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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM第30話~現実と真実~

30話


連日続く猛暑の中、早朝にも関わらず庭先の木々にとまったミンミンゼミやアブラゼミが元気に鳴き出すのです。

ただでさえ朝っぱらから茹だるように暑い昨今、クーラーのない道場に来たら、じっとしていても    暑い…

加え夏の風物詩の蝉の大合唱。 室温は急上昇。

だが 神聖なる道場の前では、礼節や道徳を重んじ、武道に対する理念を大切にしなければなりません。

それが汐梨の祖母の教え である。

だから祖母も気合いを入れ、道着に着替えているのだ。

合気道を通じ、心技一体。人格を磨き人間形成の道を説く。

暑いからといってだらけてはいけないのです。


…なのにこの神代泉雲は基本の〝気をつけ"もせずと足を交差させてダラダラと立つのだ。

泉雲からしたら、着たくもない道着に着替えさせられるのだから不機嫌になるのも致し方ないが…

そんなものはこの道場では関係ない事。


汐梨(かっ かみしろくーんっ 態度わるいよっ)


汐梨は規律を知ってるからこそ内心焦るが、自分もシャキッとしなければならないので構う余裕がない。


そして…祖母の我慢の限界がきたのだった。


祖母「ぼんんー!あんたあ 何様か知らんけど武道なめとったらアカンでえ!ちゃんと気をつけせんかい!」


静かな道場に祖母の怒号が響き渡る。


さっきまでの、離れでの穏和な雰囲気からは別人である故に、

さすがの泉雲も目を丸くし、少しビビったのだ。


泉雲「…え? 」


汐梨(…あ おばあちゃん 怒っちゃった…)


そんな迫力の祖母を前にしても泉雲は強気なので、


泉雲「ーなんだよ!オレは体術なんかじゃなくてー霊力をっ「ほんならこのままとっとと帰んなはれ」


泉雲が自分の主張をしようものなら祖母は帰れと一蹴する。

もちろんここまで来て何も得ずに帰るのは得策ではない。

泉雲はくやしくてギッと奥歯を噛みしめて、ぐっと堪える。

そんな泉雲に汐梨がこっそり、

汐梨「あ…あの…道場ではおばあちゃんに逆らっちゃー「しおりい!」」


汐梨「はっはいぃー!」


祖母「あんた前ぇ出なさい」


汐梨「はい!」


祖母に言われるがまま汐梨は祖母の指示する場所へと素早く移動する。


祖母「ぼんあんたやる気あるんならちゃんと一礼して汐梨と勝負なさい」


泉雲「はあ? 女相手に戦えるかよっ」


祖母に言われても泉雲は反論、

そして汐梨もさすがに反論した。


汐梨「おっ おばあちゃんっ それはさすがに私もいやっ あ 無理だよっ絶対無理!」

汐梨 (それって組み手しろって事なんでしょ? 無理無理無理!)


汐梨はただでさえ対人恐怖症なのだ。

祖母が知らない訳ではないが、


祖母「…なんやのあんたぼんと仲ええんちゃうん? こんなとこまで来やったんに」


汐梨「いやっ だから 違うんだってばっ 神代くんがここに来たのは …私の能力を知りたいからで 仲いいとか… ないから」


祖母「ほー能力…」

(せやから こんなとこまで …なに考えとんかは正直分からんしなぁ…)


