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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM 第5話 〜かくれんぼ 鬼編 汐梨と小柴さんと消しゴムと 〜

第5話



この日は、汐梨にとって高校生活”最良の日”と言っても過言ではない。



本日藤峰汐梨は焦っていた。何故かと言えば消しゴムを忘れてしまったからだ。1時限目はなんとかなったが…

もちろん休み時間に購買にも行ったが、あろう事か売り切れだと言われたのだ。

(え?消しゴムが全種類品切れってある? 私の事どんだけみんな嫌ってるの?) 

と思いたくなるぐらい不運だった。


ただ救いは納品は午後からだと言われたので半分だけホッとした。でも結局消しゴムを手に入れる事が出来なかったのだ。


そして今…次の授業では小テストがある。勿論そんな状態でも”誰かに借りる‘’という選択肢がないのだ。そんな小さな事で、この世の終わりのような気分に陥ってしまう哀れな汐梨。

そんな彼女に天変地異の前触れか?と思う天の声が


「あの…よかったら これ使う?」


泣きそうな顔(表情は見えない)で声の方に振り返ると、なんと!隣の席の女生徒がなんと!喉から手が出るほど欲していた”消しゴム”を差し出してくれているのだ!例によって汐梨は固まった。


「消しゴム…ないんでしょ?私2つ持ってるから」


と声を掛けられて汐梨はこれは夢?わたし天に召されそうになってる?え? どーいう状況??半分何故か己の魂が抜けていくような気分を味わいながら少し正気を取り戻して辿々しく頭を下げて消しゴムを受け取った。


小さな声で

「ありがとう ございます」と言って、女生徒は「いいよ」と一言いってくれた。


たったそれだけだ。


もう一度とても小さな声でありがとうございます 小柴さん…


その女生徒は隣の席の小柴あかり 控えめで大人しく普通の女子高生で、実は汐梨の1番の理想の‘’お友だち候補No. 1✨‘’そんな彼女に助けられた汐梨は天にも昇りたい気持ちだった。


(うっわぁああーー!! あ 憧れの小柴さんから消しゴム 貸してもらえた!! なんて 良い日!!)


叫びたい気持ちを頑張って耐えている。


そしてその消しゴムを前にして拝むのだ。


(くぅーっ こんなの逆に勿体なくて使えないですよおーーこれ…あれかな? 今日1日貸していただいて授業終わって返す時、お礼言って   ドキドキ…)



ここから汐梨の妄想です。



汐「小柴さん! 今日は消しゴム貸してくれてありがとうね!ほんと助かった☆」


小「ううん いいよいいよ!気にしないでね♪」


汐「あのね よかったら今日 途中まで一緒に帰らない?」


小「うん いいよ あ!藤峰さんせっかくだからRUINの交換しない?」


汐「あっ ごめんね!私スマートフォン持ってないんだっ ちっ近いうちに買うから待ってー」


そこで現実に引き戻された。



(しまった!!私ってばスマホとやらは持ってない!  だって必要ないんだもんっ)


1人妄想して上がったり下がったりして勝手に落ち込む姿は…ちょっと引いてしまう。

一部始終を見ていた(泉雲と)小柴さんももちろん引いていた。


(…藤峰さんて…見たまんま やっぱり 変わってる人なんだな…)


という印象を持たれ、隣の席の小柴さんは消しゴムを貸した事を少し後悔するのだった。


そして無事今日の授業を終え、貸してもらった小柴さんの消しゴムは、使うなんて恐れ多いと考えた汐梨は書き損じをしないよう、慎重にペンを走らせた結果、一度も使われる事はなかったのだ。

ある意味汐梨は凄い奴である。

そして ドキドキと胸を高鳴らせながら小柴さんに返す為妄想を繰り返し、何度も頭の中で予行練習をして心の準備を済ませた後で(この間約30分)

横を見ると、小柴さんの姿はなかったのだ。キョロキョロと辺りを見渡し、探したがどこにもいなかった。

そんな時は他のクラスメイトに居場所を尋ねるものだが、汐梨にそんな勇気はなく、途方に暮れるしかなかった。


そしてどうしても直接本人に返したかったので、汐梨は一度小柴さんの消しゴムを自分のペンケースにしまい、


(せっかくだからっお礼の意味も込めてクッキー焼いて明日!一緒に渡そう!うん!そうしよう✨)


