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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM 第8話 〜疑惑〜

第8話



小さな子供が声を上げて泣いている。その子供を宥めるように1人の女性が、


「ーそんな なかんでぇ 汐梨のその目ぇはなー特別やに」


「ひっく…う… こんなの いらない!とくべつってなに? こんな目だからしおり…みんなにきらわれちゃうのに」


女性の膝にしがみつき、泣き咽ぶ。


「あーあーそないなー泣いたらあかんなーしおりぃーこっちみぃ」


「ひっく…う…なあに?」


「おばあちゃんもなーしおりと同じなんよー」


そう言うと、祖母の瞳の色が汐梨の色に変わってきたのだ。


「…あ おばあちゃんも しおりとおなじいろー」


「そうやろー?おばあちゃんも しおりと一緒やにー」


「えへへへー」


「おーわろたー汐梨がわろおたにーだからねーだんないよー」



「……だんないって… なに?」



自分の発した言葉にぱちりと目が覚めた汐梨は、部屋を見渡しそれが夢だと気付いた。


「あ…寝てたんだ…」


そのままむくりと起き上がり、とりあえずシャワーを浴びにいく事にした。

疲れからか、だいぶ深い眠りについてたようで、現在何時ごろかも分からない状態であった為、リビングで日付を確認すると、次の日の朝9時だった。

今日は幸いなことに臨時休校だったので、そのまま安心してバスルームに向かったのだ。



サッパリした所で冷蔵庫から野菜ジュースを取り出そうとすると、弟の翔太からメモが貼ってあるのが目に入った。その内容が


汐梨へ


今朝朝ごはん用意してなかったじゃねーか!

パンしか食ってねえ 夕飯はちゃんと作れよ!


それを読んだ汐梨はジト目で


「く…ほんと翔太ってば私の事姉だと思ってないわよね…」


そしてジュースをコップに注いでそのままリビングまで行く。そしてテレビをつけた。


するとちょうど行方不明事件のニュース番組が流れていて、汐梨が助けた小柴さんと2名の女生徒が無事警察に保護されて、現在病院で治療を受けている事を知ったのだ。


「よかった… って事は神代くんとあの一緒にいた男の人が警察呼んでくれたんだ…」


そう言いながらハッとした。再び自分が置かれているであろう状況を思い返してみたのである。

そして頭を抱えながら混乱する。


「わ…わたしってば…もしかして妖が視えてるとか …わたしが退治したとか もろもろバレたんじゃ…?」


今更ではあるが…


(いやいや…ーっていうか神代くんって何者?あの人が結界壊したんだよね?それとも横にいた人??隠れ鬼の事も知ってたよーな…)


情報量がキャパオーバーして、頭がパンクしそうになる。


(いや…忘れよう!うん!きっと神代くんだって私なんかの事 そんな気にしてる訳ないだろーし うん!)


(小柴さんはしばらく学校に来られないよね…消しゴムどうしょ… ? けしごむ…)


そこでハッとした汐梨はバタバタと階段を駆けあがり、部屋に入って昨日使っていたポーチを漁ったり、

再び下に降りて脱衣所に向かい、ランドリーBOXに入れたジャージのポケットの中を探ったりした。


「……ない……こ こしばさんの けしごむが…」


ぐわんぐわんと頭が回る


「え… どこで落としたの? 妖の棲家? え…」


「どっ どおーしよおー…借りた大切な…小柴さんの 消しゴム…なくしちゃったぁああー!!」





汐梨が、ショックで1人家の中で絶叫する頃その消しゴムを持った泉雲は考えていた。

藤峰汐梨をどうしてやろうか と。




そんな事は知らない汐梨は 申し訳ない気持ちで半泣きになりながら髪を乾かし、近くの文房具店へ出かけて行った。もちろんいつものメガネを装着して




そして次の日投稿日



汐梨はいつもより重い重い足取りで学校へと向かう。


(はぁ…神代くんにあの日の事を聞かれたら どうしよう… やっぱり どーしたって教室で会うし… はあ…)


心休まる暇のない汐梨は頭を悩ませながらそれでもいつも通り1番のりの教室へとたどり着いたのだ。


だから…誰もいないはず


なのだが…いつものように教室のドアを開け中に入った彼女は驚いた。

現在彼女の目に飛び込んできたのは、美しい銀髪の碧い瞳をした少年がいたからだ。


今 1番会いたくなかった人


神代泉雲だったのである。


(…いつも 遅くくる人なのに…)



