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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM  〜隠れ鬼編 小柴さん救出大作戦〜


第7話 


泉雲を締め出した(彼とは知らない)汐梨は隠れ鬼と対峙していた。


(私の結界術はもって30分っておばあちゃんが言ってた。だから30分以内に小柴さんを見つけてこの妖を消滅させないと)


妖は驚いていた。己の壊された結界の更に上からこの霊力の強い人間が結界を張り、この場を守ったからだ。同時に歓喜したのだ。


「ぐっふっふ… ひょーっひょっひょっひょーーなんだなんだ?ほんにおかしなおなごじゃなー壊されたワシの結界をわざわざ守るとは… しかも 強い」


そう言って妖は高笑いをした。


「まあいい お前わしとかくれんぼしよう」


「かくれんぼ?いいわよ 負けないから」


(そうか この妖はこうやって自分のテリトリーに誘いこんで人を攫ってるのね…)


汐梨は妖の意図を汲み取り、誘いに乗った。小柴さんが今どこに居るか、解らない状況ではこの妖の領域に入るしか手がないと思ったからだ。


「ひょひょひょ こりゃおもしろい…わしにに勝てると思っとるのか?愚かな人の子よ」


そう言いながら妖は、汐梨の顔をジロリと見つめ、


「…それにしてもお前 美しい目をしとるのお  実に 美味そうじゃ」


そう言いながら己の舌を舐めずり、嫌な笑みを貼り付ける。それに汐梨は顔を歪め、いいからはじめてと急かした。

すると妖は己のかくれんぼのルールを話し、妖が数を数えはじめたのでテリトリーに入った汐梨はすぐさま走り出したのだ。


「たぶん後20分ぐらいしかない 早く探さないと! 外の人が入ってくる…誰なの?私以外に強い力を持ってる人って… おばあちゃんが誰か送ったのかな?」


汐梨がそう考えていると後ろから


「もぉおおおーいぃいーかぁあああーーい?」


「まあーだだーよ!」


どうやら〝かくれんぼ″が始まったようだ。汐梨はその間怪しい場所を見つけてポーチから1枚のお札を取り出してそれを地面に置いた。

そしてその上に持ってきた小柴さんの消しゴムを乗せて術を唱え出した。

するとそのお札がみるみる小動物の形に変わっていきネズミへと変化したのだ。

そのネズミが消しゴムの匂いを嗅ぎ、そして何かの匂いを嗅ぎ取り、走り出す。

汐梨はその間自分の足にお札を貼り、術をかけて身体能力を高めていた。

そしてネズミの後を追い、走る。ネズミは右に左に時には人がギリギリ通れる隙間に入り込み、汐梨を誘導する。


〝異界の入り口″とはもしその目に見えたとして、そのまままっすぐ行っても辿り着けない。その間には見えない道筋が存在するのだ。


それは まるで迷路のようになっていて、ある法則がある。 けれどもその法則は決して普通の人間には解けない。だから人は外から簡単にはいれないのだ。


汐梨は隠れ鬼からの「もういいかい?」にひたすら「まだだよ」と返し、鬼の棲家をさがしている。


すると先頭を走っていたネズミがピタリと止まり、鼻をヒクヒクさせて汐梨に知らせる。


たとえお札で足の筋力をアップさせて、ある程度負荷を軽減させる事ができたとしても、息切れはする。勿論体力の消耗もする。

それほどの距離を全速力で走らされていたのだ。


〝異界の入り口である歪み″を見つけられる人間は、どんなに霊力に優れていたとしても極々僅かである。


誘い込まれるのは別としても、自らの意志で見つける事は決してできないのだ。


だから 汐梨の能力は〝特別″なのである。





***


その頃泉雲は己の能力を発動させ、張られた結界を壊そうと試みたが、ビクリともしない強力な結界に苦戦していたのだ。


「…ハハ なんだコレ? どれだけ強いんだよ… こんな奴  いんのか 」


