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エピローグ 田上の逆襲①

いつもならOP・EDがあるのですが、これはエピローグ。映像的には静かに始まってBGMもなく淡々と進んで静かに終わる、そんな感じです。アンジェラスが全滅しているので「CHILD」も「あなたの隣で深呼吸」も合わないですからね。

【高級リゾートホテルで爆発事故か】

 一八日二三時頃、神奈川県横浜市みなとみらい地区にある宿泊施設「ロイヤルリゾート・ホテルオハナ」の一七階で爆発があり、部屋からは身元不明の女性が一名発見され、消防に救助された。女性は現在も意識不明の重傷。警察によると、この部屋で火器が使われた形跡がなく、部屋内に燃えた跡なども無いため、警察は消防と爆発の原因をについて調べを進めるとともに、救出された女性が回復するのを待って事情を聞くことにしている。


「…記事はこれだけ、か」

 ホテルオハナの事件の翌日。

 例によってルミから呼び出しを受けたタケシ、喫茶店ルーブルでルミを待つのだが少々早く着いてしまったので、暇つぶしにお店備え付けの新聞を読んでいた。

(しかも結構な騒ぎだったはずなのに記事は地方版のここだけ。一ノ丸倉庫のことはどこも記事にはなっていない…どういうことだ? 警察から情報が流れていない、あるいは警察が揉み潰している、とか…)

 思い巡らすも情報が足りない。考えもすぐに煮詰まってしまう。

 と、そこへ

「マスター、Aランチ、パンとコーヒーで。ごめん。待たせたね」

 ルミが現れた。

「? 早かったですね」

 まだ12:00前なのだ。

「うん。編集長がなんか言いたそうにこっち見てたんで、なんか言われる前に出てきちゃった!」

 勤め人ってこんなんで勤まるのか?とタケシは思った。思っただけで口には出さなかった。言うまでもなく『触らぬルミに祟りなし』、だからだ。

「あ、新聞ね。私も読んだ。なんか不自然よね」

 一体この人はいつ読んだんだ? ちゃんと寝てるのか? と疑問に思ったが、思っただけで(以下略)

「不自然なのはオレも同感ですが、こっちから動くのはヤブヘビな気もします。誰も何も知らない前提なのに、知ってるオレとかがいるって、おかしいですからね」

「まぁそうねぇ…静観、するしかないかなぁ」

「お待たせしました」

 注文のAランチがテーブルに運ばれた。早速ルミは食べ始め

「何か動きがあれば知らせますよ」

「うん、お願い」

 食べながらも話を続ける。

「で、結局あの女性(ひと)って誰なの?」

「ホテルの部屋にいた人?」

「うん」

「アンナ、だそうです」

 ルミにはその名前に聞き覚えがあった。


『アンジェラスを! アンナさんを! やらせはしねェッ!』


(ホテルオハナで戦ったあの彼、そう言ってたな)

「聞いたの? 名前」

「いえ、勝手に教えてくれました。上から95、58、87、だそうです」

「聞いたの?!」

 タケシが淡々と語るのとは対照的に、ルミは大きく驚いた。というか、信じられない!という顔つき。

「いえ、勝手に教えてくれました。興味ないって言ったら不服そうでしたけど」

 呆れて口があんぐり開いてるルミをよそに、タケシは相変わらず淡々としている。

「そりゃ…まぁ…そうね……でもタケシくん、それ答えとしては0点だわ」

 ルミは呆れ顔だ。

「それも言われました」

 しかしタケシはやはり淡々としている。

「あ、ああ…そう…」

 ここへきてやっとルミは、タケシはアンナに言われたことの意味を理解していないことに気付く。

(この子は、そういう男女の機微とか分からないのかしら…まだ若い、から?)