そう決心し、善は急げという事で素早く帰り支度をし教室を出たのだ。


その頃泉雲は 女生徒連続行方不明事件の調査をしていた。


「あのさー情報が少なすぎて全然進まねー」


『んー…じゃぁ 泉雲も〝かくれんぼ″に参加する?』


「い・や・だ 」


『だって相手は隠れるのがスゲー上手い鬼よ? かくれんぼ だけに』


「ようするに お手上げじゃん」


『そんなコトいわずにぃーーー』


「人間捕まえて 三日三晩監禁してから喰うんだろ?もーあれから3日以上経ったから もー喰われたんじゃね?」


『〜〜そんな 身もふたもない事いうんじゃないよぉおーまた新たな犠牲者が出る前に見つけて退治しないとー』


「どっちにしろ こっちに出てこねーとオレはコロシできねー 奴の住処は異界なんだから オレらでは場所の特定できねーだろ」


『ーーうーん… それを言われると…その通りだから 妖にGPSでもついてりゃなぁ また情報集めるわ』


「よろー」 ブツッ…


ひと通り進まない調査を終えた泉雲が教室に戻った。


(あ… あいつ 帰ったか)


そして泉雲も帰り支度をし、教室を出たのだ。

そして汐梨が学校を出て2時間程経った頃、汐梨は地元のスーパーに立ち寄っていた。


(ココアとあっ抹茶パウダーがある♪後ベーキングパウダーと バニラエッセンスはあったよねー)


いつもより浮き足だっている。この後作る予定のクッキーの材料を買いに来たのだ。


(ふふ…小柴さん 喜んでくれると いいなぁー)


頬を緩めながら、材料を手にして妄想する姿はまるで恋する乙女のようではあるが、実は汐梨は恋を一度もした事がない。今までそのような経験が一度もなかったからだ。

小柴さんはあくまでも理想の”お友だち候補第一位″という事である。

クッキーの材料を全て買った汐梨はとても満足気でそのまま帰路についた。

家に着いたら早速部屋着に着替え、メガネを外し、ペンケースから〝小柴さんの消しゴム″を取り出し、それを大事そうに小さな袋に入れて、己の胸元でギュッと抱きしめた。


その姿はほんとまるで恋する乙女そのもの。だが違う。ハズ そしてそのまま持ってリビングに降りて行き、エプロンを着けて、クッキーを作り始めたのだ。暫くするとリビングの扉が開いて


「いい匂いーしおりーなんか作ってんの?」


そう言いながら元気に入って来たのは初登場の汐梨の弟の翔太小学6年生である。

汐梨と違って目の色は薄茶色で髪は少し赤みがかっているが、これは生まれつき やはり血筋のせいだと思われる。

霊能力は汐梨程強くないので、普通の生活にこれといって支障はない。汐梨が強すぎるのだ。


「…お姉ちゃんをつけなさいっていつも言ってるでしょ」


「あの変なメガネとその前髪 どうにかならないのか?」


「いいの! これでいいのっ」


幼少期から中学卒業までイジメを受けていた事が原因で、己の見た目を気にする汐梨は頑なに拒むのだ。

現在高校ではそのおかげかイジメは受けないものの誰にも相手にされないのである。


「モサい ダサい キモい」


翔太は汐梨と違ってハッキリ物を言う性格で、ストレートに口撃してくるのだ。それに一瞬怯むが、小柴さんの事を思い我慢する。その間クッキーを作る工程に取り掛かると


「おい 聞いてんのか?」


「…聞いてるよ」


「じゃあ 前髪切れよ」


「このままでも見えてるからいーの!」


「おまえ オレと出かける時は絶対あのダッサい格好すんじゃねーぞ!」


「なんで翔太にそんな事言われなきゃなんないのよ?」


「ンなもんオレが嫌だからに決まってんだろ!」


両者一向に引かない問答を繰り返しているが、翔太はこう見えて実は極度のシスコンなのだ。

ただ性格が邪魔して優しくできないだけで汐梨をとても大事に思っている。


…姉として?

