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第五章 ホテルオハナ③ 失楽園

YouTubeにて音声動画上げてます


OP「CHILD」


https://youtube.com/shorts/yy-TQ-HsMWA


お手数ですがブラウザでURLをコピペしてお聴きください


「夜の街とその闇を駆け抜ける黒い影」をイメージして作りました

聴いてから本編読むとテンション爆上がり!

「な、何だぁ?」

 消火栓を見つけ、そのホースを給水タンクの脚に結びつけたところで大きな振動を感じると、パァンパァンと弾ける音。

 慌てて見に行ってみると、ガラスの破片が地上目指してキラキラと降っていく様子がスローモーションのようだった。

「何が起こった…? まぁとにかく行ってみなけりゃ分からないってね。よし」

 タケシは左腕を高く掲げた。

「フェイザーッ!」

 フェイズヘイローからギャノンが現れる。

「さ。行くぞ!」

 ホースを手に、落下防止のフェンスを乗り越えると、タケシはゆっくりと降りていった。



 あるはずの窓ガラスは全て爆散し、室内は真っ暗。タケシはサッシを手に掴み、室内へ侵入した。ギリィ、パリィとガラス片が踏まれ軋む。その気配に気付き、ゆらりと立ち上がる黒い影。爆風に服を引きちぎられ、右肩からは下着の白いストラップが露呈している。壁に叩きつけられた時にやってしまったか、額には血が流れる。

「…誰?」

「サンタクロース、にゃまだ早いか」

「緑のアンザグ…あなたが宇宙記者ギャノン?」

「ご名答。 …酷い有り様だな」

「無様なカッコの女に対して言う言葉がそれ? 男としては最低ね。0点よ」

「厳しい採点基準だな。部屋の話をしたんだが」

「ふぅん…中の人を詮索するのは好きじゃないけど、キミはまだ若いのだな。ウチのコたちとそう変わらないくらい。それならお姉さんがイイコトを教えてあげるよ。こんな時に上着の一つもかけて抱きしめてあげれば、オンナはイチコロよ、ってね」

「後学のために憶えておこう。 …内輪揉めか?」

「そんなとこ。それで、キミはここへ何しに?」

「取材だ」

「は…あ? あ、あーそうよね、記者だもんね。…『宇宙』のとこがよくわからないけど。それで? 何を聞きたいの? 私のスリーサイズなら、上から95、58、85よ」

 実際は95、60、87である(作者調べ)。

「そんな情報はどうでもいい。話を聞かせてもらう」

「…こんなナイスバディの数字(スペック)をどうでもいいだなんて、さすが0点男だわ。それで? 何が知りたいの?」

「アンタ、石廊崎事件を知っているか?」

「…痛ましい事件、だったわね…」

 アンナの声のトーンに哀しさが混じった。

「知っているのか?!」

「旅行中の一家が一瞬にして消滅、行方不明…手掛かりは何も無い。それがどうしたっての? まさか、キミ関係者?」

「ああ…」

「そう…それを知ってどうするの?」

「もう一つ。アンタはデギールか?」

「そうよ。え? まさかそれが私たちデギールのシワザだとでも? それは言い掛かりよ。私たちは武器と言ってもシュヴェルトしか貰ってない。キミも使っているなら知ってるでしょ? これは何かを切ることすらできない。まして消すなんて…それに、その事件があった頃、私はまだデギールじゃ無かった。たまたまテレビのニュースで見ただけよ!」

 彼女の言葉に偽りはない、とタケシは(さと)った。理由はないが、いま目の前にいる人はとても正直な人だ、と直感した。

「それでもヤる、というの?」

「アンタが良い人だというのは分かる。それでも、デギールだというなら! ギャノンブレイド!」


ヴォン


 暗闇にボオッと浮かぶ紅の刃。にわかにアンナの顔に生気が戻る。

「許さない、と。アナタ、私の『天使たち(アンジェラス)』によろしくしてくれたそうね」

 タケシはアンナの背後に青く激しく燃え盛る怒気を感じた。

「アンジェラス…?! アンジェラスって、ビブ横をパトロールするボランティア団体じゃないのか?!」

「それはあの子たちが自発的にやってたこと。とても優しい子たちばかりだった。ビブ横は私たちが出会った場所。あの子たち、いえ、私たちにとって、とても大切な場所。そんな聖域(サンクチュアリィ)(よご)されるのは我慢ならなかったのでしょう。ボランティアなんかじゃない。全て私利私欲。あの子たちは自分たちの場所を護ろうとした。ただそれだけ」

