【第75話:夜明け前の静かなまどろみ】
夜明け前の静けさと、
眠りと目覚めのあわいにいる心の揺れ。
今日は、まどろみの中で感じる小さな安心と希望を描きました。
【第5章】心のひかりをたしかめて(35話目)
夜が深まるほど、家の中は静けさを増していった。
るなはベッドの中で、毛布に包まれて眠っていた。
時折、窓の外から遠くの犬の鳴き声が聞こえてきて、
それが不思議と心を落ち着かせてくれる。
まぶたの裏には、ぼんやりとした光が揺れていた。
完全に眠りきっているわけでもなく、
どこかで自分の呼吸や心臓の音を感じている。
夢と現実のあわい――
るなは、そんな静かなまどろみの中にいた。
寝室の空気はひんやりとしていて、
肩まで毛布を引き寄せると、
わずかに残るぬくもりが安心感を運んできた。
毛布の端を指先でたどりながら、
「まだもう少しこのぬくもりに包まれていたい」と
心のどこかで小さく願っている。
どこか遠くで時計の針が進む音がする。
その規則正しいリズムが、
夜明け前の不安やざわつきを、
そっと包み込んでくれる気がした。
ふと、窓の外がわずかに明るくなっていることに気づく。
カーテンの隙間から、淡い藍色の光がにじみ始めていた。
もうすぐ朝が来る。
今日もまた新しい一日が始まろうとしている。
耳を澄ますと、家のどこかで小さな物音がする。
彼が早起きして、
そっとキッチンのドアを開ける気配――
いつもより静かに始まる朝の準備の音が、
るなを現実の方へと少しずつ引き戻していく。
心の奥には、まだほんの少しだけ重たさや不安が残っている。
昨日までの出来事が、夢のように思えてしまうこともある。
それでも、こうして新しい朝を迎えられることが、
今のるなには大きな支えだった。
毛布の中で身体を丸めながら、
眠りの余韻と目覚めの気配がゆっくりと溶け合っていく。
どこかで小鳥のさえずりが一声だけ聞こえ、
それが「今日も始まるよ」と優しく告げてくれているようだった。
るなは目を閉じたまま、
深く息を吸い込む。
胸の奥に小さな不安も残っているけれど、
同時に「また今日もこの家で目覚められる」という
淡い希望のようなものが心を照らしていた。
ゆっくりまぶたを開けると、
窓の外は夜と朝のあわい――
やわらかな光が少しずつ部屋に満ちていく。
眠りと目覚めの間、その静かなまどろみの中で、
るなは小さな安心を胸に、
新しい朝をそっと待っていた。
朝が来る前の、短いまどろみの時間。
その静けさや淡い光が、
新しい一日への優しい支えとなりますように。
次回も0:00更新でお届けします。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。