「来たか 藤峰」


「…!」


待ち構えられてそう言われた汐梨は、思わず進行方向を逆にしたが


「おい待て お前 いい加減にしろよな」


ドスを効かせた声が教室中に響き渡る。

そして肩を竦めて恐る恐るふり返る。

すると泉雲がこっちに来いと手招きしている。

汐梨は観念して教室の中へとゆっくり入っていった。


「…な なんでしょうか?」


「知ってるくせに わざとらしいな」


「しっ 知ってる?」


「とぼけんじゃねえ」 机を叩く


「ひいっっ」


そしてしばし沈黙が流れた後に


「お前が 隠れ鬼を始末したんだろ」


「…」


苦手な泉雲の質問攻めに、汐梨は逃げ出したかった。ギュッと肩にかけてる鞄の取手を握りしめて、俯いたまま動けなくなった。


その姿に泉雲はチッと1つ舌打ちをする。


(うわっ 今 舌打ちされた!!こわい!!)


もう一度泉雲が汐梨に話しかけようとしたが、突然止めた。

そしてそのまま汐梨を横切り教室を出て行ったのだった。

汐梨は何が起きたのか理解できなかったが、それからまもなくすると、人が教室に入ってきたのだ。


(え? も もしかして 〝人が来る″から追及をやめたの かな? …やっぱり神代くんって私みたいな不思議な力があるのかな

私と同じで…瞳の色が みんなと違うから…?)


とにかく助かったと胸を撫で下ろし、自分の席へと静かに座った。


(でも…ど…どうしよ…すんごく疑われてる…とにかくこわいよ!)


1人でうんうん唸っていると続々生徒が登校してきたのだ。その中で前原真太郎も教室に入って来て

ふと視界に入った汐梨を見て


(…〝地味峰″って なーにが楽しくてこんなに早く登校してんだろ?どーせ喋る相手もいないくせに)


視界の端で汐梨を見遣り、プイッと顔を逸らしてクラスメイトとあいさつを交わす。

そして始業チャイム前に泉雲が教室に戻ってきたのだ。

それに気づいた汐梨はビクリと肩を震わせ、思わず体ごと反対方向に向ける。それに気づいた泉雲は顔を顰めて舌打ちをした。

そのすぐ後にチャイムが鳴り、教師が入って来て、HRでは行方不明だったクラスメイトの女生徒3名の話となった。現在入院してはいるが、命に別状はなく、3人共健康状態も問題ないという嬉しい知らせを聞いて、クラスは活気を取り戻したのだ。


みんなは知らないのである。

小柴さん達を学校に巣食うっていた鬼から救出し、元凶であるその鬼を退治までしたのは藤峰汐梨であるという事を、

その後の処置は、神代泉雲と謎の男 鴉丸菊ノ助が行ったという事実も誰も知らないのである。


そしてこの後汐梨は泉雲に問い詰められる事なくそのまま昼休みを迎えたのだ。


汐梨は人目を忍んでお弁当を持って教室を抜ける。

時折後ろを振り返り、気にしながら

いつもの中庭ではなく、普段人が来ないであろう特別教室の準備室の様な所へコッソリ入って行った。

四畳半ほどの狭い空間に、所狭しと資料やら道具が積まれている空間に机があり、そこに腰を下ろして静かに昼食についた。

半分ほど食べてた所で、なにやら窓をコツコツと叩く音が聞こえたので、何事かとふり返ると、そこには鷹の北斗がいた。


「あ…ほくと くん」


それは泉雲に懐いている鷹で何故かこうして汐梨の前に姿を現すのである。

その北斗が大きな翼を広げて入れろ入れろとアピールしてくるので汐梨は恐る恐る近づいたのだ。

するとガラスをコツンコツンと叩く。

汐梨がゆっくり窓を開けると北斗はひょいっと入ってきてそのまま机に飛び打って来て、その上に置かれている食べかけの弁当をつまみ出したのだ。


「…あ…私の お弁当」


北斗は悪気もなくパクパクと食べ始めた。

もう何度か自分の弁当を勝手に食べられている事もあり、それをボーゼンとした様子で眺めていると、突然ドアががらりと開いた。

それにびっくりしてふり返ると、そこには眉間に皺を刻みつけた神代泉雲がいたのだ。


この時汐梨は


    終わった…


と  思考が停止した。


「…てめえ  毎回毎回逃げやがって」


恐ろしい形相で言葉を発した泉雲に小さな悲鳴が溢れて


「なっ なんですかっ?」


「ーなんですか  だあ? こっちは何回も質問してんだろ ちゃんと答えろ もーにがさねーからな」


あまりにもしつこい そして執念のようなモノも感じる…


「… あの  なんで…そんな事 知りたいの…ですか?」


「お前がオレの邪魔をしたから」


「… へ? じゃ  …ま?  とは?」


「お前だろ? バケモンの結界の上からまた結界張ったの」


「あ… え   …と」


「いつもいつも イラつく喋り方だなお前」


汐梨は本気で泣きたい。でも出入り口は完全に塞がれているし、窓は3階なのでムリ

退路は完全に断たれていたのだ。


とにかく泉雲の顔が怖いので、顔が上げれない。でもずっと黙ったままだとずっと睨んでくるので 片唾を飲んで


「あの わ 私はなにも し しりません」


「チッ…」


(うぁああーっっまた 舌打ちした!舌打ちした!!)


