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第二章 ガーディアン② 作業

YouTubeにて音声動画上げてます


OP「CHILD」


https://youtube.com/shorts/yy-TQ-HsMWA


お手数ですがブラウザでURLをコピペしてお聴きください


「夜の街とその闇を駆け抜ける黒い影」をイメージして作りました

聴いてから本編読むとテンション爆上がり!


※挿絵はAIにて作成

ツノ、要らんのだけど…

 その車輌は建物前に止まると、ゴツいブーツの靴音を立てて建物内に入る。乱暴に蹴り開けられたドアからは、投光機の強烈な明かりがタケシたちのいる部屋へ投げ込まれた。その明かりを背中に、4つの人影。

 人影の一つが拡声器で叫んだ。それはハリのある女性の声。

《動くな! 我々は! 内閣府未確認外患防衛局所属部隊! 通称「ガーディアン」である! この建物内に不審な様子があるとの通報があり、来た! この場にいる者は、すべて武器を捨てなさい! 武器を捨てない場合、反抗の意思ありと判断、鎮圧する! その際、手段は選ばない! 今から3つ数える! 繰り返す! 今から3つ数えるうちに武器を捨てない場合、反抗の意思ありと判断、鎮圧する! その際、手段は選ばない! 3!》

「タケシくん! ブレイドを!」

 ルミはガテーヌを手放し両手を頭の後ろで組んだ。

《2!》

「彼女に従いましょう。あれは敵ではない、と思いたい」

 冷静にルミは言う。

「…分かりました…」

 タケシもブレイドを手放し、ルミに倣って両手を頭の後ろに組み、声の方を向く。

《そこの二人! こちらへ!》

 言葉に従い、彼らの元へ行く二人。そして逆光の環境から逃れることで分かった、彼らの容姿。

 一番近い表現が、鎧兜(よろいかぶと)

 身体には剣道の防具のような胴、垂、そして小手。のみならず肩や前腕、腿、脛には追加の防具。そして頭部にはツノのない兜。それら防具の下にも、何か革製のような服(?)を着ている。ただしそれらはオーバーサイズなのか、全体的に着膨れしたように大きい。

 いま拡声器で叫んでいる以外の3人。一人は大きな木槌。もう一人は、棍棒とでも言うか、とにかく先へ向け太くなっている棒。そしてもう一人は背中に大きなリュックを背負い、10発の.45ACPを込めたシグP320フルサイズを構える。小型のリボルバーでないことから、彼らの言葉通り警察組織とは別物であることが窺える。

《1!》

「どうすんべ…」

「かまわねェ! やっちまァぜッ!」

《警告はした! これより! 外患鎮圧を始める!》

 そう言って拡声器を置くと、立て掛けていた刺又を持つ。

「作業開始ッ!」

 掛け声と共にイカつい武器を持ったガーディアン2人がゆっくりと前進、アンジェラスとの距離をジリジリと詰める。

「人数ならこっちが上じゃん!」

「行くぞッ!」

「「「ウオォォォ!」」」

 赤い刃を振り翳し、アンジェラスも前進。部屋の中央で両軍が衝突した。

 先手はアンジェラス。

「喰らえェェェェっ!」

 先行したタクミの赤い刃が木槌を持った須藤の肩を捉え、派手な破裂音を立てる。しかしながら、驚いたのはタクミ、そしてアンジェラスの方だった。

「うっそぉ…」

「何でアイツ、立ってられンだよ…」

 いつもなら一撃必殺な彼らの武器が効いていないのだ。

「効いてない…?」

 ルミも驚愕する。

「あれはですねぇ、よいしょっと」

 リュックから何やら取り出しながら、そのリュックの持ち主が説明する。

「あの赤い棒が何でできてるかは分からないんですが、導電性のあるものだとダメージあるようなんですよ。なのでガーディアンではこんな風に、防具は木製、下に着るスーツ、っていうんですかね、これは動物の革なんですよ。私のは豚の革なんでちょっと可愛くないですけどね」

「それでも物理的衝撃はあるじゃない? それにそんなゴツい服で、動きにくくないかしら?」

「このスーツもただの革製じゃなくって、スニーカーなんかに使われる衝撃吸収剤が内側に使われてるんですよ。それと関節部には業者さんにご協力いただいて、介護用のロボット、っていうんですかね、あれのサーボモーターを各関節に利用しています。だから見た目よりも軽々と動けるんです。ああ、申し遅れました、私、内閣府直属の未確認外患防衛局に所属します部隊、局内では『ガーディアン』と呼んでいる組織の者で、上野、と申します。未確認外患ですからね、本来は武装したスパイなんかを相手にするはずなんですが、なんかこうした任務に駆り出されることが多いんですよ。皆さんは…どちら様?」