泉雲は汐梨に〝嫌だ"と拒絶されて、少し複雑な気持ちにはなったが、それには同意なので口を挟むのを止めた。

祖母は泉雲の反論よりも孫に強く反対されたので、そこは譲る事にして、ならばと


祖母「ちょっとそこの 〝あの子"呼んで来て」


近くに居た弟子の1人に声をかけ、弟子は1つ返事をして祖母の指示に従い〝あの子"を呼びに行ったのだ


暫くすると、けたたましいドタドタと歩く足音が聞こえて来て、ガラの悪い 悪態をつく声まで聞こえて来たのだ。


男「なんじゃいこんな朝っぱらからあなんやねん 人を叩き起しよって気っ分悪いのおー」


そしてその声の主が道場の扉をガラリと開けて入って来たのだ。

その男は背が高く、目つきが悪く、ピッタリとしたタンクトップを着ている細マッチョ系で、肌は浅黒く、ガテン系なのかニッカポッカを履いていた。


祖母「なんやの穀潰しの分際で たまには働きぃな」

その一言にカチンッときた男は


男「よーゆーわ!昨日も散っ々コキ使ってくれよってほんまごーわく」


突然入って来た粗暴な男は祖母と口げんかを始めたのである。

それに呆気に取られていると、その男が泉雲の存在に気づき、はじめて見る泉雲の美しさに、目を奪われてしまったのだ。

男が素早く泉雲の前に立つと目を輝かせながら、


男「おー!なんやなんやこのべっぴんさんわ!目え覚めたわあ おネーチャンどっから来たん?」


泉雲「…… は?」


男「いやあ〝ボク"敦士あつしいうねん♡髪短いめっちゃ好っきゃねん!しかも銀髪てイケてるやん♪その目ぇはカラコンなん?めっちゃキレイな青色やなぁ♡色も白ぉて細ぉてめっちゃ好みどストライクやわあええわぁ名前なんて言うん?」


…どうやら本気で神代泉雲を〝女"だと思ってナンパをしてくる。

しかもこの男のどタイプらしく、テンション上げ上げときた。

その様子に圧倒される汐梨…

この男は汐梨にとって親戚なのだが…


そんな事は知らない泉雲。

むしろ知ったところでどーでもいいことなので、ただただ迷惑この上ない事。

泉雲は中性的な顔立ちの為、女に間違われる事もある。

隣に汐梨もいるが、道着といっても同じような袴姿なので、細身の泉雲と体型が変わらなくなるのでその男には更に泉雲が背の高い女に映ったのだった。

勿論そんな男の態度に怒りが込み上げる。


泉雲「…〝おネーチャン"だと?てめえ ザケんなよ…どこに目ぇつけてやがるオレは男だ」


泉雲は冷めた目で、いつもより声のトーンを落として更にドスを効かせて声を放った。


男「……へ? またまたぁ悪い冗談いいなやぁ」


そのやり取りには祖母の怒りも霧散され、代わりに笑いが込み上げたのだ。

そして泉雲にそう言われた男はウっソやぁ♪と言いながら泉雲にベタベタ触り、あろうことか どさくさに紛れて胸に両手をペタリとあてたのだ。

そして…ホントに胸が無い事を知ってムンクの叫びのような顔をして固まった。

男に胸を触られてゾワゾワと鳥肌が立ち、怒りのままに殴ったのだった。


泉雲「気色悪ぃことすんなあ!」


泉雲に殴られ吹っ飛ばされた男は、殴られた頬を手で押さえ、半身を起こして、


男「いったぁ! ってえー!マジわいショックやわあーーーこんなにべっぴんさんやのにぃオスなんて反則やぁあーー」


泉雲「おい…お前仮にオレが女だとしてもそれアウトだかんな」


虫けらを見るような目で男を一瞥した後、



泉雲「おいばあさん こいつコロシテいいか?」


泉雲はバキバキと指を鳴らしながら殺意を込めてそう吐き捨てるのだが、祖母は「ぼん あんた不憫やなぁ」と言ってまた更にケラケラと笑い出したのだ。泉雲はそれを見てピキリと青筋を立てて、

祖母も本気で殴りたいという衝動に駆られるが、僅かな理性で踏みとどまるのだった。

汐梨は汐梨でそのやり取りを見てて、

汐梨(…こっ こわいっ )


