【第58話:夕暮れを待つ部屋で】
まどろみから目覚めた午後、
静かな光や風の音に包まれて、心が少しずつほどけていく。
今日は夕暮れを待つ、静かな時間を描きました。
【第5章】心のひかりをたしかめて(18話目)
しばらくまどろんでいたせいか、
るなはゆっくりと目を覚ました。
部屋の中は、まだやわらかな午後の光で満たされている。
ソファの上には、毛布とクッションが散らばり、
ハーブティーのカップには、まだ少しだけ温もりが残っていた。
まぶたの裏に残る微かな光。
体の奥には、眠気と目覚めが混ざり合った心地よいだるさがあった。
しばらくぼんやりと天井を見上げていると、
窓の外から風が木々の葉を揺らす音が聞こえてきた。
昼間よりも風がやや強くなり、
カーテンがふわりと大きく揺れる。
その動きを見ているだけで、
心がゆっくりと落ち着いていく気がした。
るなはソファからそっと起き上がり、
まだ温もりの残るカップを手にして窓辺に移動する。
カーテン越しの光が肌にやさしく降り注ぎ、
外には、夕方に染まり始めた空が広がっていた。
残りのハーブティーをひと口飲み、
静かに深呼吸をする。
午後の重さはまだ体に残っていたけれど、
さっきまでの疲れや眠気は、
ほんの少しだけ和らいだ気がした。
「お目覚めですか?」
彼が廊下のほうから声をかけてくれる。
「……はい。少しだけ、うとうとしていました」
そう答えると、
「お疲れが取れたご様子で、何よりです」
と、やさしい笑顔で見守ってくれた。
るなは窓辺から外の空を見上げる。
淡いオレンジ色に染まりはじめた雲が、
ゆっくりと流れていくのが見える。
庭の木々の影も少しずつ伸びてきて、
鳥たちの声も、昼間とはまた違った響き方をしていた。
カップをテーブルに戻し、
ソファにもう一度腰を下ろすと、
さっきまで体にまとわりついていた重さが、
ほんのわずかだけ軽くなった気がした。
ふと見上げた時計の針が、夕暮れに向かって少しずつ進んでいる。
時間は止まっていない――
その当たり前のことが、今日は少しだけ心強かった。
「夕方になったら、また温かい飲み物をお持ちしますね」
「……お願いします」
るなは小さく返事をし、
しばらく静かに目を閉じた。
窓から差し込む夕暮れの光と、
部屋に漂う穏やかな空気。
静かな時間が、少しずつ夜に向かって歩き出していく。
るなはもう一度だけ深呼吸をして、
今日もこの部屋で、やさしい夕方を迎えられることに
そっと感謝した。
何気ない一日の中で、
ふとした瞬間に感じる「進んでいる」時間の流れ。
そんな小さな気づきや変化が、心の支えになるのだと思います。
明日もまた、0:00に静かな灯火をお届けします。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。