 なんとも気軽に聞かれたものだが。

「私は星間警察機構、いわゆるワステロフィの捜査一課、先攻捜査隊一査のルミエール=シューレンです」

「オレは」

「彼は民間人ですので個人情報に該当する内容は応えるのを差し控えさせていただきます」

 タケシが『自己紹介』をしかけたところをルミに遮られた。

「ルミさん…」

「ああ、いいですよ。みなさんは従順にこちらの指示に従っていただけましたんで」

 この上野という女性、なんとも気楽に答えるものである。

「ダメですよぉ? 無関係の民間人がこんなところでウロウロしてちゃ。お巡りさんのお仕事が増えちゃいますからねぇ。それで、シューレンさん、捜査一課ということは警察の方ですか?」

「え、あ、ええ、そんなところです」

 『星間』のところが聞こえなかったのか、スルーされた。

「お互い大変ですねぇ。体を壊さない程度にがんばりましょう」

「ああ、はい、そうですね、お互い」

 井戸端会議のようなのんびりさにルミはすっかり会話のペースが乱されている。

「あ、そろそろあっちも終わりそうですかねぇ」



 タクミの初撃が効かず面食らったアンジェラスだが引くわけにはいかない。

「クッソオォォォォッ!」

「タクミ!」

「ウワァァァァァァッ!」

 ショウ、モエノ、ミクの3人も鎧兜(よろいかぶと)のシルエットへ赤い刃(シュヴェルト)を叩き込む。またも刃が当たった木製の鎧から派手な音が上がり、焦げたような臭いが立ち込めた。木槌を持った須藤が集中攻撃を浴びる。工夫をしたとはいえ全くダメージが無いわけではない。集中して受けたため、膝がガクンと落ちた。

「ヨッシャ! 効いてんぞ!」

 タクミがさらに攻撃を入れようと構えた時。

 ゴオッと何かが空気を押し分ける音。それをタクミはとっさに躱すが、机の上に落ちると天板から真っ二つに折り曲げてしまった。尼ヶ崎の棍棒だった。

「やっば!」

 ミクが驚きの声を上げる。

 タケシたちやアンジェラスが着用するスーツあるいはアンザグと呼ぶものは銃弾や刃物など鋭利に点で入る物理衝撃に対しては強い。反面、いま尼ヶ崎によって振り下ろされた棍棒のような重量のあるものの衝撃は衝撃緩和機能(アブソーバー)の限界値を超えるとスーツ内部の肉体へその力が入ってしまう。ガーディアン側はこうした特性を理解した上で装備を揃えたようだ。

「ショウ! どうすんベッ?!」

「どうするもこうするも… ミク! モエノ! お前ら逃げろ!」

「そうはいかないわ、ショウ」

「私たちだって戦うじゃん!」

「でも、アレ喰らったらタダじゃ済まないかもしんねェぞ?」

「当たんなきゃいいってコトじゃん?!」

「ダメージが全く通らないわけじゃないよ、数入れれば勝てる!」

「分かった! やんぞッ!」

「ウォォォォォッ!」

 棍棒の破壊力に一時は臆したタクミたちだが反撃に出た。

「それじゃ行きますよっ!」

 傍で様子を見ていた上野がリュックから取り出したものをブンブンと振り回し反撃の先頭に立つタクミの足元へ向け投げた。

 ボーラ、という武器をご存じだろうか? 紐を一本、あるいはその途中にもう一本結い付け、それぞれの先端に錘を結んだ投擲武器のことだ。

 そのボーラはタクミの足元へ飛び絡め取り

「うわッ?!」

 タクミは勢いそのままうつ伏せに倒れた。

「グワァッ」

 倒れたところへ容赦なく木槌が、うつ伏せのタクミの左肩へ叩き込まれた。

「上野! 確保!」

 本城から指令が飛ぶ。

「了解!」

 上野は須藤と尼ヶ崎に守られながら地に臥すタクミの元へ駆け寄り、両腕を肘のところから、脚は足首甲側へ当て木をし、その上から、それぞれダクトテープでグルグル巻きにしていく。

「ちょっと痛いけど我慢ねぇ」

 ダクトテープ巻きの両手両足に結束バンドを括り、さらにその両者をやはり結束バンドで結び付け、えび反りに固定した。いくらアンザグにパワーアシストがあるとはいえここまでされると身動きが取れず、タクミはイモムシのように(もが)くのみだ。

