表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能者IZM  作者: てんせん
3/24

異能者IZM  第3話

第3話



ここは都心より少し離れた場所に建つ、

大和仁王学園高等学校。今時の新設校とは異なり、歴史を思わせる古風な造りである。創設は100年とも200年前とも云われている。なので地元では、知る人ぞ知る進学校としても有名だ。

それが現在藤峰汐梨が通う高校なのだ。


6月に入った現在

そんな大和仁王学園高等学校の職員室が今現在慌ただしい。

先生A「〇〇先生、今日じゃなかったですか?編入生が来るの」


先生B「そうなんですよー」


そう応えながらHRの準備に追われる1人の教師が己の腕時計に目を遣る。


先生C「いやーそれにしても中途半端な時期ですけど、帰国子女の生徒がうちに編入してくるって珍しいですよねー」


先生B「あはははーそうですよねー」


などと教師同士で会話をしていると、


教頭「平井先生」 ガラッ…


先生B「はい!」


職員室のドアを少し開け、戸口で教頭がジロリとこちらに目を遣る。すると呼ばれた平井先生が、慌てて身支度を済ませ、その教頭の後を追うように職員室を出たのだ。


初老の後ろ姿には威厳があり、後ろを歩く男には些か緊張が走る。少し歩いた所で前の教頭がピタリと歩みを止め、扉をノックした。


その頃HR前のある教室では、


生徒A「ねえ!知ってる?今日ねー編入生が来るんだって!」


生徒B「うっそマジマジ?ヤバいんだけどぉー!男?女?」


生徒A「あっ帰国子女って聞いたぞ!って事は女子かー」


生徒B「バッカじゃねー帰国子女って女って意味じゃねーから」


生徒C「うっけるぅー」


一部のグループが話し始めると他の生徒達もざわつきだした。

その中で窓際の席で1人ポツンと静かに本を読んでいるのは藤峰汐梨だ。


(編入生かぁ…帰国子女…仲良く なれるかな…ムリ かな…)


入学して早3ヶ月…汐梨には友達どころか普通に喋れる相手もいないのだ。本人は予想もしてたので あまり落ち込む事も無かったが…

そこで始業チャイムが鳴り、教員が教室に入ってきた。


教師「はい みんな席に着いてーHR始めるぞ」


そう言いながらスタスタと教壇の前に立つ。すると1人の生徒が


生徒A「センセー今日うちに編入生来るんだろ?女子?男子?」


必ずクラスに1人入る好奇心旺盛なお調子者。


教師「なんだ…情報が早いな もうみんな知ってるなら…入ってきてもらおうか」


教師の合図とその入ってくるであろうドアにみんなの注目が集まる。


するとガラツ…とドアが開き、無言で1人の生徒が入ってきた。

スッと静かに入ってきたのは、日本人には珍しい銀髪で、それだけで目立つ。そんな生徒は教師の横にスッと立ち俯いていた顔を上げた。

色白で、切れ長の吊り上がった深い蒼い瞳を持ち、見た通り日本人離れした美形であった。

そこに立っているだけで周りの空気が変わったような そんな気さえする。


思わぬ美形の登場で、女生徒からは歓喜の声が上がる。それに対し一部の男子生徒は不満の表情を浮かべている。そんな中汐梨だけは1人違う感情を抱いていた。


(ウソ…あ あの人…いつかの 銀色のオオカミ…)


背筋が凍る思いがし、キュッと本を持つ手に力が入った。


女生徒A「やったー超イケメン!」


女生徒B「めちゃくちゃ顔がいい…」


女生徒達のテンションがみるみる上がっていく。


教師「コラコラ お前らーいい加減 静かにしろー」


一つ咳払いをし、やれやれといった教師が教室内のざわつきを一旦落ち着かせた。


教師「彼は神代泉雲かみしろいずむくん ヨーロッパの方に住んでいたそうなので、日本語が不得意だそうだ だからみんな協力して色々教えてやってくれな」


まばらに「はーい」女生徒だけは元気に返事。

すると教師が隣にいる泉雲に「神代くんからも何か一言」と言うので、泉雲はその教師をチラリと見遣り、数秒後に何も言わず頭を少しだけ下げたのだ。

その様子を見てもしかしたら日本語をあまり理解できてないかもしれないなと1人ゴチリ、追求をやめたのである。

が 泉雲は実際日本人かどうかは定かではないが、勿論本当のところ日本語は理解出来るし喋れる。ただ本人はコミニュケーションを取る行為が苦手、


いやむしろ嫌いなだけなのである。だからそんな彼は心の中で『めんどくさ』と呟き、教師に言われるがまま用意された席に向かう時気づいたのだ。そして思わず


「あ…」


出すつもりのなかった声が出た。


「神代くんどうしたの?」と頬を染めながら声をかける1人の女生徒、それに対し、気づかないフリをし、スタスタと自分の席に着いたのだ。数ヶ月前の出来事ではあったが、インパクトが強かったので覚えていた。


(あの時の 変なメガネじゃねーか!)


