第三章 愛をください③ 未来
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「CHILD」
https://youtube.com/shorts/yy-TQ-HsMWA
お手数ですがブラウザでURLをコピペしてお聴きください
「夜の街とその闇を駆け抜ける黒い影」をイメージして作りました
聴いてから本編読むとテンション爆上がり!
約束の17:00からすでに15分ほど経過しているにも関わらず、集まっているアンジェラスのメンバーからは不満の声は上がらない。むしろ
「アンナさん、遅いね」
「なんかあったのかな…」
と心配されるくらいだ。
セリナの隣にサキがやってきて座り、小声で耳打ちした。
「いっぱいカワイがってもらっちゃった?」
その意味するところを感じ取ったセリナは
「ヤダもぉ。そんなんじゃないよぉぅ」
と顔を赤らめ否定するが
「廊下まで丸聞こえだったよ? セリナの声」
さらなるサキの追撃に
「ええーっ? ヤダもぉ…恥ずかしいぃ…」
体育座りした膝の中にカオを埋めてしまった。
「うーんもう! カワイイなーコイツめー!」
サキは団子状になっているセリナを丸ごと抱えるように抱きつき、顔をこれでもかと近づけ耳元に囁く。
「幸せ?」
「…うん」
「そう。よかった」
二人の様子をじっと見ている者が一人。
(モエノもミクもいなくなったってのに…カズサとなんかッ…)
マナミは抱えた膝の隙間から鋭い眼光でセリナを睨んでいた。
「サキも今日はイイコトしてきたの?」
「ギクぅ! な、ナンノコトカナー?」
「だって、匂いが違うもん。オハナのシャンプーとは違う匂い」
「ぬぬぅ…」
「お客さん?」
「違うよ」
「そう。良かった」
「ん? そんだけ?」
「だって、好きでもない人と無理してシタんじゃないんでしょ? それだけでも良いじゃない。幸せだもん」
「そうだね」
「アンナさんのおかげだよぉ」
「うん。まったくだね」
ドドドドドド…
防音のしっかり効いたスイートにすら地響きで伝わるほどの足音が接近。
バンッ
「ゴメン! 待たせちゃった!」
アンナの登場だ。途端、集まったメンバーにフワッと安堵の空気が流れた。
「昨日の件で田上さんとこ行っててさー、お昼をご一緒させてもらったんだけど、後で連絡するーって言ってたのに会社の方から候補が上がったって、それで一緒に現地行って内覧までしてきちゃって」
一気に捲し立てる。
「携帯に図面も送ってくれてさー、でもみんなに見せるのにスマホの画面じゃなぁってんでコンビニ行って印刷しようと思ってさ、でもスマホからなんてやったことなくて四苦八苦よ! 中身が中身だけに店員呼ぶ訳にもいかないしねー。連絡しようにも私バイクだから電話もメールもできなくて。ごめんねー、みんな待たせちゃって! ちょっと汗だく過ぎるから着替えてくるよ。もうちょっと待ってて!」
「…なんかお母さんみたい~…」
「ん?」
ポツリとつぶやいたミウの言葉が届いたか、アンナがピクッと反応した。
「あ…ごめんなさい!」
ミウは立ち上がって頭を下げる。が。
「…ちょっと前まではそんなこと言われるのはイヤだったけど…今は、なんだろう、ちょっと嬉しい、かな? まぁでも、ミウっ!」
「は、ハイッ!」
「罰として冷たいもの、用意しておいて!」
「わぁ…ハイ! 喜んで!」
「…居酒屋?」
ミツキのツッコむ声がした。
◆
「それで、場所は今みんなに配った図面の通り」
軽くシャワーも浴びてさっぱりしたアンナは、部屋着の白いスウェット上下に着替え、ミウが用意したグラスを片手に説明を始めた。集まったメンバーもジャージやスウェットなど、おおよそ似たような服装なので違和感がない、というか溶け込んでいる。
「図面だと分かりにくいかもだけど、大きさは、そうね、小学校の体育館くらい。結構大きいわよ」
メンバーは思い思いの方を向いてあれやこれやと話している。
