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『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第3章】ほんの少し、言葉になる
23/111

【第23話:触れず、そばにいる】

気づかれたくなかったのに、

気づいてくれていて、

でも何も言わず、そばに居てくれる――

そんな朝の灯火です。

【第3章】ほんの少し、言葉になる(14話目)




朝の光がカーテン越しに差し込み、

るなはいつもより少し遅く、リビングに降りてきた。


明人はすでにテーブルに湯気の立つカップを並べていた。

ふたり分。

それを見たるなの足が、ほんの一瞬だけ止まった。


「……気づいてました?」


明人が声をかけたのは、るなが椅子に腰を下ろした直後だった。

背筋を伸ばしながら、彼は目を合わせないまま、静かに続ける。


「昨日、お嬢様の手が震えていたこと。

 あれは、風のせいではありませんよね」


るなは答えなかった。

返せる言葉が、見つからなかった。

気づかれたことが恥ずかしくて、

でも、気づいてくれていたことが、どこか嬉しくて――

その気持ちをどう言えばいいのか、分からなかった。


そのかわりに、目の前のカップにそっと手を添えた。


「……うるさいな」

小さな声が、湯気の向こうで揺れた。


「そんなの、気づいてないふりしてくれてよかったのに」


明人はそれにも返事をしない。

ただ、隣に座るるなのカップに、少しだけミルクを足した。


「甘さが、少しだけ足りなかったように見えたので」


るなは、黙ってカップを持ち上げた。

その手は、もう震えていなかった。


(続く)

見透かされたようで少し恥ずかしくて、

でも、それでも良かったと思えた朝。

そっと注がれたミルクに、何も言わない優しさが滲んでいました。


ここまで読んでくれて、ありがとう。

また灯火を灯しに来ます。

よかったら、これからも見守っていてください。

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