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第一章 アンジェラス③ モルモ

YouTubeにて音声動画上げてます


OP「CHILD」


https://youtube.com/shorts/yy-TQ-HsMWA


お手数ですがブラウザでURLをコピペしてお聴きください


「夜の街とその闇を駆け抜ける黒い影」をイメージして作りました

聴いてから本編読むとテンション爆上がり!


※挿絵はAIにて作成

口元にある黒い点は汚れではありません。

本文中にはありませんが、アンナは口元にホクロがある設定なのです。

 横浜駅から程近い高層高級ホテル『ロイヤルリゾート・ホテルオハナ』。

 15階建本館の、さらに上に建てられたエクゼクティブルームがあるフロア、さらにその上の最上階、いわゆるスイートと呼ばれる一室。

 本来なら美しい港の夜景と眩いばかりの調度品が宿泊客の目を楽しませるはずなのだが、閉じられたカーテンと落とされた照明のおかげで室内は夜の闇が支配する。

 その暗がりには少年少女が集められていた。人数分のイスがあるわけではないので立っていたり床に座っていたり、様々だ。

 集めた主がまだ現れていないのか、思い思いに駄弁っている。

「ねぇカズサ。今夜は? パトロール出るの?」

「分かんねぇ。アンナさんの話次第だ」

「カズサさんが行くってなら俺も行きますよ!」

「ノブヤまだ来てなくね?」

「昨日『依頼』で出てって、そっから見てないって感じ?」

「なぁ、モルモって何者なんだ?」

「様を付けろよデコ助野郎。モルモ様は俺たちアンジェラスの統括者であり支配者。オマエだってイイモン貰ってんだろ?」

「そうだけどさぁ」

「なら文句言ってんじゃねぇ」


カチャ ズゥッ


 室内の音を外に漏らさぬ重厚なドアが開き、閉じた。

「アンジェラス、揃った?」


挿絵(By みてみん)


 入ってきたのは一人の女性。アンナと呼ばれている。

 暗がりゆえ詳細は見えないが、身長は160cm(なか)ほど。バイクに乗るのかピチッとした黒い革のライダースーツに身を包み、豊かな胸周りが窮屈そうだ。集められている少年少女よりは落ち着いて見えるので、年は20台前半といったところか。ショートボブの髪は脱色しているので赤茶色く、毛先が傷みがちだ。

「はい。全員揃ってます」

 応えたのはまとめ役であろう、アンダーアーマーの黒いジャージを着た、背が高くガタイの良い少年。

「そう」

 アンナは少年たちの前にたち、ひと通り見回すと、ハキハキとした口調で話し始めた。

「みんな。今日は残念な話がある。落ち着いて聞いて欲しいんだが…まずは…ノブヤがヤられた」

 ざわつく少年たち。

「アンナさん! 誰にヤられたんスか?」

「詳しくは分からない。でも…みんな、『宇宙記者ギャノン』って、知ってる?」

「最近この辺を荒らしてるヤツですよね?」

「誰か、ソイツに会ったことは?」

 アンナは少年たちを見回し、少年たちも誰かが?と各々見回すが手を挙げるものはいなかった。

「そう。分かった。これまで、警察相手程度ならアンザグとシュヴェルトでなんてことなかったけど、今度はどうも…相手が悪いらしい。だから、これから『依頼』をこなすときは必ず3人以上の班で動くことにする。敵には2人以上で当たって、最低1人は連絡員。いざというときには応援を呼んでもらう。もちろん一人あたまの報酬は減っちゃうけど、『依頼』をこなせなかったり、最悪そんなのにヤられちゃって報酬ゼロになるよりマシだと思う。どうかな?」

「アンナさん」

 挙手と共に立ち上がった者が一人。

「ん? ミク。どうした? 不満か?」

「いえ、そうではなく…武器は…もっと強力なものって貰えないんでしょうか? 銃とか」

「上から貰っているのは今のものが全て。というかデギールは銃を持たないそうだ。弾よりもシュヴェルトの方が一撃のエネルギー量が大きいから同じアンザグ着用の相手だと確実なんだとか、そう聞いている。すまんな。あまり役に立てなくて」

「いえ、そんな…」

 ミクは恐縮しつつも残念そうな顔で再び座った。

「他にはどうだ?」

 疑問と不安が顔に出ているがアンナに不満を言う者はいなかった。

「…私たちアンジェラスはみんな、ビブ横で出会って…ここまで来たんだ。私は、みんなのこと一人ひとりが大好きだから、もう、誰ひとりとして欠けて欲しくない。いつまでこんなことすることになるのか今は分からないけど、みんなそれぞれお金貯めて、いつか自分の夢を叶えられるように…がんばろっ!」