だからすぐピッタリとくっついていって


「わかったから そんな怒んなってー それできたらオレにもくれよな」


言葉遣いには問題あってもやはり弟。可愛く甘えてくるから汐梨もそれ以上強くは言えずにいつの間にか口喧嘩は終わるのだった。


「ーで なんで そんなモノ作ってんだ?」


と翔太が聞くと、汐梨はちょっとモジモジしながら嬉しそうに〝小柴さんの消しゴム”入りの小袋を握りしめて


「えへへへ クラスメイトの小柴さんにお礼の為に  ね」


「はア??」(男か?怒)←違います。


汐梨がいそいそとクッキー作りに邁進し、翔太が勘違いしイライラを募らせる頃


その当の小柴さんは、自分の友達に学校に呼び出されて大王やまおうの正門に立っていた。

「.やっぱり 断ればよかったかな…」


小柴さんは誘われると断れない性格で、人当たりもいい。気遣いも程よくできるので、それなりに友人が沢山いるのだ。


「あかりぃー待ったー?」


バタバタと駆け寄って来たのは同じクラスの女生徒時田更紗さん。


「あ…ううん 今きたとこ」


「優香がさ、学校に入れる入り口見つけたって」

「あ…そうなんだ…」


「優香と合流したら 早速中入るよ!」


「うん…」


もう夜9時を回った時刻で、現在正門の周りは人通りも少なく、学校の中は無人だ。そして杉田優香がやって来た。ここに集まった少女達は好奇心と正義感から行方不明になった生徒達を探す為学園に集まったのだった。


「へっへー私なんて お菓子もたんまり持って来ちゃったよ」


更沙「あははっ あんたはしゃぎすぎぃ」


優香「だってなんか楽しくない?友だちと夜の学校探索だなんてさー」


更沙「うんうんっちょっと早い肝試しみたいなー笑 どーせなら男子にも声かければよかったかもー 日下部くんとかさぁー」


優香「えーだったら神代くん呼びたかったなー」


更沙「あー無理無理白王子は誘っても来ないって」


優香「じゃー今から誰か呼ぶ?」


2人がキャッキャと盛り上がっているのを良く思わない小柴さんが


あかり「あのさ 行方不明の人見つける為 来たんだよね?」


優香「え? そーだよー私たち正義の味方 なんちゃってー」


更沙「あかり なに?どーしたの?嫌なの?」


あかり「…いやっていうか… なんか2人して楽しんでるし あのさ 本当に中 入るの?」


更沙「あったり前じゃん 今さらなに?」


優香「あかりぃーあんたも居ないと楽しくないんだって」


時田優香に手を握られてそう説得された小柴さんは、うん…そうだね と笑顔を見せ、3人はキャッキャッと騒ぎながら秘密の入り口から学園の中へ入っていった。そして堂々と入り口のドアを開けて校舎の中へ。


この時違和感に気づいたのは小柴さん。


(あれ? なんで入り口のドア 鍵かけてないの?)