「あの人、なんだかルミさんと似てるような気がしてきました」

「ハァッ? わ…たし、デギールじゃないわよっ?!」

 ルミがやや語気を荒げて言うが、そんなことは分かっている、そういう話をしてるんじゃない、と思ったが(以下略)

「あの女性(ひと)は自分をアンジェラス、って言ってました」

「デギールじゃないの?」

「デギールなんですけど違うみたいです。下部組織とか下請けみたいな感じなんですかねぇ?」

「デギールが絡んでることは間違いない。私が戦った相手もスーツを着てたし、ブレイドも持ってた。ただ、ブレイドの出力が弱い気がしたわ」

「守人さんも戦闘に?」

「うん。エレベーターでバッタリ出会って」

「そっちは? どんな相手でした?」

「男だったな。背の高い。反射神経がいいのか、弾を避けらたわ」

「銃の?! 避けられるものなのか…あ、それアイツかな?」

「知ってるの?」

「知り合いってわけじゃないですけど、倉庫から逃げたのが一人いて。ソイツなかなかいい太刀筋だったんですよ」

「へぇ。私は結局全部終わってから着いたようなものだったからよく分からないけど、ガーディアンは結構善戦したみたいね」

「オレも着いた時にはすでに始まっちゃってたから一部始終じゃないですけど、むしろガーディアン優勢な感じがしました」

「この星の人もなかなかやるわ。参考になったわよ」

「皮肉で言ってるんですか?」

「違う違う。専用で武器なんか持ってるとそこで思考が止まっちゃうっていうかね。無いなりに工夫するって大事だなって。それで、こちらも人数揃えないとやっぱりマズいなぁって思ったわ。応援要請はしてるんだけど、決済まで時間かかるからねぇ…やっぱ緊急性の高いところから優先になっちゃうから。それでね、私、この星で仲間集めをしようかと思うの」

「は?」

 何でそうなる…とタケシは思ったが(以下略)

「さっきのガーディアンの話とも関連するんだけど、案外この星の人もやるもんだ、と思って。あなたみたいな例もあるし。ワステロフィから2つ、預かってるのよスーツ。私の予備なんだけど、それ使っちゃおうかなって」

「…オレは違法所有で違法使用なんじゃなかったんですか?」

 タケシはちょっと不服だ。

「あなたは違法よ。私が預かってるものは使用権限の管理者が私だから、何かの時には私が使用権限を凍結できる。でもあなたのはできないからね。その辺の違い、ってこと。使うにしても、これ、体質ってのが関係しててね、誰でもってわけにはいかない。その辺の見極めもあるから、仲間探しったってそう簡単にはいかないんだけど、いざという時のためにも急いでおかないと」

 タケシの表情が曇る。巻き込まれるのは嫌だな、と思いつつも一応確認を、とタケシは聞いてみた。

「…オレもなんかするんですか?」

「あなたはいいわ、今まで通りで」

 ホッと胸を撫で下ろした。 …もちろん心の中で。

「ともかく、何か情報があればちょうだい。今日は入稿あるのよね?」

「はい」

「じゃ、後ほど!」

 と、ルミは食べ終わるや否や、ささっと伝票を持っていって行ってしまった。

「忙しい人だなぁ…あ…オレも注文するか…」

 ルミの勢いに押され、自分の分を注文してなかったことに今さら気づいたタケシだった。



 同じ頃。

 田上は海誠運輸明星倉庫にいた。ある者に呼び出されたのである。

 タケシが踏み込んで以来この倉庫は使われておらず、今もあの時のまま、空っぽの伽藍堂だった。日中とはいえ照明を灯さぬ倉庫は暗く、窓からの日差しが塵を照らし、倉庫内に真っ直ぐ突き刺さっているようだった。

「はいどもー。田上ちゃんお待たせー」

 暗がりから不意に現れたのは車椅子に乗った少女。

「モルモ様?」

 当然田上はそう思ったのだが。

「違うのねー。モルモちゃんじゃないのねー。私はエンプーサちゃん!」

「エンプーサ、様…?」

「にっしっしー、ちゃーんと『様』を付けるとは感心感心なのねー」

「モルモ様は?」

「死んじゃった」

「なんと?!」

「ぐたいてきにはー、殺されちゃったのねー、アンナちゃんにー。オハナのスイートで二人は大げんかー! 怒ったアンナちゃんがモルモちゃんの胸めがけてシュヴェルトでブスーっ! そしたらだーいばくはつ! しょうこいんめつするのがたーいへんだったのねー。とほほー。あー、でもこんなこともあろうかとぉ! モルモちゃんの記憶はバックアップしてあって、エンプーサちゃんがひきちゅいだ、かんじゃった、ひきついだのでだーいじょうぶいぶい。だからー、エンプーサちゃんはエンプーサちゃんであって、モルモちゃんでもあるのねー」