「決行は3日後の18日水曜日。平日だから普段なら仕事してる人もいるんだけど、田上さんが掛け合ってくれて朝から使える。だから朝から準備して夜に決行。で、終わったら後片付け、と。それと今回の作戦、モルモ様のご協力が得られた」
ざわつくメンバーたち。
「当日は朝から倉庫周辺の防犯カメラには偽物の信号が送られる。これはいつもの『依頼』と同じだけど、今回は敵が乗り込んで来るのが前提なんで、外の見張りは無しでいい。それで、この人数ならいくつかの班に分けた方が良いと思うんだけど」
「あの、それは気の合う者同士で、ってことで良いのでしょうか?」
セリナが立ち上がり質問する。
「何アマちゃんなこと言ってんのッ? 小学生の遠足の班分けじゃないんだからさァッ!」
マナミが突き上がり語気荒く反発。場が張り詰める。
しかし間髪置かず
「マナミ。今のはダメ」
アンナが鋭く刺し込んだ。空気が凍てつく。
「今のは言葉にトゲがあった。言い直して」
腕を組み、静かだが鋭い口調で。
誰もが息を呑み、二人に視線を往復させ次の一言を待つ。
マナミは目を見開き、アンナを見つめ返す。しかし。
「…すみません…取り下げます…」
内なる気持ちにハッとしたマナミは肩をすくめてすごすごと座った。
「あの、すみません。私、わがまま言いました…ごめんね、マナミ」
セリナはアンナに、そしてマナミに頭を下げた。
「うん…私も…」
「いつも言ってるよね? 仲良しグループは構わないけど派閥的なことやったら出て行ってもらうって。そういうの面倒臭いのよ。私、ガッコのセンセじゃないしさ。今はさ、『依頼』をしっかりこなして、いっぱいお金貯めて。将来、何かやりたいことが見つかったらドーンとやればいいじゃない? だからさ、目の前のちっちゃなことでモメてる場合じゃないと思うの」
厳しい中にも優しく諭すようにアンナは語った。
「でもまぁ分けなければしょーがないわけで…とりあえずくじ引きして、それぞれで話し合ってトレード、ってことでどうかしら? どう? マナミ」
「私はそれで」
「セリナは?」
「異論ありません」
「二人ともこれで言いっこ無しよ? で、カズサ。あなたがクジ作って。男女の偏りとか出ないようにしてほしいかな」
「はい! 任せてください!」
◆
班分けも終わり話し合いが始まるとまるで文化祭の出し物を決めているような賑わい。ろくに学校へも行ってないようなコでも、やっぱりこんな風にワイワイやるのは楽しいんだろうな、そんなことを思いながら、アンナは口を挟まずそれを眺めていた。
(それにしてもマナミはなんであんな食ってかかるような…現場にいたから、かな…そういえばカズサってマナミが連れてきたんだっけ…あー、そういうことか! あー…めんどくさいなぁ、そういうの。男女一緒ならどうしても出てくる話だけど…あ、カズサと言えば!)
「カズサ! ちょっといい?」
「あ、はい!」
アンナが廊下へ招き出すと、カズサはすっ飛んできた。
静かな廊下で二人きり。カズサは何かを期待するようにニコニコしている。
「今日、田上さんのところへ行って出た話しなんだけど」
アンナは昼間に田上からあった話をした。
「俺が、田上さんのところへ?」
「うん。田上さんは見どころがあるって、欲しがってた。悪い話じゃないわよね。肩書は貿易商社の社員だし。あなたも将来のことを考えたら、そういうのもあるかなって。他にやりたいことがあるなら別だけど。どうする?」
カズサは少し黙った後
「少し、考えさせてください」
と静かに答えた。
「うん。とりあえず向こうもこの作戦が終わったら、とは思ってるから。まずは目の前のこと、しっかりやって。そしたら、この先のこと、ちゃんと考えましょう。ね?」
「…はい」
「うん。じゃ、戻ろっか」
「…はい」
◆
ED「あなたの隣で深呼吸」
https://youtube.com/shorts/gZ-NHOOCiGw
とても背の高い男の子を好きになった女の子の歌
癒し系ほのぼのソングなのに本編最終エピソードまで読み切ると歌詞の意味が心に痛い!