 アンナはグッと拳に力を込め、握った。

「はい!」

「ウッス!」

「了解!」

 少年少女たち各々がそれぞれの返事。中には涙ぐんでいる者もいる。このアンナという女性、それだけ彼らから慕われているということだ。

「それで、次の案件なんだけど」

 アンナが切り出したところで、室内の暗がりの一画、その床が、夜の闇を上回る闇を纏い丸くポッカリと口を開ける。その闇の穴から姿を現したのは…

「やー、お兄ちゃんお姉ちゃんたち、揃ってるねー」

「モルモ様!」

 車椅子に乗った一人の少女。むしろ幼女と言っても過言ではないその幼い容姿。透き通るような、いやむしろどこか具合が悪いのでは?と勘ぐりたくなるような青白い肌。背もたれの大きさ、そして季節にはまだ早い膝掛けが、ことさらその体躯を小さく見せる。

「今日はねー、モルモちゃん直々に来てあげちゃったー」

 その見た目とは裏腹に快活に喋りながら、モルモと名乗る少女は電動車椅子を集まっている若者たちの前に進める。その若者たちは皆一様に少女に対し姿勢を正して跪き、(こうべ)を垂れた。

「お越しいただき、誠にありがとうございます」

 皆と同様に少女の前に跪くアンナが恭しく挨拶を述べた。

「おやすいごようなのよー。でもねー、モルモちゃん、最近がっかりすることが多いのよー。お兄ちゃんたち、あんまりカツヤクしてないなーって」

「それは…モルモ様! 邪魔者が」

 アンナが反論を試みる。

「えー? いやーん、モルモちゃん、イイワケって聞きたくなーい! えーいってやって、ばーんってやっつけちゃえばいいのにー」

 身振り手振りを交え、モルモは楽しそうに語るが。

「…そんな簡単に行くなら苦労はしねェ…」

 誰かがつぶやいた。それが耳に届いたらしく、モルモは不満そうに口を尖らせた。

「ふーん…こんしーるど、しちゃおっかなー」

「モルモ様! それはご勘弁を!」

 アンナがモルモへ向け垂れていた頭をやにわ上げるが

「うっふっふー」

 と、モルモはニヤッと笑って

「ダメー」

 両手でバッテンを作ると

「グワァァァッ」

 部屋いる全員が苦しみ出した。年長者のアンナも含め。皆一様に、手首に巻き付けられたスマートウォッチのような物を握りしめながら。

「クラウデッドヘルのお味はどーかなー?」

「グアァァ」「ゴアァア」

 苦しみのあまり、モルモの問いかけに答えられる者はいなかった。

「モルモちゃんはねー、お兄ちゃんたちがカツヤクしてるとこ、もっと見たいのよー。分かるー?」

「グゥッ…ハ、ハイ…」

 苦しみの中、アンナが辛うじて返事をした。

「せっかくステキでムテキな武器とお洋服をあげたのに、カツヤクできないんじゃ、モルモちゃん、かなしいよぉー。ぐすんぐすん」

 と泣きマネをする。

「も、申し訳ありま、せん」

「エンプティヘブンをもっと広めてくれなくちゃぁ。そーじゃないとモルモはみんなにこーんなオシオキしなくちゃいけないのー。とってもかなしいことなのよー」

「それを、ヘブンを、私たちにも…」

「ほ・し・い?」

「はい、お願いします…」

「みんながんばってくれるって、モルモちゃんとおやくそくできるぅー?」

「はい…必ずゥッ…」

「そおぉ? それじゃーごほーびあげちゃおっかなー!」

 一様に苦しんでいた者たちは、瞬間さらなる苦しい表情を見せたが、直後、ぐったりとも呼べるほどに表情が安らいだ。

「モルモちゃんのオネガイきいてくれないと、またオシオキしなくちゃならないのー。みんなのこんしーるどにはー、頭がばーんってなっちゃうくらいのエンプティヘブンも、頭がしゅーんってなっちゃうくらいのクラウデッドヘルも入っちゃってるのー。お兄ちゃんたちはー、この苦しみからは逃げられないのよー。オシオキするのはモルモちゃんもかなしいからー、みんな、がんばってくれるかなー? いいともー! アンナちゃーん、どぉ? おやくそく、できるー?」

「はい…必ず…」

「うっふっふー。おやくそくだよー。じゃ、モルモは行くねー。じゃぁね、みんなー。ばっははーい」

 電動車椅子の下に再び漆黒の円が現れ、モルモはその中へ消えていった。

 現れた時とは打って変わり、皆ぐったりと床に伏せ、誰一人として見送ることができる者はいなかった。



ED「あなたの隣で深呼吸」


https://youtube.com/shorts/gZ-NHOOCiGw


とても背の高い男の子を好きになった女の子の歌

癒し系ほのぼのソングなのに本編最終エピソードまで読み切ると歌詞の意味が心に痛い!

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