9月最初の土曜日
少し遅くなりました。
夏休みが終わり、授業が再開されて最初の週末になる。土曜日の今日はブドウの食べ放題に雪華と一緒に来ている。
「ブドウ狩りの農園でもこんな感じなのかな?」
「詳しくは知らないけど、テレビの行楽地映像だと収穫しながら食べてるからペースは落ちるんじゃないか?」
「そっかー」
そんな会話をしながらもブドウの粒は俺達の口の中へと吸い込まれていく。
「種ありブドウが多いから少し面倒だね」
「時間制限の食べ放題だからな、少しの抵抗だろうさ」
「ちょこざいな」
「でもな、種ありのほうが糖度が多くて酸味が少ないと言われているから市販は種なしが主流だろ?美味いブドウを提供してくれている、と考えたほうがいいぞ」
「発想の転換だね」
俺達が主に食べているのは、大粒の黒ブドウ。他の参加者は種なしで皮ごと食べられる白ブドウ中心みたいだけど、それは罠。
価格も高いし、手軽に食べられるけど糖度も高いから甘くて飽きるのだ。それに高いブドウを○房食べた、という自己満足も出てしまうので一度手が止まると食べれなくなる。
「もうすぐ時間だからラストスパートで白ブドウを攻めるぞ!」
「待ってました!」
手が止まる人達を横目に白ブドウを食べる俺達。
そうして制限時間を迎えるのだった。
「ブドウは食べたけど何だか物足りないね?」
「だな。俺達にしてみれば食後のフルーツを先に食べただけだから、肝心の食事を胃袋が要求してるんだよ」
「なるほどね〜。あたしの胃袋は肉を所望しておりますぞ」
「なら、昼飯は肉にすっかー」
そんな会話を雪華としながら会場を後にする。他の参加者達が俺らの会話を聞いて驚いているのを知ることはない。
「昼飯まで時間あるし、この先に大型のペットショップあるから行こうぜ」
「いいね。でも、犬や猫が中心なんでしょう?」
「いやいや、俺はそんなトコに行きませんよ」
やって来たのは犬や猫以外を扱うペットショップで一階はアクアリウム関連で二階は鳥類、三階は爬虫類となっている。
「一階から見ていこうぜ、三階は雪華の好きな爬虫類だからじっくり見たいだろ?」
「爬虫類売ってるなんて嬉しい。それは最後にお願いしたいな」
という訳で一緒に見ていく。ここは淡水と海水の両方扱っているらしいな。らしいと言うのは初めて来たからだ、最近オープンしたみたい。
「ひろ君が飼育している種類もいるね」
「だな。今後の購入場所になるかもな」
大型種から小型種まで幅広いし、ペア売りされているのも魅力的だ。今回の購入は無いけど。
「二階は鳥類か」
「みたいだな」
インコ類の充実度は凄いけど、俺の好きなフィンチ類は定番のみだな。ただ、取り寄せてくれる可能性はありそうだ。
秋のカナリヤの時期になったら、また来てみようと決める。
「いよいよ三階の爬虫類だよ」
「興奮しすぎるなよ?」
雪華の興奮を抑えることは出来なかった。人気のレオパの充実度が高すぎる。
そんな中、一匹のレオパが気になる様子。
「このレオパがいいのか?」
「うん。模様が可愛い」
「値段もそこそこだし、買えばいいじゃん」
「うん。でも、コノフィツムの販売会もあるし」
これは俺達の宿命だな。趣味の幅が広いと欲しいのを厳選する必要が出てくる。ただ、一点物が多いのも事実で出会いは一期一会。この機会を逃せば出会えない場合も多い。
「ここは俺が出してあげるから買いなよ」
「でも」
「勘違いはしないように。それは雪華が自分で購入したいだろ?だから立て替えるだけ。バイト代から少しずつ返してくれればいいよ」
「うん。そういう事ならお願いします」
予定外ではあったけどレオパを購入した。店員さんからは衝動買いの注意を受けたけど飼育しているスマホの画像を見せて納得してもらう。ただ、雪華と店員さんがレオパで盛り上がってしまったけどな。
昼飯を食べるために入店したトンカツ屋さんでペットショップについて議論する。
「爬虫類はレオパを中心に充実していたから、また行きたいな」
「そうだな。魚に関しても同じだな、レア種の入荷にも期待できるぞ」
「鳥類はどうだった?お喋りのインコちゃん可愛かった」
「あれはセキセイインコだな。だけど、価値は無いと思うぞ?」
「どうして?」
「たまに『バーカ』って言ってたんだよ。多分、小学生男子あたりが言ってたのを覚えちゃったんだよ。汚い言葉を喋るのはイヤだろ?」
「そうだね。インコは意味知らないもんね、何だか可哀想」
「あの店が責任持って最後まで面倒見るなら大丈夫さ。レオパ買うときに衝動買いはヤメたほうがいいと注意する店だから信用できると思うぞ」
「そうだね。ところで、ひろ君はインコは飼わないの?」
「俺は飼わない。彩夏か愛美か朝輝が飼いたいって言うだろうからな。残しておくよ」
「あはは。確かに」
もし、ハムスターを飼いたいと言い出した場合はフクロモモンガにしてもらうけどな!
トンカツを堪能した俺達は購入したレオパがいるので帰宅することに、予備ケージに仮住まいしたレオパを嬉しそうに見る雪華。
元々飼育しているのがオスで今日購入したのが偶然にもメス。雪華がレオパの繁殖に挑む日は近いのかもしれない。