 アンナは左腕を顔前に立て、右手でその手首を握り

「パゾルッ!」

 引き払う。闇を照らして(ひらめ)く光の輪から現れたのは、漆黒の影。

「だから『天使たち(アンジェラス)』が帰る家は、私が守るッ! ツヴァイシュヴェルタッ!」


ヴォヴォン


 両手に現れた刃の光が、アンナのアンザグに紅蓮の焔を灯す。

 タケシの脳裏に先日の廃ビルでの出来事が蘇った。窓を割って乱入したデギール。二刀流で、かなりの使い手だった。

 それが今、目の前にいる。

「なるほど。アンタ、強ぇよな。ああ、まだ名前を聞いてなかったな」

「アンナ、よ… …そっか、ガーディアンと初対面の時にも会ってるっけね。巷で話題のギャノン様に褒められるとは光栄だわ。それで? ()める気にでもなった?」

「そうはいかない事情がある」

「そう。分かったわ。来なさい。お姉さんが相手になってあげるから!」

「ハァッ!」

 大上段から袈裟斬りに疾走ったタケシのブレイドは空気を斬り裂きアンナを目指す。


ヴォッ ガキィィィ


 しかしそれは左のシュヴェルトで止められ


ヴァッ


 今度は右のシュヴェルトが赤い扇型を描き、タケシの肩口へ奔る。

「クッ! アクセル!」

 後ろへ飛び退いたが、アクセルで加速してなおギリギリ、赤い先端が目前を奔り過ぎた。

「なかなか素早いのね。でもッ!」


ヴァッ


 今度はアンナのターン。先ほどタケシを斬り損ねた右のシュヴェルトが逆手に胴を薙ぎに来た。


ガシィッ


 それをブレイドで受ける。

(軽い。女の片手ではこんなもんかとも思うが)


ヴァッ


 今度は左が袈裟斬りに降ってくる。それをスウェイバックで跳ねて躱した。

(パワーはともかく、速い! おまけに2本。厄介だな…)

 タケシは着地と共に踏み込み

「ハァッ!」

 力押しで大上段から力一杯振り下ろしてみるが


ヴォッ ガシィィッ


 交差した2本の刃に阻まれる。


ギギギギィィィ…


 赤い刃同士が軋み合う。

「ゥラァッ!」

 ガラ空きだったタケシの胴へアンナの右ミドルキック…だけではなかった。


ガッ ダァンッ


 もう一発、左脚の回し蹴り。空中で体を捻り、首を刈るように後ろから飛んだそれが首に絡み付きタケシをフロアに叩きつけ、すかさずシュヴェルトでトドメを刺しにいく。タケシはもんどり打ってそれを躱す。赤い刃は床に叩き付けられパァンと派手に破裂音を上げた。

「やっぱ強ぇな…体術もあんのかよ」

 タケシはおもむろに立ち上がり、ブレイドを構える。

「お洋服は着こなしが大事なの。アンザグだって、ちゃんと着こなしてあげればちゃんと応えてくれる。アナタはまだ着せられてる感、満載ね。七五三の男の子だってまだちゃんと着てるわよ?」

