ガサガサに行こう その3
夏休み最後のガサガサをしに海に来ました。
え?ハゼ釣りに来たばかりだろって?あれは河口、汽水域なの!
「今日は俺、別なの探すから雪華は好きにガサってていいよ。ただ、追い込みが必要な時には声をかけてね」
「いいけど、何探すの?」
「ケヤリとミドリイソギンチャク」
「あ〜」
名前を言っただけで察するのが俺達の関係を物語るよな。以心伝心というやつだ。
少し説明すると、ケヤリとは釣り餌にも使われているゴカイの仲間で泥を固めた管から鰓冠と呼ばれる触手のようなものを出して微細なプランクトン等を捕食する。この鰓冠にカラーバリエーションがあり、専門店では赤と黄色のツートンカラーは一万円近くする価格で販売されている。潮溜りで採集出来るのは、くすんだ赤色が多いけどね。潜らないと高価な色は無理だよ。
一方のミドリイソギンチャクは潮溜りとか出来る潮間帯に普通に見られる種類だ。こちらも触手にカラーバリエーションがあり、多いのはピンクで緑や黄色、白なんかもあるし蛍光色なので見た目にも華やかなのだ。
何で前回は採集しなかったのかと言うと海パンにならないと採集出来ない個体もあるから躊躇ったんだよ。そんな訳で今回の俺は海パンで採集するので草の茂みで着替える。
夏休みの彼女連れなら定番であろう海水浴やプールでの雪華の水着イべントはありません。ビキニとかの露出の多いタイプは雪華は着ない。ある場所に痣があって気にしてるから、ただし泳ぐのは好きだから10月に更新のあるジムの家族プランに雪華も入れて、ジムのプールで一緒に泳ごうとは伝えてある。その時に家の風呂でビキニを着て一緒に入ってあげる、と言われたので楽しみにしているのは内緒だ。
さて、早速採集を開始だ!まずは前回同様沖側に移動する。
「じゃあ、注意事項は前回と同じな」
「うん。危険なのと密漁対象に注意だね」
「おう」
そんな感じでそれぞれ探しはじめる。俺はイソギンチャクを採集する前に触手を水槽掃除とかで使う網〈フィッシュネット〉でガサってみる。何でそんな事をするのかと言うとイソギンチャクに隠れて暮らすカクレエビがいる場合があるからだ。イソギンチャクと暮らす有名な魚のクマノミと同じ生活をするエビになる。
「ひろ君。青い魚がいるから手伝って」
そう言われて雪華の元へ行く、が。
「雪華、あれはイワシの仲間だから捕まえてもウロコが落ちて死んじゃうから無理だよ」
「あれ、イワシなの?」
「売られているマイワシも背中青いだろ?上からだと採集心を動かされる色になるんだよ」
「すごい綺麗だね。チョウチョウウオ類も上からだと採集したくなる姿だよね」
「同感だ。あの目の部分のバンドがいいんだよな」
採集を続けること数時間、雪華もイシダイの幼魚だと思って捕まえたらオヤビッチャだったとかのあるあるをしながら採集を終了する。
俺は目的のミドリイソギンチャクを触手の色違いの個体を複数色採集できたし、ケヤリも採集した。驚いたのはカクレエビで何と7匹も採集できたのだ。
茂みで着替え終わって昼飯を食べに行くための移動中に雪華から質問された。
「何でナミチョウの時だけ、観察ケースで確認してたの?」
「幼魚の時はナミチョウと同じような感じのチョウハンやツキチョウがいるからさ。ナミチョウはもういいけど、レア度の高いツキチョウの可能性もあるからね。念の為に確認してた、専門家じゃないから何となくの確認だけどね」
「そうなんだ」
昼飯を食べに来たけど定食屋は店休日だった。仕方ないので油そばの店にする、丁度入店する人がいたので、作法があるかの確認も出来るからね。結論から言えば作法は無く、食券を購入したらカウンターで待つだけなので安心した。
油そばを食べ終えた俺達は防波堤へと釣りに来た。今日は俺もサビキでアジを狙う、実は釣りのほうがメインでガサガサは前回より短い時間だったのだ。流石に飼育スぺースが、ね。ただ、潮溜り採集は継続するけどな、主にマツカサウオの食料調達という目的で。
ただ、晩秋になり採集する魚影が少なくなれば活き餌を通販購入するからいいんだけどね。ここまで来る旅費を考えれば、通販購入のほうが安いのは言わない約束だ。
前回釣れたキュウセンは釣れないけど、成魚サイズのハタタテダイやオヤビッチャが釣れたので持ち帰る。これは飼育するのでは無く食用としてだけどな。カゴカキダイ同様美味い魚なんだぜ!
アジしか狙わない人達からは馬鹿にしているような視線を感じるが関係ない。美味い魚を知らないなんて可哀想な釣り人だ。
そんなこんなで夏休み最後の海遊びも終わり、帰宅する。時間的に釣った魚は翌日以降に食べることにして、晩飯は豚の生姜焼きだった。昼飯が油そばでは足りなかったのか、雪華も俺も四杯おかわりをしてしまったよ。
その日の夜に俺と厳さんと昌史のメッセージグループ〘シスコン同盟〙に昌史から義妹の誕生日の今日、告白して恋人同士になった報告が来た。
すまん昌史、すっかり忘れてたわ。




