表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第5章】心のひかりをたしかめて
54/111

【第54話:静かな朝のはじまり】

夜の静けさがやわらかく消えていく朝。

目覚めの小さな不安や、そっと差し出された温もり――

今日は、新しい一日の始まりと、そのやさしい一歩を描きました。

【第5章】心のひかりをたしかめて(14話目)


朝、るなはまだ薄暗い部屋の中で目を覚ました。

カーテンの隙間からは、ごくわずかな光が差し込んでいる。

体の奥に、昨日までの余韻がふんわりと残っていた。

ソファでうたた寝をしていたせいか、毛布のぬくもりがまだ指先にまとわりついている。


窓の外では、鳥が一羽、静かに鳴き始めた。

るなはゆっくりと上体を起こし、膝の上に毛布をたたむ。

ほんの少しの眠気とだるさを感じつつも、

「今日もまた始まるんだな」と、

小さく心の中でつぶやいた。


リビングには、まだ誰の気配もない。

昨夜のハーブティーのカップがそのままテーブルに残っていて、

ランプの灯りだけが、ぼんやりとした光を落としている。

るなはカーテンを少しだけ開けてみる。

冷たい朝の空気が部屋の中に入り込み、

肌をひやりと撫でていった。


「おはようございます、お嬢様」

廊下から、彼の静かな声が聞こえてくる。

るなは思わず、毛布をぎゅっと抱きしめた。

「おはようございます」

少しだけ声が震えてしまうけれど、

彼はそれに気づいた様子で、やわらかい微笑みを返す。


「今朝は冷えますね。温かい紅茶をお淹れします」

彼がそう言ってキッチンへ向かう音が、

家の中にやさしく響いていく。

るなはゆっくりと椅子に座りなおし、

窓の外の明るくなりかけた空を眺める。

遠くで車が走る音、どこかで新聞を取りに出る足音、

日常のはじまりが、少しずつ家の中に満ちていく。


まもなくして、紅茶の香りが部屋いっぱいに広がった。

「お待たせいたしました」

カップを手渡され、るなは両手で包み込む。

温かな紅茶の熱が、指先から少しずつ心まで染みていく。


「昨日は、よく眠れましたか?」

彼がそう尋ねる。

るなは、少し考えてから「はい。たぶん、ゆっくり眠れました」と返す。

「それは何よりです。無理はなさらず、今日もゆっくり過ごしてください」

やさしい声に、るなは思わず目を伏せた。

「……ありがとうございます」


カップの底に映る、淡い朝の光。

心のどこかで、また一歩前に進んでみようと思えた。

「今日も、少しずつ。無理せず――」

そう心の中で唱えながら、るなは小さく息をついた。

心がまだ起ききれない朝も、

誰かのやさしさや静かな日常に支えられて、

少しずつ動き出せるのだと思います。


明日もまた、0:00更新でお届けします。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