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『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第6章】こころ、ふわりと浮かんで
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【第99話:静かな夜、波の余韻】

今日の話は、3日目の高揚感が夜へと移ろい、るなの心と身体にじわじわと静けさが満ちていく様子を描きました。

“止まらない衝動”の余韻と、明人とのやさしい時間。

今はまだ、心の波が完全に静まる前――

この静かな夜に、少しずつ次の日の気配が近づいています。

【第6章】こころ、ふわりと浮かんで(20話目)


夜の帳が静かに下りて、窓の外には深い群青色が広がっていた。

リビングの照明は柔らかく、部屋全体をあたたかな光で包み込む。

日が暮れるまで動き続けた身体には、じわじわと疲労の重みが沁みはじめていたけれど、心の奥ではまだ“高揚”の名残が小さく跳ねている。


「今日は……たくさん動きましたね」

明人がキッチンでグラスを洗いながら、穏やかに微笑む。

るなはソファの端に腰かけ、小さなクッションを胸に抱きながら「うん……止まらなかった。ずっと楽しくて、全部が新しくて」

自分の声が、少しだけ息を切らしているのに気づいて、なんとなくくすぐったい。


ふたりでテーブルを挟み、温かいお茶を注ぎ合う。

テレビもスマホもつけず、ただ静かな夜の空気が部屋を満たしていく。

カップから立ちのぼる湯気に顔を近づけると、目の奥がじんわり熱くなった。

動き続けた分だけ、身体は素直に休息を欲しがっている。


「明日も……こんなふうに過ごせるといいな」

るなの声は、夢の続きをなぞるように柔らかい。

明人は「今日はゆっくり休みましょう」とそっと答え、るなの肩にやさしく手を置く。

そのぬくもりが、今日一日の“動きたい”気持ちをやさしく包み込んでくれるようだった。


会話が途切れても、不思議と寂しくはなかった。

部屋の片隅には、昼間に変えたばかりのクッションカバーや、描きかけのスケッチブック、整えられた観葉植物――

それらが静かに夜の余韻を受け止めている。


「今日はほんとに、何でもできそうな気がしたな……」

るながぽつりと呟くと、明人が「そんな日が続くといいですね」と、低く穏やかに返す。

るなはその声を聞きながら、胸の奥がほぐれていくような安堵を覚えた。


ベッドに入る頃には、外はすっかり静まり返っていた。

カーテンの隙間から洩れる街灯の光が、壁に淡く揺れている。

るなは横になったまま、今日の出来事を思い返す。

まだ少し、心が浮いている。でも、疲れも混じっている。

「このまま眠ったら、明日はどうなるのかな……」

まぶたを閉じると、動き続けた手足がじんわりと温かく感じられる。


“波の終わり”が近づいている予感を、るなは心の奥にかすかに抱いていた。


静かな夜の余韻に包まれながら、

るなは深く息を吐いて、そっと眠りへと身を委ねる。

窓の外には、遠くで犬の鳴き声が一度だけ響いて、

やがて全てが静けさに溶けていった。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

3日目の夜を迎えたるなは、少しだけ疲れを感じながらも、今日一日を穏やかに振り返ることができました。

明日もまた、どんな朝が待っているのか――

そんな小さな期待と、不安の入り混じる夜。

次回も、るなの“心の波”にそっと寄り添っていただけたら嬉しいです。

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