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『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第5章】心のひかりをたしかめて
55/111

【第55話:窓辺に差し込む光】

朝のやわらかな光と静かな時間。

予定のない午前が、るなにとっては新しい一歩になることも。

心の小さな揺れと、穏やかな日常を今日も描きました。

【第5章】心のひかりをたしかめて(15話目)


朝の紅茶を飲み終えたあと、

るなはゆっくりとカップをテーブルに戻した。

窓の外では、すでに太陽が高く昇りはじめ、

カーテン越しにやわらかな光が差し込んでいる。

その光が、テーブルやソファ、床の上に薄く影をつくり、

部屋の空気をほんのり明るくしていた。


るなはしばらく、窓辺に腰をかけて外を眺めた。

庭の木々が朝の風に揺れている。

花壇の花も、昨日より少し背が伸びたように見えた。

鳥たちのさえずりや、遠くを走る車の音が、窓越しに小さく届いてくる。

るなは小さく深呼吸をして、

自分の中に、まだ静かな余韻が残っていることを感じる。

胸の奥には、昨日までの不安と、今の静けさが、ゆっくりと混ざり合っていた。


「お嬢様、朝食のご用意ができております」

彼の声が、廊下から静かに響いた。

るなは「すぐに行きます」と返事をして、

そっと椅子から立ち上がる。


ダイニングには、あたたかいトーストと、

卵料理、フルーツの入った小さな皿が並んでいた。

彼は静かに椅子を引いて、るなを迎える。

「食欲はございますか?」

「……はい。少しだけなら」

るなは控えめに答え、トーストに手を伸ばす。

サクッとした焼きたての香りと、

ほのかに漂うバターの香りが、るなの食欲を少しだけ引き出してくれる。


「今日も特に予定はありませんので、

ご無理なさらず、お過ごしください」

「……ありがとうございます」

彼のやさしい声に、るなは小さくうなずいた。


朝食を終えたあと、

彼は静かに食器を片付け始める。

るなはその後ろ姿をぼんやり眺めながら、

「手伝いましょうか」と声をかける。

「お気持ちだけで十分です。どうぞ、おくつろぎください」

彼はそう返し、やわらかく微笑んだ。


食器の重なる音、

洗い終えた皿が丁寧に拭かれていく音、

そして窓から流れ込む新しい空気。

少しずつ、家の中が目覚めていく。

るなは指先でカーテンの端をそっとなぞる。

外の光に包まれて、ふと「今日は何をしよう」と小さく考える。

予定のない午前、それだけで少し不安もあるけれど、

「今はこの静けさを味わってもいい」と自分に言い聞かせる。


もう一度、窓辺の椅子に戻り、

外の光にそっと手を伸ばした。

その手のひらに、朝のやわらかな日差しが静かに降り注いでいた。

その小さな温かさが、るなの胸の奥に静かに灯っていく気がした。

やさしい朝の空気や日常の音――

それだけで心が少しほぐれる瞬間があるのだと思います。

今日も静かな一日を大切に過ごせますように。

次回も0:00に更新します。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

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