【第52話:ゆれる午後の光】
静かな午後、庭や縁側の光のなかで、
心がゆっくりとほぐれていく。
五十話目の今日も、日々の小さな変化を大切に描きました。
【第5章】心のひかりをたしかめて(12話目)
縁側で紅茶を飲みながら過ごしたあと、
るなはカップをそっとテーブルに戻した。
外の光はゆっくりと傾きはじめ、
庭の花や葉っぱが少しずつ色を変えていく。
ふと、風が強くなり、カーテンが大きく揺れた。
その音に、るなは思わず肩をすくめる。
けれど、執事が静かにカーテンを押さえてくれて、
「もうすぐ陽も落ちますね」とやさしく声をかける。
「今日は、なんだか時間がゆっくり流れている気がします」
るながそう言うと、
「こうして外で過ごされるのも、心に余裕ができてきた証かもしれません」
と、執事は静かに微笑む。
るなは縁側から足を下ろし、庭の端まで少しだけ歩いてみた。
石畳の上を歩くたびに、
足裏からやわらかなぬくもりが伝わる。
庭の一角に咲いた小さな花にしゃがみこみ、
手のひらでそっと花びらを包んだ。
「この花、去年もここに咲いていたんですね」
るなはそうつぶやく。
「はい。お嬢様がこの家に来られてから、毎年同じ時期に咲きます」
執事が静かに答える。
ふと見上げると、枝葉の間から淡い夕陽がこぼれ、
庭全体を金色に染めていた。
そのまましばらく、るなは庭にしゃがんだまま、
そよ風や葉のこすれる音に耳を澄ませる。
庭の隅にはベンチがあり、
執事が「お疲れではありませんか」とそっと声をかけてくれる。
るなは「もう少しだけ外にいたいです」と微笑み返し、
ふたり並んでベンチに腰掛けた。
背中に感じる木の温かさや、
庭から立ちのぼる土と草の匂い、
どれもが、るなにとっては新しい発見のように感じられた。
「そろそろお部屋に戻りましょうか」
執事のやさしい誘いにうなずき、
るなはゆっくりと玄関へ向かう。
扉を閉めると、外の空気の余韻がふんわりと心に残っていた。
家の中に戻ると、
るなはもう一度、カップに残った紅茶を温め直してもらい、
ソファに腰かけて小さく息をついた。
今日という一日が、また静かに暮れていく。
るなは窓の外を眺めながら、
明日もまた新しい一歩を踏み出せる気がしていた。
物語が五十話まで続いたこと、ここまで読んでくださったこと――
本当にありがとうございます。
これからも一歩ずつ、静かな日々を丁寧に紡いでいきます。
次回も0:00更新でお届けします。