「タクミぃ…クッソォォォッ!」

 モエノが斬りつけるが躱され、赤い刃は空を斬る。

「一気に取り押さえるぞ!」

 本城は号令をかけ、自らも刺又を構える。

「まずこっちの鈍いのから! 尼ヶ崎! 右から周り込め!」

「了解!」

 棍棒が唸りを上げる。モエノは躱したが、それで体勢が崩れたところを狙われた。

「ハァッ!」

 本城が突き出した刺又の間に身を捕られ

「ハァァァァッ!」

 そのまま壁まで押し込まれた。

「クッソォッ! 離せェッ!」

 壁に封じられたモエノはシュヴェルトを振り回し、刺又を集中的に攻撃。

「グウっ!」

 シュヴェルトの一振り毎に刺又が爆ぜる。本城も全力で衝撃に耐え、刺又を押し付け続けた。

「尼ヶ崎! 脚を狙え! 腰は外せよ!」

「了解!」


ゴシャッ


「ギャァァァァァァァ」

 尼ヶ崎の棍棒はモエノの左脚を捉え、悲鳴と共に膝上があり得ぬ方向へ曲がる。本城が刺又を離すとその場に溶けるように崩れ落ちた。

「上野! 確保!」

「了解!」

 タクミがそうされたと同じように、モエノもまたダクトテープと結束バンドで拘束される。

「モエノォ!」

 瞬く間に二人拘束され動揺するショウとミク。

「チックショォォォォ!」

 ショウが斬りかかった。須藤が木槌を振り下ろすがそれを一歩引いて躱し、再び前へ出る。その動きを読んだ本城が刺又で突き、しかしショウはギリギリ又の間に収まるのを逃れた。ミクもまた尼ヶ崎の棍棒から逃げるので精一杯、二人はジリジリと壁際に追い詰められていく。

「一気に確保する! ハアッ!」

 突き出された刺又にショウが捕らえられた。

「クソォ!」

 ショウは刺又に攻撃を入れるが本城に耐えられ

「ショウ?! ショウを離せェッ!」

 ミクの本城への攻撃は須藤の木槌で遮られた。

「ガァッ! ショウ!」

「ミク!」

 互いに名を呼び合った、その時。


ガシャァッ


ガンッ


「グオッ?!」

 黒い何かが落ちてきた。


挿絵(By みてみん)


 それは頭上のガラス窓を目張りごと破り、ショウを捉えていた刺又を地面に蹴り落とす。

「大丈夫ッ?!」

「あ、アンナさんっ?!」

 黒い何かの正体はアンザグ姿のアンナだった。真っ赤なシュヴェルトを両手に構え、二人の前に地に降り立った。

「ここは私が抑える! 今すぐ逃げろ!」

「でも! モエノとタクミがっ!」

「今は自分のことだけ考えなさい! このままじゃ全滅よ?! 外でマナミが待ってる! 一緒にこの場を離れなさい!」

「う、ウワァァァァァァァァ」

 ショウが駆け出し、それにミクが続く。

「逃さない!」

 上野が放ったボーラがミクの足を捉えた。

「キャアッ?!」

「ミクッ?! このォォォォッ!」

 アンナは手近にいた須藤を突く。

「グワァァァッ!」

 アンナのシュヴェルトは防具をすり抜け隙間へスルッと首まで入り、ダメージを受けた須藤はその場に崩れ落ちた。

「尼ヶ崎! 上野! 倒れている者を確保! 逃げる者は構うなッ!」

「「了解!」」

 二人がミクの元へ駆け寄る。本城は拾い上げた刺又を構えるとアンナの行手を遮った。

「ミクゥッ?! このォォォォッ!」

 両手のシュヴェルトを構えたアンナ。

「倒す必要はない。私たちの仕事は外患を捉えることだから。私はガーディアン隊長、本城未紗。あなたは?」

「私たちを力でねじ伏せようとする者に語る名前なんか、ないッ!」

 アンナは言い終わるか否か踏み込む。

「ハァッ!」

 左上から袈裟斬りに降りてくる赤い刃を本城は刺又で受けるが

「チイッ!」

 もう一方の刃が流れるように横薙ぎに走り、それを本城は刺又の柄で受け流した。

「やるわね」

「プロだから」

「イヤーッ! 痛いッ! 痛いィッ!」

 ミクの悲痛な叫び。先の二人同様ダクトテープで後ろ手に拘束されているところなのだが、暴れるところを抑えられたため、背中に須藤の膝が乗り、腕も少し妙な角度で固定された。

 その上で無理矢理えび反りに曲げられたので


ミヂィィィ


「ギャァァァァァァァ…」

 何かが引き千切れる音と共にミクは気絶した。

「ミクゥゥゥッ!? アナタたちィッ! やり(よう)ってものがあるでしょッ?!」

 激昂するアンナ。

「我らは本来攻撃的な外患に対抗する組織。無論テロリストなども含まれる。いかなる理由があろうとも、いかなる方法を用いてでも、それらは阻止しなければならない。それがこの国を守る、ということ。確実な任務遂行に、手段は選べない」

 本城は冷ややかに返す。そしてミクを縛り上げた尼ヶ崎が、棍棒を構えアンナの元へ。

「クソォ… …ミク…モエノ…タクミ…ゴメンッ!」

 アンナは腰から筒状のものを床に投げつけた。


カァッ キィィィィッ…


「しまったッ!」

 本城が声を上げる。

 スタングレネード。

 それは閃光と大音響を発し、アンナの逃走を手伝う。耳鳴りが続く中、次に本城たちが目を開けたとき、すでにアンナの姿は、無かった。



ED「あなたの隣で深呼吸」


https://youtube.com/shorts/gZ-NHOOCiGw


とても背の高い男の子を好きになった女の子の歌

癒し系ほのぼのソングなのに本編最終エピソードまで読み切ると歌詞の意味が心に痛い!

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