呆れたような乾いた笑いが込み上げ、その場に立ち尽くしていた。

その様子を見ていた菊ノ助が


「へぇー泉雲ちゃんでも壊せないんだーすごいね どんな人なんだろーね!ぜひぜひ スカウトしたいものだよー♪」


と呑気にそんな事をいう菊ノ助に苛立ちを募らせ、


「…どんな奴かもわかんねーモンをポンポン引っかけよーとすんな」


「そーんなコト言ったってぇーこの業界年中人手不足なんだからね? 育てるのだってたいへんなんだしっこっちから積極的にお声がけしないとー」


「わーった わかった!」


ウザいぐらい距離を詰め、近寄ってくる菊ノ助の顔を払い除けながら、泉雲が言うと、ぐすんと涙を溢しながらいじけた。

それを冷ややかな目で見遣った後、泉雲が更に力を込める。本気で結界を壊しにかかった。

己の蒼く澄んだ瞳を赤く染め、体中の意識を集中させる。

泉雲も特別で 己の能力を高める時は瞳の色が赤く変わるのだ。


そして一気にに力を解放した。

だが それでも結界に傷すら付かなかったのだ。


泉雲のプライドに障ったのか、プチンッ…と頭の中の何かが切れて、己の纏う空気をドス黒く変えて、更に力を爆発させようとした。


その時の異変に気づいた菊ノ助が慌てて


「わぁあああーー! いっいずむくんっ そんな事したら結界どころか校舎が破損するからやめなさい!!」


泉雲を羽交締めにし、必死に止めにかかる。


「うるせえ 離せ!こんなもん ぶっ壊してやる」


「ほんとやめてー!!後々の修繕費にいくら掛かると思ってんの??」


「んなモン国家予算でどーにでもなるだろ!好きに使ってんじゃん」


「!!? なんて事言うんだ君はっ!!その補填は国民に皺寄せくるのよ?? 税金上がっちゃうよ??」




***



ワーワーぎゃーぎゃーと校舎の外では2人が騒いでいる頃、汐梨は妖の棲家を見つけた所だった。


「はぁ… ハア… ここだわ」


「もぉおおおーいぃいーかぁあああーーい」


「ま…まーだだよ」


このやり取りは、隠れ鬼との間で結ばれた〝縛り″で「もういいよ」と言わない限り、鬼は汐梨の前には辿り着けない。お互いの言霊で縛りを作り一種の〝誓約″みたいなものを交わしているのだ。

その為お互いの言霊で絶対の壁を作っている。そんな事を普通の人間は知らない。だから恐怖と絶望で最後は鬼に捕まり喰われてしまうのだが、

霊能力が高く、事前に対策を祖母に聞いた汐梨は作戦を立て予め準備をしてきたのだ。


勿論 知っているからと言って普通の人間にできる芸当ではない。


汐梨は己の体力の限界が近づいている事を知り、見つけた鬼の棲家の入り口を広げるのを急いだ。

またポーチの中から数枚のお札を取り出し、それを空間の歪みに貼り付ける。

精神を集中させ、術を発動し、霊力をどんどん込めていく。

するとその空間の歪みが柔らかく、溶けるように穴が広がってきた。


今日1日で、普段使わない霊力を放出し、汐梨にとって、だいぶ負担は大きいが、何よりも小柴さんを助けたい思いで集中した。


普段は…妖と関わりたくないので、滅多に力を多様する事はない。むしろ 使わないように常に努力している。


そして 漸く人が入り込める程の大きさに穴が広がり、その中に汐梨が侵入する。


中は 瘴気に満ちていて暗く、空気が澱んでいる。〝妖の棲家″とはそのようなモノだ。

汐梨は顔を顰めながら奥へと歩みを進めた。


すると人が数人倒れているのが見えた。急いで駆け寄ると、1人はクラスメイトで顔の知っている女子でその奥に目を遣ると、小柴さんが倒れているのが目に入った。


「こっ こしばさんっ」


首に手を当て脈を計ると息はあった。


「よっ よかった 生きてる! 間に合った…」


汐梨は安堵したが、時間がないのを分かっていたので またお札を取り出してそれに術をかけ、数体の式神を呼び出し、そのモノたちに指示して現世への入り口まで運ばせたのである。


