れとくだけで簡単に出来るからな。
貰ったハナスズキは元気にしている。今のところは石に体を擦り付けるといった寄生虫がいる場合に見られる症状も無いので安心している。餌はマツカサウオ用にストックしてあるスジエビやハゼといった生餌にしているけど、最終的にはクリルとかの人工餌にする予定だ。
父さんのスマホでハナスズキを動画撮影しておく、これは支社長に見せるためだな。貰った立場として飼育状況を教えておかないと、と思ったわけだ。実はこの行動が支社長や秘書さんの好感に繋がって色々と貰うようになるのだけど、それはまた別の話で。
出社前にお茶を飲んでいる父さんにスマホを返す。
「父さんこれ、貰った魚を動画撮影しておいたから、お礼言っといて」
「ああ。わかった」
「一緒にいるエビは餌用じゃなくて、人間で言うところの垢擦りマッサージしてくれるエビって説明しといて」
「ははは。うまい表現だな」
お茶を飲み終えた父さんは出社していった。
俺も雪華と一緒に登校する。
「ハナスズキは今のところ元気だね」
「そうだな、喧嘩もしないし餌も食べてるから安心している」
「でも、スジエビは食べるのにスカンクシュリンプは食べないのは不思議だね」
「だな。気持ちよさそうにエラや口まで開けて掃除してもらっている姿は見てると癒やされるよ」
「大体の水槽に入れてるよね」
「まあね。魚の餌の食べ残しとかも食べてくれるから重宝するんだよ。また買いに行かないとな」
「その時は、あたしも連れて行ってよね?」
「バイトじゃなければな」
「んもう」
本日の雪華との登校話題をしているうちに学校に到着する。
今日の家庭科は家庭科目。つまり、裁縫や調理とかの分野だな。前回は金融とかだったので多澤先生とは別の先生だった。ちなみに金融分野はそのまま金融科目と呼んでいる。
夏休み前に先生から言われたように、家庭科目はしばらく裁縫実習となる。まずは小物作りになるんだけど、作るのはボックスティッシュカバーで、手縫いで作製する。
布生地は茶色一色。まあ汚れが目立たないから良いよね。厳さんに生地を自由に買えたら何にするか聞かれたので、愛美と朝輝が好きなラーメン丼ぶり柄と答えておいたよ。ちなみに彩夏の場合はカステラ柄。母さんの腹ペコ遺伝子が強すぎるぜ。
小物作り裁縫実習は今日だけでは無いので、のんびり作製することにして終了。
今日は水曜日なので、洋菓子店は店休日。雪華のバイトは休みなので学校帰りにちょっと寄り道。とは言ってもイケナイ場所では無くて業務用スーパーだけどな。今度あるハゼパーティに魚以外で何か簡単に食べられる食材の下見に来たわけだ。
「鶏肉の唐揚げは避けたいんだよね?」
「そうだな。油を使うから作ってもいいけど、ハゼの存在感が薄くなるだろ?」
「確かにね。なら、定番のジャガイモは?」
「それは候補なんだけど、このフライドポテト用とチップス用の徳用袋のどちらにするか迷うよな。両方は流石にジャガパーティに変貌しそうだしさ」
「難しいところだね」
その後も雪華と色々見て回るけど結論は出なかった。まあ下見だしね、班の皆がそれぞれ持ち寄るのもアリかもしれないし、皆での買い出しも楽しいかもしれないよなバーべキューの時みたいにさ。そんな会話をしながら帰宅する。
自宅用に雪華と色々購入したけど我が家の冷蔵庫は大型で容量はあるので問題ない!
会社から帰宅した父さんから、支社長が大切に飼育してくれているようで嬉しい。金目鯛も美味しく調理して食べてくれたのなら、あげた甲斐があると言われたそうだ。もちろん、これらのやり取りは業務時間内では無く休憩時間に支社長にアポを取ってのやり取りだからな。
その夜に陽翔から笹嶋さんへのペンダント作製は好みを知ってから贈りたいから、しばらくはデートの都合を頼むとメッセージがきた。陽翔の家からだと少し遠いけどアーケード商店街の先にあるレジャー施設でのダブルデートもアリかもな。雪華も行ってないし。そんな事を思いながら就寝するのだった。




