表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第6章】こころ、ふわりと浮かんで
81/111

【第81話:ゆらぎの午前】

少しだけ、軽やかに目覚めた朝。

心がふわりと浮かぶとき、世界は昨日と同じ景色でも、どこか違って見える気がします。

今日のるなは、そんな“やわらかなゆらぎ”の中にいます。

【第6章】こころ、ふわりと浮かんで(2話目)


朝食の皿を片づけたあと、るなはソファに腰を下ろした。

姿勢は少し崩れていたけれど、どこか気分は軽やかで、ふわふわと宙に浮いたままのような感覚があった。


「コーヒー、もう少しだけいただいてもいいですか?」


るながそう尋ねると、彼はすぐに「もちろん」と返した。

キッチンでカップに注がれる音を聞きながら、るなは膝の上で指をくるくると遊ばせていた。

今朝は、胸の奥の重みが少ない。

いや、まったくないわけではないけれど、肌に触れる空気すら、いつもより軽く感じる。


「どうぞ」


彼がそっとカップを差し出す。

るなはそれを両手で受け取って、笑った。


「ありがとうございます。……あ、ちょっと熱いかも」


カップの縁に唇を近づけた瞬間、くすりと笑って引いた。

その表情は、昨日までの彼女にはなかった柔らかさを帯びていた。


「今日は、何かしましょうか。たとえば……お洗濯とか。あ、でも天気がどうだろう……」


言葉が止まらない。

浮かぶままに話してしまう自分に、るなは途中で小さく笑った。

普段なら口に出せないような思考が、まるであふれ出すように滑らかにこぼれていく。


「少し、話しすぎてますか?」


気づいたときには、彼の隣にすっと座っていた。

彼は首を横に振ると、穏やかに言った。


「いいえ。るなさんが話してくれるの、嬉しいです」


「……よかった」


小さくつぶやいて、カップをそっと膝の上に置く。


窓の外を見ると、曇り空の向こうに、少しだけ陽が差していた。

その光に包まれて、こころがふわりと浮かんでいく気がした。


「お掃除も、少ししておきましょうか。昨日あまりできなかったし……」


軽やかに言いながら、立ち上がった。

思えば、こうして“次にやること”が自然と浮かんでくるのは、久しぶりだった。


ふたり分のコップを片づけるとき、ふと手が触れ合った。

その瞬間、るなは顔をあげた。

彼も驚いたように目を合わせてきて、そしてゆるく笑った。


その笑みに、なぜか胸の奥がじんわりと温かくなった。


“今のわたし、たぶん大丈夫”

そんな予感が、そっと背中を押していた。

明日にはまた沈むかもしれない。

でも、それでも今日のるなは、確かにここに在った。

この“揺らぎ”もまた、るなの一部なのだと思います。


次回も0:00更新でお届けします。

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。

よかったら、また覗きに来てくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