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『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第6章】こころ、ふわりと浮かんで
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【第89話:朝の光に、まだ心は軽く】

昨日の高揚が、今朝もまだ心のどこかに残っていて。

るなの“2日目の朝”は、少し落ち着きながらも、まだ軽やかな空気を纏っています。

そんな静かな始まりを、そっと描きました。

【第6章】こころ、ふわりと浮かんで(10話目)


朝の光が、レースのカーテン越しにやわらかく降り注いでいた。

るなは枕元に届いたその光を、うっすらと開けた瞳で見つめた。

昨日よりも少し遅い目覚めだったが、それでも身体は重くなかった。

眠りは浅かったはずなのに、気持ちの奥に残るのは、不思議と澄んだ感覚だった。


「……今日も、いい日になるかな」


小さくそう呟きながら、布団の中で指を握ったり開いたりしてみる。

その手のひらに宿るぬくもりが、今朝のるなをそっと支えてくれているようだった。

ゆっくりと起き上がると、髪を一束、肩の後ろへ払いながら鏡の前へ向かう。

鏡に映る自分の顔は、ほんのりと頬に色がさしていた。


リビングへ出ると、明人がキッチンの奥で湯気の立つカップを準備していた。

彼の視線がるなに気づき、いつものように静かに微笑む。


「おはようございます、るなさん」 「……おはようございます」


返す声は昨日ほど明るくはないけれど、どこか落ち着いた調子だった。

るな自身も、その違いにふと気づく。

でも、それが悪いものだとは思わなかった。


「コーヒー、少し濃いめにしてみました。お加減、いかがですか?」 「うん……ちょうどいい。今日も、動けそうな気がします」


明人が差し出したカップを両手で受け取ると、るなはその香りにそっと目を細めた。

ゆっくりと口に含む苦味は、昨日とはまた違う輪郭で、目を覚ましてくれるようだった。


「今日は……何をしましょうか」 「少しだけ外に出てもいいですし、部屋で静かに過ごしても」


どちらでも、と言葉を添えた彼に、るなは軽く首をかしげる。


「……外もいいけど、まずはちょっと片付けから始めようかな」


そう言って立ち上がる動作は、まだ軽やかだった。

けれど、心のどこかで“昨日よりも少し慎重に”という感覚が、うっすらと広がっている。

それが何なのかは、自分でもうまく言葉にできない。

ただ、今日のるなには、そんな“曖昧な違和感”さえも、静かに受け止める余白があった。


朝の光は変わらずやわらかく、窓辺のグリーンがそよそよと揺れていた。

るなはその光を背に、手のひらを少しだけ空に向けてみる。

“まだ、大丈夫”――そう思えるだけで、十分だった。

「大丈夫」と思える朝が、ほんの少しだけ続いてくれるだけで、それは奇跡のようなこと。

今日のるなは、昨日とは違うかたちの光を受け止めながら、一歩ずつ歩き出しています。

この日々がどこへ向かっていくのか、もう少しだけ、見守っていただけたら嬉しいです。

次回も、0:00にそっとお届けします。よかったらまた覗きにきてくださいね。

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