ここまでスムーズに救出する事か出来たのは、汐梨の霊力が高いおかげもあるが、やはり祖母からのアドバイスのおかげでもある。

そして、無事小柴さんと2名の行方不明だった女生徒の救出に成功したのだ。


ただ… その前に攫われた生徒達の姿はなかったのである。


安心したのも束の間、隠れ鬼がこちらへやってくる気配を感じた。

どうやら鬼との〝縛り″が切れたようだ。

鬼の棲家に入っていた間、汐梨は問いかけに応えられなかったからだろう。


「きっ きさまぁああーー!! よくも…よくもよくもー!」


まるでつむじ風のように現れた隠れ鬼が、怒号を上げながら汐梨の前までやってきた。


「縛りが消えたのね… でも みんな助けちゃったから」


ぐったり座り込む汐梨にそう言われて


「ぐぬぬ…よっ よくも ワシの獲物をっ… 喰ってやる…喰ってやる 喰ってやるー!!」


そう言いながら隠れ鬼は汐梨に襲い掛かるが、汐梨は予め手にしていたお札を鬼の額に貼り付けた。

不覚にも鬼は術を込められたお札を貼られて動きが止まる。


「なっ なんじゃ??」


鬼の動きを止めた汐梨がヨロヨロと立ち上がり、更に術を唱えた。すると鬼は苦しみだし、そのまま断末魔を上げ、光と共に消え去ったのだった。

それと同時に隠れ鬼の棲家である異界の入り口も、完全に塞がったのである。


「ハァ…ハァ… もー やだっ つ 疲れ  た」


しかし、後もう一踏ん張りしないといけない。 彼女達が長い間浴びたであろう瘴気の浄化。それに取り掛かろうとした時、

パァンッ!と衝撃が走った。


そうだ。汐梨のかけた結界が解けたのだ。



「え? …結界が 解けた…? クソッ どこのどいつだ このオレ様より強い結界を張れる奴は」


泉雲はそのままの勢いで開かれた校舎の中へと入っていった。その後ろに菊ノ助が続く。



汐梨はその間強い能力の気配を察知し、慌てる。


「あっいけないっ 私の結界も解けちゃったみたいっ …誰か こっちに 来る?」


アワアワと慌てる汐梨だが、その間考える。


(いやっ でも 相手も私みたいな能力持ちだから…〝お友だちになれるかも″いやいや…誰かも分からないのにお気楽な… もしかして おばあちゃんの〝使いの人″? いやいや んー でも…)


色々考えた結果、持ってきたメガネをかけ、ヘアクリップをはずし、元に戻して正体を隠す事にした。


(きっとこのメガネをかけると私の力も相手の力も分からなくなるから…とりあえず 私もみんなと攫われた体で 話をー)


そうこう考えているところで外からの侵入者がこちらにやってきた。その顔を確認した2人はお互いにギョッとした。


お互いに〝能力者″だと思っていた相手が、なんと同じクラスメイトの人間だったからだ…両者動かなくなった所で最初に口を開いたのは泉雲だった。


「ふっ ふじ 峰… お前 なんでここに?」


(…え? ぇえ!? えー!? へっ編入生のっ かっ かみしろいずむ…くん???)


予想外すぎる人物の登場で、汐梨も汐梨でパニックである。

言葉を失う2人の間に後ろから


「ハァ…ハァ… もぉ 泉雲くん きみ はやいってぇもーちょっと…僕に気ぃつかっー」


そう言いながら菊ノ助が見た光景は意外すぎるものだった。

泉雲はボーゼンと立ち尽くし、意識のない女生徒たちは写真で見た現在行方不明になっている少女達で、その中で、1人意識を保っている

1人の妙なメガネをかけたジャージ姿の少女。


「あれ?行方不明の生徒たちじゃん なんでこん所に? おじょーさんは見ない顔だね 君も 攫われてたのかな?」


そう言って自分が手にしていた情報と少し異なると思い、汐梨に近づく菊ノ助。すると


「…いや…コイツは 攫われてねぇ」


「え? なんで ん?知ってる子?」


お互いの顔を見合わせてながら菊ノ助が問いかけるが


「藤峰応えろ なんで ここにいる」


「え…あの… わた…し」


しどろもどろ話し出す汐梨に


「こたえろ!」


言われた汐梨はビクビク震える。珍しく泉雲が他人に声を張り上げたので菊ノ助もビックリして


「ちょっ 待って 女の子にそんな風に怒鳴ったらダメだよ」


「うるせえお前は黙ってろ」


どうやら泉雲が自分と同じ能力者みたいだが、汐梨は恐ろしい泉雲の圧に恐怖で何も言えなくなる。すると


「ごっごめんねっおじょーさん あの…?なんで行方不明の女生徒達とここにいるの?…誰が助けてくれたか…わかる?」


汐梨は泣きそうだったが、大人の対応をしてくれる泉雲の連れだろう人には少し安心した。しかも有難い事に正体はバレてないようで、少し安堵もした。


(だっ 大丈夫…ここを乗り切れたら…助かる!)


