第二章 ガーディアン③ 遺恨
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「CHILD」
https://youtube.com/shorts/yy-TQ-HsMWA
お手数ですがブラウザでURLをコピペしてお聴きください
「夜の街とその闇を駆け抜ける黒い影」をイメージして作りました
聴いてから本編読むとテンション爆上がり!
一部始終を見ていたタケシとルミ。その二人の元へ本城がやってきた。
「この星の人たちも、なかなかものですね…」
とルミは独り言を呟くように本城へ言った。
しかし
「お二人とも、今回はこちらの指示に従って投降していただいたので諸々は不問といたしますが、今後はこうした外患は我らガーディアンにお任せいただきたい」
本城はルミの言葉を意に介さず、要件だけを伝える。
「手を出すな、ということ?」
「素人の手助けは要らぬ、ということです」
「彼らの身柄は?」
「県警に預けます。すでに連絡は取りました」
「私たちの聴取は?」
「我らは警察ではないので」
「そう… …行こ、タケシくん」
「…はい」
◆
「フェイズアウト…」
ルミはスーツの装着を解いた。コマンドを発するその声に力は無かった。
「フェイズアウト」
タケシもまた元の姿へ。
「守人さん。これ」
バイクのところまで戻ると、タケシはルミにヘルメットを差し出した。
「帰りは終バスも無いかと思って。ルミさんを乗せて帰るつもりでしたんで。後ろ、乗ってください」
「そう…これ、被んなきゃダメ?」
「何言ってんすか。当たり前ですよ」
「でもスーツ着てれば事故っても大丈夫じゃない? むしろ頑丈、みたいな」
「はぁぁぁ…ここは地球なんで、ここの法令に従ってもらいます」
タケシはため息混じりに呆れる。
「分かったわ…これ、よく分かんないから、やって?」
とルミは顎を突き出す。ヘルメットのベルトの留め方が分からないらしい。
「…はいはい」
「ハイは一回でいいからね?」
「…はい…」
◆
タケシたちが現場を去った直後、パトカー2台と大型の車輌がやってきた。大型の車輌とはすなわち護送車である。
パトカーから降り立った男がビル内へ。
「お疲れ様です。県警の林です。責任者は?」
「私だ」
本城が対応する。すでに防護服を脱ぎ、上下ともジャージに着替えていた。その姿を見て、林がピクリと固まる。
「未紗…?! あ、いえ、失礼。今は何とお呼びすればよろしいですかな?」
「本城未紗と名乗っています」
「旧姓、か」
「ええ。お元気そうで、何より」
「君も、いやそれは失礼か、そちらもご活躍のようで」
「それほどでも。今では内閣府直属で外患対応をやっていますが、まぁこんなものですよ」
と、冷凍マグロのように並べた、捕えた3人を指し示す。
「内閣府直属とは、出世したものですな」
「そうでもないです。仕事は仕事、ですから」
その声には少々得意げなトーンも感じられた。
「そうですか。よし、運ぶぞ。処置が必要かはお医者さんに任せる。取り調べはその後だ。中川君は出発時に署へ連絡。到着予定時刻を連絡してくれ」
「はい」
「高橋と古賀はそれぞれパトカーの運転。護送車を前後で挟む。念の為、銃は出せるようにしておけ」
「はい」
「了解しました」
「さて、それでは…皆さん、捕物、ご苦労様でした」
林が敬礼すると、ガーディアンの面々もそれを敬礼で返した。
護送車へ積み込まれるアンジェラスたちを見送る林。
(ここまで…するものなのだろうか…それとも俺が甘いのか…)
◆
現在ファミリーレストラン。深夜料金の発生するこの時間帯に、ルミが寄って行けというので来た。無論、タケシも夕食はまだだったのでそれに反対する理由もないのだが。
席に着いて、ルミは無言。むしろムッとした表情。触らぬルミに祟りなし、とは編集部に伝わる言い伝えであり、タケシも編集部村のしきたりに従う者の一人だ。