 以前からモルモはヒトではない、とは思っていた。しかしそれなら何なのか?の問いに答えられず、田上はその存在を棚上げにしていた。

(ヒトでないというなら…バケモノ、か…)

 それ以上の答えは見つからない。

「エンプーサちゃんはねー、大事なカラダなのねー。私一人のカラダじゃないのねー、にっしっしー。モルモちゃん亡き今、やすやすと姿をさらすわけにはいかないのねー。殺されちゃったらイヤーンなのねー。だからこれはホログラム。よくできてるでしょー」

 エンプーサは車椅子に乗ったままその場でクルリと回ってみせる。

「ダイジなアソコも完全さいげーん。お見せできないけどねー。にっしっしー」

(下品なところはモルモと同じか…)

「それでエンプーサ様、私めに何の御用ですかな?」

「かんたんにゆーとねー、ふくしゅーしてほしいのねー、ギャノンちゃんにー」

「復讐? しかしアンジェラスはすでに壊滅、私の『蛇の使い』の武器ではギャノンには到底勝てませんぞ?」

「だからねー、これあげるー」

「ぬオゥっ?!」

 田上の左腕に嵌っていた高級腕時計が消え、代わりに

「これは…パゾル…」

「そうなのねー。田上ちゃんにはアンザグ着てギャノンちゃんと戦ってもらいまーす。今夜ここにギャノンちゃん呼び出してあげるからー、ぶぅちのめしちゃってほしいのねー」

「老いぼれに随分と酷なことをさせますな」

「またまたー。田上ちゃん強いの知ってるっちゅうにー。それにいま田上ちゃんにあげたアンザグはアンジェラスちゃんたちのザコいのと違ってデギールせいきせんとーいんのさいしんがたのヤツだからー、ガチで強いヤツなのねー」

「アンジェラスは、ザコ?」

 田上の左眉がピクリと吊り上がる。

「いっぺんにあんなにんずーぶんなんかそろえられるわけがないのねー。だからカタオチのアウトレットひんー?でかさまししてたのねー。ないよりマシー?」

(…なるほど、そういうことか…)

 田上の同業者にもアンザグを使う者はいる。それに比べやけに性能が低いとは感じていた。しかしそれはアンジェラスの子供たち個々人の能力の問題かと思っていたのだが。

(彼らは最初から捨て駒だった、ということか)

 それに気付いたところでどうにもならないことは田上は分かっている。逆らえばパゾルのコンシールドが発動するだけなのだ。憤る気持ちを抑え、努めて冷静に振る舞った。

「それじゃここに22:00しゅーごー。ギャノンちゃんをぶぅちのめしちゃってねー。ちなみに緑のギャノンちゃんの中の人は風音タケシちゃんっていうのねー。しゅーかんまんすりーの記者ちゃんなのねー。アルバイトだけどー。にっしっしー」

 楽しげなエンプーサの態度に対し、田上は顔を顰めた。

「そんなことを私に教えて、どうしようというのです?」

「うーん、お話しやすいかなーって」

(話、か。それもまた一興やもしれん)

「分かりました。ギャノンを倒す件、承りました」

「にっしっしー。それじゃよろしくなのねー。エンプーサちゃんはパゾルでモニターして観戦してるのねー。それじゃぁばっははーい」

 エンプーサは地面にポッカリ空いた穴へと車椅子ごと吸い込まれるように消えた。それに一礼をすると田上は倉庫の出口へゆっくりと歩み進んだ。扉を開けば降り注ぐ眩しい日の光に、田上は目を閉じた。

「これが最期の大仕事になりそうだな…」

 と寂しげに呟きながら。



ちなみにエンプーサの

「ダイジなアソコも完全さいげーん。お見せできないけどねー。にっしっしー」

というセリフは脚のことを言ってます。本人的には。

ただ、モルモがあんなんだったので田上に誤解されてますが。

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