表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第6章】こころ、ふわりと浮かんで
85/111

【第85話:止まらない心のまま、夜を迎えて】

高揚が止まらないまま、夜の空気に背中を押されていく一日。

今日のるなは、自分でも驚くほど動いて、笑って、手を止めずに過ごしていました。

“止まらないこころ”と“わずかな疲労”――

そのせめぎあいが、夜の静けさに溶けていきます。

【第6章】こころ、ふわりと浮かんで(6話目)


夕食の支度を終えたころ、窓の外はすっかり茜色に染まっていた。

るなはまだエプロン姿のまま、食卓の上を何度も行き来していた。

「今日は、サラダもスープもいつもより上手くできた気がする」

彼にそう報告する声にも、まだ明るい調子が残っている。


お皿を並べながら、ふと窓の外を見た。

日が沈みかけるその空は、今日一日頑張った自分を、そっと包み込んでくれるようだった。

「今日は動きすぎてないですか?」

彼が心配そうに尋ねる。

「ううん、大丈夫。まだ元気だし……なんか、もっと色々やりたくなるんだよね」

そう言いながら、るなは小さな花瓶の位置まで直してしまう。


食事を終えると、キッチンでの片付けもすばやかった。

普段なら途中でため息をつきたくなる作業も、今日はなんだか楽しい。

「ねぇ、このあと、お茶でも飲まない?」

「いいですね。片付けは僕がやりますから、るなさんはちょっと休んでいてください」

「え、でも私、まだ動き足りないかも」

少しだけ笑って、るなはソファに座る。けれど、じっとしていると、今度は落ち着かない。


手持ち無沙汰になると、つい爪の先で膝をなぞったり、カーテンの端を揺らしたりする。

心がせわしなく、でも不快ではなくて、“何かしていないといられない”という焦燥に近い。

リビングの明かりが少しずつ夜色に変わっていく中、

「今日は本当に、何だか止まらない一日だったな……」

そんなことを呟きながら、るなは窓の外に広がる夜景を眺めていた。


それでも、ほんの少しだけ、

“そろそろ身体のどこかが疲れているかもしれない”と気づく自分もいる。

けれど、まだ眠るには惜しい気がして、

「明人さん、あとで一緒に夜風、浴びに行きませんか?」

そう誘ってみる。


「今日は本当にたくさん動いて、たくさん話したね」と彼がやさしく微笑む。

るなはその表情に、なぜか嬉しくなって、小さく頷いた。

身体の奥にじんわりとした疲労感を感じ始めても、心はまだ“何かがしたい”と囁き続ける。


夕食後の食器を洗い終えると、るなは廊下にそっと立った。

玄関のほうから流れ込む夜の空気を吸い込みながら、もう一度深呼吸をする。

小さな決意を胸に、夜風の散歩に出かけよう――そう思った。


明人が上着を手渡してくれる。

「少し冷えるから、羽織っていってくださいね」

その一言が、るなをさらに安心させる。


「ありがとう」

そう返す声も、まだ軽く跳ねていた。


夜が訪れた静かな家のなか。

それでも、今日のるなはまだ――心のどこかで動き続けていた。

読んでくださって、ありがとうございます。

軽やかな心と動きすぎる身体、それを“自分らしい”と感じられる夜もある。

けれど、どこかに“そろそろ休んだほうがいいよ”と囁く声も。

今夜のるなは、その間でふわりと揺れていました。


次回も、ふたりの夜と朝を見届けてもらえたら嬉しいです。

引き続き、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