普通無人であれば、誰かが戸締りをし、鍵はしっかり閉まっているはずである。


小「ねぇ まだ 誰かいるんじゃない?鍵 開いてたよ」


更沙「んー?もしかしたら 別の誰かも探索に来てんじゃない?」


優香「ありえるぅー」


あかり「え…でも どこも 電気ついてないよ?」


更沙「ばっかだねえーあかりはー電気なんてつけちゃうと雰囲気出ないじゃん」


優香「これよ これ!」


そう言って2人はスマホのライトを照らした。

更沙「あかりもつけなよー」


そう言われて小柴さんも うんと言ってスマホを手に持ち、ライトをつけた。


更沙「わっ あたし 残り30%しかないわー」

優香「更紗ったらばっかじゃねー笑あたし100!」


更沙「あんたさすが 笑 あかりはー?」


あかり「え… 80 だよ」


優香「あかりはなんでも準備いいんだよ」


更沙「言えてるぅー」


そう言って3人は薄暗い中階段を昇り、上へと歩みを進めた。

更沙「暗いけどさーなーんもないじゃん」


優香「だねー こういう場合は定番の音楽室辺り行ってみる?」


更沙「あ!誰もいないのにピアノが鳴るとか?ベートーベンの目が動くとかー」


優香「学校七不思議 都市伝説 笑」


そう2人はこの状況を楽しんでいるが小柴さんは1人落ち着かない。すると奥の方でガシャンッ!と何かが落ちるような大きな音がした。

それに3人はびっくりしたが、もしかしたら自分たち以外にも〝人“がいるのかもしれないと思い、音がした方へ歩みを進めた。


優香「誰か… いますかー?」


1番好奇心が強い優香が先頭に立って声をかける。すると闇の中から


「 かくれんぼーー」


と か細い声が聞こえてきた。3人はえ?と顔を見合わせて とりあえず声がしたであろう場所までまた歩みを進めた。そしてもう一度

優香「あの… だれですかー?」


「こ〜こ〜だ〜よー」


その声はちょうど3人が

止まった教室の中から聞こえてきたので、


優香「ここだ 入ってみよ」


あかり「えっ やだ やめよーよ」


更沙「だーいじょうぶだって こっち3人だし!」


そう言って嫌がる小柴さんを説得し、教室のドアを開けたのだ。そこにいたのは真っ黒い長い髪をした女生徒がポツンと立っていた。


優香「ほら やっぱ 人じゃん」


更沙「えっと… 何年の人ですか?」


2人が同じ探索隊だと思い、その女生徒に近づいていき 声をかけるが、


「かくれんぼ しよ わたしは鬼 とお数えるからお前たちは逃げて 隠れるんだよ」


優香「はあ? なに言ってんの?ってか質問に応えなよ」


「わたしがもういいかいって聞くから隠れてないならまだだよって教えてね ちゃんと隠れたらもういいよっていうんだよ」


優香「ちょっと あんた 人の話きいてんの?」


なにやら様子がおかしい 小柴さんはとても怖くなり、教室を出ようと2人を促すが、2人は強気に話の通じない相手に詰め寄る。その時ずっと下を向いていた女生徒がこちらを向いて小首を傾げてニタリと口元を歪めた。


その口はおおよそ人のそれとは異なり、耳の位置まで口角は広がり、そこから見える歯は鋭く尖っていた。それをまともに見た3人は悲鳴を上げ 我先にと、一目散に教室を飛び出して逃げだのだ。


優香「なにあれ? なにあれーー!?」


更沙「おっ オバケ??」


あかり「やだー!!」


3人が必死に出口に向かって走っていると、声が聞こえてきた。


「いーーちぃいいーーにいぃいいいーーーさーーーーーん」


3人に恐怖が走る。


優香「やだーーっなにこれ??頭ん中に直接聞こえるっっ」


更沙「えー! マジでヤバいの??え?マジで??」


あかり「とっ とにかく 外に出よ!!」


3人で出口に向かって走っていたはずが、いつの間にか小柴さんは1人になっていた。


「え? ウソッ なんで?? ゆっゆうかぁあー! さっさらぁあーー!!」


「もお〜〜〜いいぃいい〜かあぁあ〜〜いいいぃぃいい〜」


「!!まっ まあーだだよーー!!」


「あっでっ電話  けっ警察!!」


そう言ってスマホの画面を見ると、圏外が表示されている。


「え? な なんで?? 電波入んないの??  ううん!出口にさえ行けばっきっと2人にも会える!」


息を切らしながら小柴さんは、階段を下り出口に向かって必死に走るが、行けども行けども出口に辿り着けない。

もうとっくに出口に着いてるはずなのに、気づくとさっきの教室の前に戻っていた。頭が変になりそうだったが、それでも何度も出口に向かって走った。


恐怖で涙が溢れる。そんな中またあの声が、


「もお〜〜〜いいぃいい〜かあぁあ〜〜いいいぃぃいい〜」


「ひいっっ ハアハアッ まっ…まだだ…よー!」


走る足にも次第に疲労が溜まり、声も掠れてきた。


「こっ こわいよぉおー ひっく …だっだれか   た…す…け…て…」


長い時間恐怖で己の体は支配されたが、体力の消耗で、だんだん気力も無くなり、走れなくなったところに、


「もお〜〜〜いいぃ〜かあぁあ〜〜いいいぃぃいい」


またあの声が聞こえた時、小柴さんは泣きながら絶望し、生気を失い、とてもとても小さな声で


「…も…い… よ     」


あの時の女生徒のようについに言ってしまった。すると何処からともなく黒い大きな影が現れて、小柴さんを捕まえたのだ。そしてニタリと大きな口を歪めてとてもとても愉しそうに


「みいいぃいいつけたあぁぁあ」


と言ったと同時にスウゥッとその大きな影は小柴さんと共に、闇の中に消えたのだった。



小柴さんの身に起こった事をつゆほども知らない汐梨は、小柴さんに会える明日を待ち侘びながら、綺麗にラッピングした小袋に納められた消しゴムと、たくさん焼いたクッキーを準備して、浮かれながら妄想し、そのまま幸せな気持ちで眠りについたのだった。









異能者IZM 第5話を読んでくださってありがとうございました!前回から少しずつ評価いただいたりお星さまいただいたり嬉しい限りです!ほんと感謝しかありません!  また今回のお話も「面白かった」「続きがみたい」と思っていただけたら

下の☆☆☆☆☆ から星5つでも 1つでも構いませんので評価等よろしくお願いします!ブクマも大変嬉しいです!

何卒よろしくお願いします。 いつも読んでくださって本当にありがとうございます!

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