「…こわい」


余りの恐怖で思わずポロリと声が洩れた。


「はあ? こわい? なにが?」 


「あ…あなたです! こわいです!!」


大きな声で ハッキリ言われたので思わず泉雲は怯んだのだ。


すると 先程食事を終えた〈弁当を横取りした〉北斗が机から降りて汐梨の足元に近づき、ピトッと己の体を擦り寄せてきた。

それを見た泉雲がなんとも言えない顔をして


「ーったく 北斗お前 なんなんだよ? 趣味悪いな」


グサッ…(しゅ  趣味悪いって。そんなハッキリ)


「北斗はな オレ以外に懐かねえんだよ そんなこいつが懐くから それだけでもお前がただモンじゃねーって証拠だ」


「…それは きっと…わたしのお弁当が 口に合った  から?」


「猛禽類の鷹が 人の飯なんて食うか」


(…ソーデスネ)


はあーっと一つため息をついた泉雲が徐に自分のポケットの中からあるモノを取り出し 汐梨に近づき見せつける。


「コレ なーんだ」


そう言われて、汐梨はふと顔を上げたのだ。そしてそのモノを目にした汐梨が思わず


「あっ そっ それ! 〝小柴さんの消しゴムー」


それを聞いて泉雲は己の口の端を吊り上げ


「コレ どこにあったと思う?」


そう言われた汐梨はふと記憶を辿り、ハッとして思わず己の口を手で覆ったが


「これ 確かお前が行方不明になった女に〝借りた″やつだよな? それがなんで その女の手の中にあったんだ?」


汐梨の顔が青くなる。メガネで隠れてはいるが…


「…お前がその女達を助けたんだろ?」


ギクリッ!


「…だがおかしな事に お前からは霊力も異能の力も全く感じない そんな奴が鬼相手に戦える訳ねーよな」


そう聞いてホッとしたが


「…でもそれは 普段 力を〝隠してる″って事なんだろ?例えば 制御するアイテムを持っている とか」


(う… するどすぎる…) 汐梨はダメ元で


「あの…その消しゴム…探してたんです…返してもらって よろしいでしょうか?」


相変わらず何も答える気のない汐梨に泉雲は己の片眉をヒクリと吊り上がらせ青スジを刻みつけ


(コイツ ほんとなめやがって…)


「…返してもいいが 条件がある」


「!…じょ …条件… とわ?」


「放課後 ちょっとつきあえ」


「!? …ど…どこに…ですか?」


「ついて来たらわかる」


有無を言わせない泉雲に自分に拒否権はないんだなと思った汐梨は力なく、コクンと頭を下げたのだ。


誰もいない密室でのやり取りは、実はある人物に見られていた。


(う… うっそぉおーー??アレ…白王子と地味峰じゃん!! なに?? なんで2人があんな所で一緒にいんの???)


ちょうど飲み物を買いに行こうと、渡り廊下を渡っていた前原真太郎が窓ガラスから見える2人をたまたま目撃したのだった。


ありえない光景に真太郎は思わずその場にしゃがみ込んだ。


そして混乱する。


(えーえー??地味峰はともかく!白王子が女子と2人きりでいる事事態レアなんだけどー!!)


泉雲の周りには気づけば女子が複数群がっているが それが鬱陶しいのか、すぐその場を離れて1人どこかへいってしまうような人間で、

そして汐梨はその見た目から男子には嫌煙され、女子からも相手にされず、いつもポツンと1人でいる事が通常なのである。だからまるで接点のない2人。


そんな2人が今個室で一緒にいる光景があまりにも意外すぎて前原真太郎は大混乱しているのだ。


(白王子って…外国育ちだから女のタイプ変わってんのか??いや…でもあえてアッチには行かんだろ?? ボクならムリ!!)


こうして1人の男子生徒に大きな誤解を与えながら昼休みは過ぎて行くのであった。






















異能者IZM 8話をご閲覧いただきありがとうございます! 「面白かった」「続きが読みたい」など

思っていただけたなら

下の☆☆☆☆☆から 星1つでも 5つでも構いませんのでぜひ評価のほどよろしくお願いします!もちろんブクマも嬉しいです。


何卒よろしくお願い致します。

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