表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『背中越しの灯火(ひ)』   作者: ふぃりす
【第1章】黙って見てるだけの距離
2/73

第2話:画面越しの灯

画面越しに繋がる想い。

声にならない言葉は、“いいね”の中にこっそり灯って。

【第1章】黙って見てるだけの距離(2話目)




「今日も、来てくれたんだね」


画面越しの配信通知に目を落としながら、るなはつぶやく。誰に聞かせるでもなく、でもそこに“誰か”が居ると信じているような声音で。


スマートフォンの画面には、るなが何気なく綴ったツイートや、短いライブ配信が映っていた。


反応は少ない。フォロワーも多くはない。けれどその中に、いつも見守っているアカウントがひとつある。


「いつも“いいね”をくれる、無言のアカウント。

もしかしたら、あれは――明人かもしれない。

けれど、確かめたことは一度もない。

もしそうでなかったら。もし、そうだったとしても。

知ってしまったら、きっと、この距離は壊れてしまう。」


確かめたい気持ちは、ずっとあった。

けれど、それ以上に怖かった。


“この灯火が、誰のものでもなかったらどうしよう”

そう思ってしまった瞬間、きっと私はもう立ち上がれなくなる。


久遠明人は、それを知っていた。


執事として、表立って関わることはない。けれど、彼女が発信するものには必ず目を通し、何も言わずに“いいね”を押し、必要とあらばDMのひとことを残す。


「ちゃんと、見てますよ――お嬢様」


るなが疲れた声で呟く夜も、寝落ちして更新が止まる朝も。 それでも、明人の“灯火”は変わらず灯り続ける。


彼女が振り返らなくてもいい。ただ、進むその背中を、まっすぐ照らす光であればいい。


それが、久遠明人の“愛”の形だった。


彼は、名を呼ばれなくてもいい。


言葉を返されなくてもいい。


それでも、あの背中が進む限り――灯火は、そこに在り続ける。

たとえ見えなくても、届かなくても、見守ることはできる。

明人の静かな愛の形、伝わっていたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