【第62話:朝の光を受けて】
朝の光がそっと部屋に差し込むとき、
昨日までの重さが少しずつほどけていく気がします。
今日は、新しい一日の始まりと、小さな回復の時間を描きました。
【第5章】心のひかりをたしかめて(22話目)
カーテンの隙間から、朝の光がそっと差し込んでいた。
るなは寝室でゆっくりと目を覚まし、しばらく毛布にくるまったまま
静かな呼吸に耳を澄ませていた。
まだ少し体に眠気が残り、頭の奥がぼんやりとしている。
けれど、窓辺に漂う冷たい空気と、
やわらかな陽射しが混じり合う感触が、じんわりと胸をほぐしてくれる。
思い切って毛布を肩から外し、
冷たい床の感触を素足で確かめながら、
ゆっくりと寝室を出る。
廊下を進むたびに、
カーテン越しの光や、遠くで小鳥の鳴き声が微かに聞こえてきた。
リビングに入ると、
彼がもうテーブルの上に朝食を並べていてくれた。
湯気の立つスープ、焼きたてのパン、
そして小さな花瓶には庭で摘んだばかりのスミレが生けてある。
「おはようございます、お嬢様」
彼がやわらかな声で迎えてくれる。
るなは「……おはようございます」と返し、
まだ少し夢の余韻が残るまま椅子に腰掛けた。
窓の外は、朝の光が庭の草花や木々をやさしく照らしている。
空気は澄みわたり、
遠くから小鳥たちのさえずりや、
時折風に揺れる枝葉の音が穏やかに届く。
「体調はいかがですか?」
スープをよそいながら、彼がやさしく声をかけてくれる。
るなは少しだけ微笑んで「昨日より、少しだけ軽い気がします」と答える。
その言葉に、彼も安心したようにうなずいた。
スープをひと口飲む。
ハーブの香りが鼻先をかすめ、
温かな味が体の奥まで沁みていく。
パンをかじると、香ばしさとほのかな甘みが
口いっぱいに広がり、心まであたたかくなる。
朝食をとりながら、
るなはゆっくりと窓の外の景色を眺めた。
陽射しにきらめく朝露、風に揺れる葉、
どこか遠くの通学路を歩く子どもたちの声も微かに聞こえてくる。
何気ない朝の光景が、
今日も自分をそっと包んでくれているようだった。
「今日も一日、ゆっくりお過ごしください」
彼の言葉に小さくうなずき、
るなは深呼吸をした。
昨日までの重さが少しずつほどけて、
「また今日もここから始められる」
そんなささやかな希望が、胸の奥に静かに灯った。
朝の光は部屋の奥までやさしく差し込んでいる。
るなはカップを両手で包み込み、
温もりとともに新しい一日の始まりを、静かに受け止めていた。
静かな朝の光や、あたたかな食卓――
そうした日常の中に、心がやわらぐ瞬間があると感じます。
どんな一日も、まずは小さな一歩から。
明日も0:00更新でお届けします。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。