とブルブル震えていた。


敦士「マジもんのショックやぁあーーー」

と絶叫する敦士を横目に

泉雲は心底「知るか」と思った。




***


そして一方東京の方では…

真純の死を知った百瀬が再び意識を取り戻し、失意のどん底にいたのだ。


百瀬「…そんなぁ~…真純ぃ…うそだろ…ひっく」


大の男が咽び泣くのも無理はない…


最愛のヒトの突然の死


百瀬「いづもいづも…うぐっ 危ない事に首突っ込んで…ひっく ぐす…気をつけろってあれほど~~」


岡松「…気持ちは痛いほど解るぞ」


百瀬「出張なんかっ 行くんじゃながっだぁあーーぁああー」


岡松は、自分の妹の死を悼む気持ちを最大限に表現する百瀬に感謝する気持ちはあるが…

いい加減泣き止んで欲しいとも思っている。


そしてそれから…数分後…


やっと百瀬が泣き止んで、落ち着いてくれたので、


岡松「…落ちついたか?そろそろ俺は部屋出るから お前も一緒に出るぞ」


岡松がダンボールを1つ持って百瀬に退出を促すと、百瀬は力なく頷いた。


部屋を出て、階段を降りると、目の前に黒服の男が2人立っていたのだ。

それを刑事の習性で怪訝な表情で盗み見ていると、


黒服「岡松 和也さんですね」


突然見知らぬ人間に自分の名を呼ばれたので、


岡松「…誰だ? お前ら」


岡松は男らに不審感をもち、そう問いかけた。


黒服A「そんなに構えないでください 我々は決して怪しい者ではありません さる方からのめいを受けてあなたを探してました どうか無駄な抵抗せず我々についてきていただけないでしょうか?」


言い方は丁寧だが、要するに〝黙ってついて来い"という事なのだろう。

だが誰が好き好んで得体の知れない連中にホイホイついて行くというのか…


岡松「…あんたら俺が誰か知ってんのか?」


黒服A「もちろんですよ八ツ谷署捜査一課1係岡松和也さん」


岡松「ほお…どうやらよくご存知のようで」


岡松はそう言うと、担いでいた百瀬を肩から下ろして立たせて、


岡松「おいしっかりしろ 形見分けだ これをお前に預ける持ってけ」


百瀬「…え? はい ? 」


まだ虚ろで状況が飲み込めてない百瀬が空返事をすると、有無も言わさず岡松は反対側で脇に挟んでた小ぶりのダンボールを百瀬に渡したのだ。


岡松「妹の遺作だから捨てんなよ」


百瀬「あ…はい…」


岡松「こいつは関係ねぇ 俺が行けばいいんだろ」


黒服A「…はい ご了承いただき助かります」


黒服はサングラスをしてるせいもあって、感情が見えない。

ただ自分達には敵意がない事を示すため、背筋を伸ばし しっかり腰から曲げて一礼したのだ。


そして岡松は、黒服達に誘導されて、すぐ近くに停めてあった黒塗りのクルマに乗り込んだ。

岡松を乗せた車が去った後、百瀬はダンボールを抱き抱え、「まずみぃ~…」とまた泣きながらトボトボと力無くキャリーケースをひっぱって何処ともなく歩き始めたのである。




***


そしてまた戻って三重県


現在泉雲が怒りに任せて敦士と名のったナンパ男を成敗 いや 手合わせをし、手にした竹刀で心ゆくまで叩きのめした所であった。

泉雲の容赦ない攻撃を受けて敦士は半分気絶していたが…


敦士「いたいっちゅうねん!~~~泉雲ちゃん卑怯や! 竹刀えもの使うん聞ーてへん!!」


まだまだ元気なようだ。


泉雲「〝ちゃん"言うな気色わりぃ 言ったじゃん 変態と組む気ねぇって ばーさんの許可ももらったしな」


敦士「わい変態ちゃうわっ」


泉雲「男のしり触ろうとしてくるヤツがいうな」


敦士「いや せやって なんやかわいらしぃおケツしてそーやったし」


泉雲「黙れ マジコロスぞてめぇ…」


敦士「うわっ こっわあ…」


2人の一連のやり取りを見ていた祖母は笑いを堪えながら


祖母「ーせやな (ぼん)あんた竹刀初めてにしてはなかなか筋ええに 」

(筋ええどころかさまになってるなぁ…礼儀さえ良ければもっとええにもったいない 後もっと見た目漢らしかったら …アカンまた笑いがっ)