いつものように逃げる事ばかり考える汐梨。

ゆっくり己の腕を上げて指を差した。


「ん? あっちに行ったって事?」


そう菊ノ助が言うと、汐梨はこくんと頷くが、


「ウソつくな そっちに気配はない」


チーン…(…本当に神代くんは私と一緒で能力の察知がみたい…)


なので 再び汐梨はアワアワしだした。


「…藤峰 お前がそいつらを助けたのか?

さっきから妖の気配もない  まさかお前が  始末した?」


ぎっくーん!!


(ぜっ  ぜんぶ  バレてる!??)


それでも悪あがきをし、違うと思い切り頭を横に振る。


「…なら 誰が助けた?」


「… し  し…ら ない  デス」


相変わらず小声で辿々しく話す汐梨に更に腹を立てる泉雲。それを宥める菊ノ助。


2人が汐梨から視線を外し、言い合いを始めたので汐梨はその隙にコッソリ走り出しその場から逃げた。


暫く2人は言い合いをしていたが、いつの間にか汐梨の姿がない事に気づき


「!〜〜あのヤロぉ また…!」


女の子に向かってこの言い種である。



その頃汐梨は女子トイレにある〝印″をつけた鏡の前に立っていた。


「ハァ…ハァ…どっどうしよう …すんごく疑われてしまったみたい… かっかみしろくんも わたしと同じで 妖が視える ってこと?」


聞いてはみたいけど、先程の泉雲の形相を思い出しゾッとする…


(…イヤ ムリ  …こわい)


汐梨は最後の力を振り絞り、術を発動させ、鏡の中へ入って行った。


その力を察知した泉雲はニヤリと口の端を吊り上げ


「やっぱり アイツじゃねぇか …ふざけやがって」


泉雲がその場所へ向かおうとしたが、菊ノ助に止められた。


「ちょっと待て! 先にこっち優先して

息はあるけど瘴気浴びてかなり衰弱してるから力貸して」


泉雲はチッと舌打ちをし、仕方なくその場に留まった。そんな態度に菊ノ助は苦笑いをしながらスマホを手に待ち、電話をかける。


「あっ どーも こちら鴉丸ですー実は行方不明の女生徒達を保護しました。応援お願いしまーっす」


そう伝えて電話を切った。


「あれ…?そういえば 此処を巣喰うっていた  隠れ鬼は…?」


今さらかよ…と泉雲が少女達の瘴気を取り除いていると、1人の少女の手の中からコロンとある物がこぼれ落ちた。見覚えのあるそれを見た泉雲が


「さっきもオレが言ったろ? 決まってる さっきの奴だよ あいつが1人でやったんだ」


「え…? さっきの あの〝不思議ちゃん″のコトお??マジで…」



(…不思議ちゃんて…) 


「ああ…あの変なメガネかけた女だ」


菊ノ助は信じ難いが、そう確信する泉雲を見てニヤリと笑みを浮かべた。


「へえ…もし それが事実なら 是非とも〝うちに″欲しい子だねぇ あの不思議ちゃん♡」


「…別に あんな変な女いらねえけど…絶対吐かせてやる」





泉雲がそう固く決意する頃、汐梨は鏡を渡り、自分の部屋へ無事戻っていたが、また〝異空間酔い″にあっていた。グルグル回る視界の中、今回霊力も多様した事で疲れ果て、色々ピンチかもしれないと思いながら気絶するようにそのままベッドに倒れ込み、深い眠りについたのだった。

































異能者IZM第7話をご閲覧いただきありがとうございます! とうとう泉雲に汐梨が能力者である事がバレちゃいましたね。「面白かった」「続きがみたい」と思ってくださったらぜひ

下の☆☆☆☆☆ から星5つでも1つでも構いませんので評価の方よろしくお願いします!もちろんブクマも大変嬉しいです!

何卒よろしくお願いします。

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