「ひでぇ言われようだな」

「まぁ棒切れだけで戦ってきた訳じゃないから。ウラの世界は身体が資本なのよ」

「その棒切れでウラの闇を斬ってきたヤツってのもいるんでね」

「ふーん。それじゃボウヤの棒切れテクニック、お姉さんに見せてご覧なさい?」

「チビらすなよ?」

「濡れて(みだ)れるのはオンナの特権よッ!」

「ブレイカーッ!」

 タケシのブレイドは、赤から青へと色を変える。



「フェイズアウト」

 スーツの相着を解いたルミは爆心地となったカズサの元へ。

「今の、中和爆発じゃない…飽和爆発? 自爆でもした? いや、それでこんな面食らった顔でノビてるわけないもんね。誰かに仕込まれた、か。まぁとにかく…うんしょ!」

 ルミは意識のないカズサを背負うと

「人命最優先、ね。くぅぅ…重いぃ…」

 エレベーターに乗った。


ポーン…


 1Fに着いたところで

「ごめんねボーイさーん、あとはよろしく! 私は行くところがあるんで!」

 ホテルマンにカズサを預けると、そそくさとエレベーターに乗り最上階を目指した。



「ハァァァッ!」


ヴォッ


 ブレイカーが袈裟斬りに走る。アンナはシュヴェルトで防ぐが


バンッ バシィィィ


 青い閃光は赤い刃を押し弾き、左肩口を掠める。

「パワーが違うッ?!」

 ただの色違いではないのかとアンナは驚きの声を上げた。

「デギールはこの地球で何をするつもりだッ!?」


ヴォッ


「地球って、随分大げさに言うものねッ! 彼らは子供たちの楽園を創る、と言っていたッ!」


ギィン


 暗闇の中、赤と青の光刃(こうじん)が飛び交い、ぶつかり合う。

「どうやってッ? それにそれとヘブンとの関係はッ?」


ヴォッ


「知らないわよッ! 私はただアレをバラ撒け、って言われただけなんだからッ! それで得た報酬で、ここにはそんな楽園ができつつあったッ!」


ガシィィィッ


「私たちはモルモに踊らされていたッ! モルモはヒトじゃなかったのッ!」

 その叫びは涙声に掠れていた。


ヴォンッ


「モルモって何だッ? 人じゃないってどういうことだよッ?」


ギシィィッ


「私にだって解らないわよッ! そんなことッ!」

 2本のシュヴェルトでどうにかタケシの侵攻を食い止めるアンナ。

「それを知ってッ! あなたはどうするつもりッ?!」

「デギールをブッ潰すッ!」


ヴォッ キィィィン…


「アァッ?!」

 左のシュヴェルトが弾き飛ばされた。

「ダブルアクセルッ!」


ザッ


 アンナの視界から緑のスーツが消えた――――代わりに飛び込んだのは、穏やかな港町の夜景と、何処までも遠く続く、黒い夜の海。

(わぁぁぁぁ…きれーい…)

 フォキウスに初めて抱かれたあの夜から、それはずっと変わらずにそこに在った。ただ違うのは――――今はそれが破れた窓越しということだけ。

「ブレイカーッ!」


ドォォォッ


 背中に衝撃。

「アアッ!?」

 いつの間にか背後に回っていたタケシの一撃がアンナの小さな背中を襲う。

 右肩に青い刃を受けたアンザグは


ズゥ…


 その表面の漆黒が中和反応で斬り裂かれ


ズァァァ…


 アンナの白い肌を曝しながら瞬く間に広がると


ドォォォォォォォォォォ…


 爆散した。



ズウゥゥゥゥン…


「何っ?! 今度は何っ!?」

 建物全体が揺れた。最上階のフロアに降り立ったルミの足元へ振動が伝わる。だがルミは、迷わずこのフロア唯一の部屋、唯一のドアへ急ぐ。


ズウゥゥゥ…


 度重なる振動で異常を検知したセキュリティがスイートのロックを緊急解除していた。ルミはそのただ重いだけの分厚いドアを開く。中には…うつ伏せに横たわる女と、その側で片膝を付き見守る男。

「…タケシ、君…?」

「…心拍、血圧、正常。呼吸もあります。動けないとは思いますが」

「その女性(ひと)は?」

「デギール… …いやアンジェラス、だそうです」

「…そう」

 ルミがドアを開けたことで、割れた窓の外で様子を見ていた風が部屋の中を吹き抜ける。風は冷たく、でもどこか優しかった。

 ルミの耳にはさっきのカズサの怒声がこびり付いていた。


『ここにあるのは俺たちの家だッ! どこにも行き場が無かった俺たちに、アンナさんが用意してくれた俺たちの家なんだッ!』


 ルミは部屋を見回す。ひっくり返ったソファー。砕けたテーブル。その破片を受け液晶が割れたテレビ。モルモ、そしてアンナのアンザグ、2つの爆発でメチャメチャになったスイートルームを。

(家、か…)

「…ねぇ、タケシくん。今回のこの件も、デギールの仕業、として記事を書くの?」

 ギャノンスーツ姿では表情が見えない。だが、それとは無関係にタケシはルミの方を見なかった。

「これだけの騒ぎになって何も言わない、書かないって訳にも…それにオレはライターですからね」

 ルミもまた、タケシを見なかった。

「…そう」

 とだけ。


ポーン


 エレベーターの到着音。毛足の長い絨毯を踏み蹴る無数の人の気配。

「…飛ぶわよッ!」

「ここからぁッ??」

 ルミはタケシの手を引いて窓枠をくぐり、誰もいなくなった子供たち(アンジェラス)の楽園から17階下の地上へ飛び出した。


ED「あなたの隣で深呼吸」


https://youtube.com/shorts/gZ-NHOOCiGw


とても背の高い男の子を好きになった女の子の歌

癒し系ほのぼのソングなのに本編最終エピソードまで読み切ると歌詞の意味が心に痛い!

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