敦士「ちょおまてや!ワイまだ実力の半分も出してへんねんでえ!」


泉雲「ふーん オレは10分の1しか出してねーけど?」


売り言葉に買い言葉…負けず嫌いは引かない。


畳に這い蹲る敦士に向かって無表情にいや まるでゴミを見るような目で言い放ち祖母に向き直る。


泉雲「こんなやつ相手になんねーよそれとキモい」


祖母「…みたいやにぃ」クスクス


敦士「ちょお!キモいってひどいわ!」


泉雲 イラッ「はやくあんたの術 教えろよ」


泉雲が礼儀をかいてそう言うやいなや


祖母「腹筋背筋100回ぃーはじめ!」


泉雲「… へ?」


泉雲が呆気に取られていると


祖母「追加! 腕立て200回!ほれ敦士 お前もや!」


敦士「んあぁあ???」


手合いでコテンパンにされた敦士に対しても容赦のない祖母…


号令と共に文句を言ったが、祖母が手にした竹刀で泉雲の頭を小突いて「やれ 嫌やったら帰れ」と促したので、

泉雲もしぶしぶ腹筋背筋を開始したのである。

…もちろん汐梨もそれに強制参加させられる。

これは 連帯責任という名を借りた〝しごき"なのだ。


暑い暑い真夏の朝、 地獄の特訓が始まった。



***


そしてまた東京の方では…


岡松は車内で目隠しをされて、耳にはヘッドホンをつけられて、聴きたくもないオーケストラが延々流れている。

完全に視覚 聴覚を奪われてどこかの施設に連れて行かれた所であった。


岡松(…着いてきたはいいが…俺 ちょっと早まったか? これじゃあ何されてもなんも言えねーな…)


危害は加えないという連中の言葉を鵜呑みにしたが、少し後悔していた。

というのもまさかここまで厳重に居場所の特定を嫌うとは…裏に相当の組織がいる可能性が高い。

その間も大人しく言われるまま着いて行ってはいるが、エレベーターに乗せられた事がなんとなく分かって、


岡松「…なぁ どこに連れて行く気だ?」

黒服A「ご安心くださいまもなくです」


その黒服の言葉は問いの答えではなかったが、しばらくするとウィーン…と扉が開いて降りるように促されたのだ。

そこでようやく岡松の目隠しとヘッドホンを解かれたので、岡松が薄目を開けると、

ガランと何もない部屋で中央には椅子が1つ置かれているだけだった。

岡松(…おいおい なんだよこりゃ…尋問 拷問部屋 か?)


そこで警戒心がアップした岡松だが、その椅子に座るように促された。


岡松「ちょっと待て なんだ?このいかにもな椅子は お前アレか?座ると拘束されて電流が流れるってやつか?」


黒服A「大丈夫ですよ 今回は何もありませんから」


岡松「はあ?今回はって…信用できるかっ」


抵抗されて中々座らない岡松に、黒服たちはそう言うが、信じられるわけがない。

その時


ーごきげんよう  岡松君  ー

それは ボイスチェンジャーか何かで変えられた声。


岡松「ぁあ? てめえ誰だ 警察の人間をこんな怪しげな所に連れてきて ただで済むと思ってんのか?」


ー おや? 素直について来てくれたんじゃないんですか?  ー


岡松「な わけあるか!〝ヤサ”を知る為に決まってんだろ」


ー なるほど 申し訳ありませんが こちらの素性を知られる訳にはいきませんので ー

 