注文の品が届いたので、さすがにタケシも口を開かざるを得ない。
「さぁ、食べましょうか」
途端。
「なんなのよーッ! あの女ァァァァッ!」
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク…
鉄板ハンバーグミックスグリルがフォークによって耕されていく。ハンバーグが、チキンが、ウィンナーが…見る見る無惨な姿に。でも鉄板で良かったな、とタケシはちょっとだけ思った。
「ガーデニングだかカーデガンだか知らないけどっ!」
「ガーディアン、です」
「なーによ、エラそうにっ! 素人扱いしやがってぇっ! こちとらワステロフィだってぇのっ! これでもエリートなのよっ?」
『これでも』の部分は謙遜なのか己のことが分かっているのか…とツッこむのはヤブ蛇だと風音タケシは知っている。日々学習しているのだ。それゆえ黙秘する。
「分かりましたから。分かりましたが…それ、ちゃんと食べてくださいね?」
「え?」
言われて初めて気付いたのか、鉄板の上にはお食い初めで子供にあげる食事レベルで細かくなったハンバーグミックスグリルが。
「食べ物を粗末にする人、オレは許しませんから!」
キッパリと言ったのが効いたのか
「…はい」
ルミはしおらしく返事をした。珍しい。
しょんぼりとハンバーグたちの破片を口に運びながら、ルミは呟いた。
「…でも…ちょっと気になることもあるのよね…」
とフォークを置く。
「何がです?」
「結局、何人か取り逃してるわけじゃない?」
「はい」
「あの現場を見たら…復讐、するわよね」
「復讐、ですか」
「うん。私たちワステロフィもデギールに対しては厳しく接するし、捕物も激しいものだけど…あそこまではしない、かな。やり過ぎれば反感買って、感情的な報復を生みかねないもの」
初めてギャノンスーツ姿のルミと対峙した時、随分とこっ酷い目に遭ったような…とタケシは懐古するが、口には出さなかった。
「あれだけ力量差があれば、大人しくするんじゃないですかね?」
「そうであってくれればいいんだけど…ガーディアン側の手の内も、あっちは知っちゃったわけじゃない? 当然対策してくると思うのよ。でも…あの本城って女からは何というか、慢心のようなものを感じるのよね」
「自分らは強い、負けない、みたいな?」
「その程度の自信ならまだしも…なんというか、さっきのオペレーション自体、なんとなくマニュアル化されてるものをこなしてるだけって感じで。野生の動物だって、逃がせば同じ罠には掛からないじゃない? それを人間相手になんて…どうなのかしら、と思うの」
「プロっぽい意見ですね」
刹那、ルミはカッと目を見開き
「何言ってんのっ?! 私、プロよっ?! ワステロフィなのよっ?!」
でんでんでんとルミはテーブルを叩く。しまった、一言余計だった、と反省しつつ、今そこを通ったのがネコちゃんロボで良かったと思ったタケシだった。
「考え過ぎ、じゃないですかね?」
「うん…杞憂で済めばそれでいいんだけどね…」
ルミが言葉を濁した。それゆえタケシもそれ以上は追求しなかったのだが。
その杞憂は、間もなく現実となる。
◆
〈林さん!〉
先導するパトカー内、護送車から無線で呼ばれた。
「どうした?」
〈確保した3名が…消えました…〉
「何ィッ?」
車列を車道脇に寄せ、林は護送車の中へ入る。確かに…確保したはずの3人がいない。
「護送中、突然彼らの下に黒い穴が空いて…飲み込まれて消えました…」
制服警官が蒼ざめた顔で報告した。
「またか…」
以前も確保した容疑者が病院で黒い穴に消えた。林の顔には苛立ちと悔しさが浮かぶ。
◆
ED「あなたの隣で深呼吸」
https://youtube.com/shorts/gZ-NHOOCiGw
とても背の高い男の子を好きになった女の子の歌
癒し系ほのぼのソングなのに本編最終エピソードまで読み切ると歌詞の意味が心に痛い!