表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第6章】こころ、ふわりと浮かんで
84/111

【第84話:軽やかに、止まらない手】

少しずつ心が軽くなっていくと、身体も勝手に動きたくなってしまう。

止まらない手、片付けた先に見える小さな満足。

今日は、そんな“軽躁の午後”をお届けします。

【第6章】こころ、ふわりと浮かんで(5話目)


午後のお茶のあとは、るなは机の引き出しをひとつずつ開けては整理を始めた。

本当はやる予定じゃなかったはずなのに、「今のうちにやっておきたい」と不思議な勢いがわいてくる。

ノートや古いレシート、使いかけのメモ帳――ふだんなら面倒に感じてしまうことも、

今日はなぜか「気になって仕方がない」。

指先はひらひらと軽やかに動き、机の上にきれいな山を作っていく。


「あれ、これ、もう捨てていいやつかな?」

小さな独り言が増えていく。

時々、彼にも「これ、取っておきますか?」と尋ねてしまう。

「どちらでも、るなさんの判断で大丈夫ですよ」

そうやってやさしく返されると、ますます調子に乗ってしまう自分がいる。

「……変なこと言ってたら、止めてね」

るなが少し照れ隠しのようにそう言うと、彼は静かに微笑んだ。

「楽しそうな顔をされてると、こちらも安心します」


言われてみれば、最近こんなに集中して動いたことはなかった。

片づけの手を止めて深呼吸すると、ふわりと心が弾む。

(やっぱり、今日は調子がいいのかもしれない)

根拠はないけど、どこかで「何でもできる」そんな自信すら湧いてくる。


やるべきことが片付いたあとは、ベランダで洗濯物を取り込んだ。

小さな風に当たると、気持ちがますます軽くなる。

「明日も晴れるかな」

天気予報をチェックする余裕まである自分が、少しおかしくてくすっと笑う。


夕方、明人がテーブルに夕食の準備を始めていた。

「今日のごはん、何か手伝いましょうか?」

自分からそんなふうに言い出すのも、以前の自分では考えられなかったこと。

彼が「お野菜を切っていただけると助かります」と包丁を渡してくれる。

るなは、わくわくしながらキャベツを刻んだ。


包丁の音が小気味よく響き、キッチンにはほのかな野菜の匂い。

気づけば、今日一日ずっと「動きたい」気持ちが続いている。

身体も、心も、まだまだ余力があるような気がして――

るなは、ほんの少しだけ夜が来るのが楽しみになっていた。


(今日は、夜も、ぐっすり眠れる気がする)


そんな小さな確信とともに、

るなは笑顔でエプロンの紐を結び直した。

やることがどんどん思い浮かぶ日もあれば、

何も手につかない日もある。

でも今日は、心も体も軽く動いてくれた一日でした。

次回も、0:00に更新します。

ふたりの灯火が静かに揺れる午後を描いていきます。

また覗きにきてくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