岡松「あ?ふざけてんのか てめえらヤクザモンか?俺は一課だぞ 恨まれるスジはねぇんだが?」


ー ハハハ ご安心ください 我々はそんな野蛮な連中とは違いますから ただ貴方には聞きたい事がありまして いくつか質問に答えて欲しいだけなんですよ ー


岡松「ほお俺なんかに聞きたい事ね…ヤクザじゃなければじゃあ 公安か?」


ー  まぁ…私達の事はどうでもいいじゃないですか  ー


岡松「よくねーよ こちとら国家公務員やってんだ 簡単に情報を漏らせるわけねーだろ 」


ー 何も機密情報を教えろとは言ってないんですよ 私の今からする質問に答えていただくだけでいいんです  ー


岡松「…内部情報とは違うのか…じゃあせめて名をいえ」

(もし本当に内部情報知りたいなら末端の俺よりもっと上の人間捕まえるよな…)


ー そうですねぇ 〝K”と名乗っておきましょうか ー


岡松「…けっ ふざけやがって…」


岡松は堂々巡りの問答に諦めたのか、ようやく椅子に腰かけたのだ。


そしてこの〝K”と名乗った男は鴉丸菊ノ助であった。

菊ノ助はある事を確かめる為に、岡松を自分の管理するこの秘密の施設に呼んだのだ。

その為ボイスチェンジャーで声を変え、姿は岡松の方からは見えないマジックミラーとなっていて防音加工もしている。

だから音声はマイクを使い、スピーカーを通しているのでこちら側でスイッチを切ると聴こえなくなる。


部下A「菊さん…よろしいんですね?」


菊ノ助「はーい☆ やっちゃってください」


菊ノ助の合図で部下は術を唱えだした。

その声を岡松の部屋に通すと、もちろん岡松が騒ぎ出す。

「なんだ?この声は?」と言うが誰も答えない。そしていつの間にか部屋に1人にされていて、

その部屋の隅には小さな壺があって、それが声に反応したのだ。

その間菊ノ助は岡松に質問する。


  ー あなたに質問です 亡くなった妹さんの真純さんは霊能力はお持ちでしたか?ー

菊ノ助にとって、大まじめな質問なのだが、受け取る岡松からしたら想像だにしない、斜め上の質問だったので一瞬 何を聞かれたのか理解できなかった。


岡松「は?  なんて?」


  ーそのまんまですよ 妖怪や霊を視るチカラがあったのかどうかお聞きしてるんです  ー


岡松は「マジか…?」とちょっと引きながら白い目でスピーカーを見やり、少し思考停止したが、


岡松「……あんたが なんで俺の妹が死んだ事知ってんのか聞きてーが …言ってる意味がわかんねえんだが?」


会話の途中であったが、術は続いていて

壺がガタガタと動き出し、中から「ぎっ ギギ、 ギイ〜〜〜」と嫌な声が漏れ聞こえてきているのだが、部屋にいる岡松はその異変を感じ取れないのである。


部下A「出てきますよ」


その合図と共に、壺に貼られた封印の札をビリビリと破って、ウゾウゾと不気味な影が這い出てきたのだ。

ズァーッ!とその影は大きくなり、元の姿へと化していく。


そこで部屋の外で待機していたある人物が、中に入ってきたのだ。

その気配に気づき、岡松は振り返る。

その者は、まだ少年に見える若い男だったので、

岡松「…君 こんなところでなにしてんだ?」


と不思議そうに岡松は訪ねるが、


男「…あれ? オッサン こいつ視えてない?」


この男は伏見享一。

〝こいつ”とは 先ほどの壺から出てきた妖の事。

実は実験用に捕縛していた為、比較的攻撃性は低いのだが、万が一もあるので妖討伐隊メンバーの伏見享一が部屋に入って来てるのだ。

岡松は、何もない空間を指差す享一を怪訝な目で見ながら「…こいつってなんだ? なんかいるのか?」とキョロキョロ辺りを見渡している。

妖とは 存在を視る事ができなければ、壺が動いててもお札を破っても、普通の人間には 何も起きてないのと同じだ。

壺は視覚できてもそれ以外の事象は無かった事となる。


その様子を見て菊ノ助は、


