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『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第3章】ほんの少し、言葉になる
22/24

【第22話:何も言わずに分かっていた】

言葉じゃなくて、仕草でもなくて。

ただ“そこにいる”という確信だけが、

今日のふたりを静かに包みます。

第3章、ほんの少しの終着点です。

【第3章】ほんの少し、言葉になる(15話目・最終話)




るなはカップを置くと、少しだけ体を預けるようにソファに深く座り直した。

隣に座る明人の肩とは、まだほんのわずかな距離がある。

けれど、不思議とその距離が、心地よかった。


「……昨日、ありがとう」


ぽつりと呟いたその声に、

明人は「どういたしまして」と言うこともなく、ただ小さく頷いた。


目は合わない。

けれど、何も言わずにそうしてくれていることが、今は何よりも嬉しかった。


「昔だったら……こういうの、拒絶してたかも」

ぼそりとつぶやいたるなに、明人は視線だけを向ける。

それに気づいたのか、るなは照れたように笑った。


「今はちょっとだけ、違うの。……少しだけ、ちゃんと生きたいって思う時がある」


それは、るな自身が自分にもまだうまく言えない感情。

でもそれでも、言ってみようと思えたのは――

この沈黙の中で、明人がずっと灯してくれていたから。


カップの中の紅茶がまだ温かいうちに、

ふたりは並んだまま、何も言わず朝の光に溶けていった。


誰も気づかない小さな確信が、

その日、背中越しから――すこしだけ、横に並んだ。


(第3章・了)

今日は1話だけの更新です。

第3章の締めくくりとして、

少しだけ静かな余白を持たせたくて、

ひとつだけ、灯火を灯しました。


次回からは【第4章】が始まります。

まだ少しだけ、夜の余白に佇むふたりを見守っていただけたら嬉しいです。

朝を迎えるその前に、ほんの少しだけ、灯火を確かめるように。

次回も0:00と0:10に更新致します。


ここまで読んでくれて、ありがとう。

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