   ー あなたは 視えないんですか?   霊や妖が  ー


そう言われて岡松は眉を顰めてわしわしと頭を掻きながら、


岡松「〜〜あのなーあんたが何言いいたいのか俺にはサッパリなんだが 第一そんなモン見えるわけねーだろ!あれか?壺とか売りたいのか?あぶねーやつだな」


岡松はあまりのアホな質問だと小ばかにしだし、言いたい放題である。


享一「んー これはまったく視えてねーぜ しかも一切感じてもねーよ まったくの〝ただの人間"だよ」


享一は念の為這い出て来た妖を注視しながら岡松の身の安全を確保していたが、岡松本人には何も視えてないので解除した。

それを合図に菊ノ助の横にいた部下が封印の術を唱え、亨一が再び壺の中に戻したのだ。



ー …みたいですね  ー

菊ノ助(どういう事だ? 兄が能力ないだけで妹はあったという事か?)


不毛なやり取りに痺れを切らして、

岡松が「フザケんな!てめぇおりてこい」と叫んでいるが菊ノ助がもう一度


ーあなたの事は分かりました ただ大事な事なので答えてください 妹さんに霊能力はありましたか? ー


岡松「~~またかよ しつけぇなあ」


岡松は心底理解に苦しんだが、ピンときた。

(ん?こいつはアレか?真純の雑誌の読者とか…じゃあその手のコミュニティ 宗教団体とかなんかか?)


そう推察してみると、この手の質問も100歩譲って納得できる。

そして何よりすぐにでもこの状況から解放されたかったので、

考え直し、少しだけ冷静になって答える事にした。


岡松「…そんな 妙な力あるなんて聞いた事ねぇよ俺の両親も然りだ」

(覚えてろよ 絶対調べてお前らとっ捕まえてやるからな!こんな手の込んだイタズラしやがって警察舐めんな)


ーそうですか…どうやらあなたにも無いようですし 本当の事なのでしょう では 次の質問です ー



岡松「はいはい」


ー 現在拘留しているホストの兜斗とかいう男…彼とはどのような話をしたのですか? ー


この質問で岡松の雑誌の読者or宗教団体説は吹っ飛んだ。


岡松「…それは警察内部の人間しか知らない内容なんだが? なんで知ってる?」


ー 我々はなんでも知ってます もちろんアナタの個人情報も ー


岡松の背中に冷や汗が伝った。


岡松「…脅す気か?」


ー いいえ そのような事はしません ー


岡松「…」


岡松は沈黙し、考えを巡らせていたが、


ー 情報交換ですよ ー


岡松「はっ 何が情報交換だ!結局内部情報じゃねーか!」


ー 言ったじゃないですか 我々はこの世に存在しないとされる異形なるモノが実在する という事を明かしたんですよ ー


岡松「!んなモンこじつけだろが!そんな頭のおかしい話を誰が信じるってんだ!」


ーでは もう1つの真実をお教えしましょう

岡松「真実だ?」


ーそのホストの男は犯人ではありません そもそも犯人は 人間ではないんですよ ー


岡松「……? なに 言ってんだよ」


岡松が理解できてないと判りつつも菊ノ助は続けた。


ー あなたの妹を殺したのは 妖なんですよ ー


岡松「……… は ?」


自分の妹を殺され、無慈悲にも上から捜査を打ち切られて、独自に独りで調べてやっとの思いで重要参考人に辿り着いた刑事である岡松。

だからこそ そんな非現実的な事柄を受け入れれる訳はなかった。


だが確実に今 妖による静かな侵略は起きているのである…


そして泉雲と汐梨は意志とは関係なく、大きな渦の中に巻き込まれてゆくのだ…
























































いつもご閲覧ありがとうございます!

また次話の投稿の目処が立ったらお知らせしますね。

何卒よろしくお願いします。

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