そう 泉雲の座った席から左奥窓際の席に座る女生徒は藤峰汐梨なのである。

勿論汐梨も気づいている。なんだかお互い少し居た堪れない様子ではあるが、滞りなくHRは進んで行く。 


(うわぁ〜〜もお…会う事なんてないと思ってたのに…まさか 編入生だなんてっっ…あれ?でも4月には日本に居たよね?…あれ?)


汐梨がハテナを頭の中に無数並べる頃


(〜〜なんでこんな所にいんだよ…なんか最悪の気分だ 相変わらずキモいメガネつけやがって…あーもーやめてぇ …でもアイツ ひょっとして物の怪が視えてんのか?)


頬杖をつきながら横目で汐梨の様子を伺う泉雲。

汐梨は怖くて泉雲の方は見れないので、縮こまって持っている本に顔を埋めるのである。


(少し話を聞いてみるか…いや 正直関わりたくねーしなー…どうみても普通じゃねぇし もう浮いてんじゃね?あのナリだし…)


泉雲がそう頭の中で葛藤していると、いつの間にか授業が始まったのである。そして授業終了のチャイムと共に、待ってましたと言わんばかりに泉雲の席の周りには人集りができた。

噂を聞きつけて他クラスの生徒達も通路の廊下に集まってきている。


女生徒A「ねーねー神代くんって日本人じゃないよね 何処出身?すっごい綺麗な青い瞳してるよね♡」


女生徒B「いつ頃からヨーロッパに行ってたの?どの辺住んでた?かっこいいよねー!」


女生徒C「名前 普通に日本人っぽいけど ハーフなの?」


そらきたうぜぇ…泉雲は一際目立つ容姿をしている。主に銀色の髪と蒼い瞳のせいだが、それに加え、

帰国子女というワードで周りに興味を持たれる事は仕方ない事なのだが、本人は快く思っていないのだ。だが現在は女生徒たちに質問攻めにあい、埋め尽くされて本人は見えない。

そんな様子を横目で見ていた汐梨は凄いと思う思う反面、羨ましいと思っていた。


(いいな…瞳の色綺麗とか言われて…わたしは 気持ち悪いとか 言われていたのに…)


周りの女子達とは違い、少し卑屈な考えで見ている。その時ガタンッ!と突然大きな音が響いたので、辺りが静まり返った。

ビクリと肩を跳ねた汐梨が恐る恐る横を見ると、泉雲が無言で立っていて、無表情で女生徒達の垣根をすり抜けスタスタと教室から出て行ったのである。その様子を面白く思わなっかった一部の男子生徒が目配せをし、

泉雲の後を追うように教室を出たのだ。


その泉雲の態度に不満を漏らす女生徒達だが、もしかしたら日本語が聞き取れなかったのかもしれないと思い直し、渋々泉雲の席から離れた。

汐梨は(怖いっ)と肩をガタガタと震わせる事しか出来なかった。

その頃泉雲は男子トイレに駆け込み、その個室で一つREIN(LINEの事)を打っていた。その内容が[潜入完了]すると相手からすぐ既読になり[入学おめでとう!]を示すスタンプが送られてくる。

それに思わず眉間に皺を寄せたが、すぐ表情を消し[やめていいか?]と一言打って個室から出た。

すると相手からはピコンピコンとメッセージが送られてくるが、泉雲の前には3名ほどの男子生徒が待ち構えていたのだ。


生徒A「あれ?神代くんもしかしてう○ちしてたのおw」

生徒B「おもしれっ だから急いで教室でってたの?わりぃわりぃ」


爆笑する者にニヤニヤニタニタ嫌な笑みを浮かべながら鼻を摘む者。それに対し酷く心外だとは思ったが、


「あーあ どこに行ってもお前らみたいなめんどくせぇの いるな」

生徒A「! なんだよ!日本語喋れんじゃん!」


「だから何? お前らに関係なくね?」


生徒B「くっ怯むんじゃねー!こいつ今は腹下してんだ!ボディ狙えよ」


そう言われ泉雲は少し腹が立った。別にう○ちをしていた訳でもないので不名誉だと、

1人の男子生徒が拳を振り上げ、もう1人が泉雲の動きを塞ごうとした時、


ズアッ!と突然周りの空気が重くなり、泉雲に殴り掛かろうとした男子生徒が白目を剥きそのまま倒れ込んだ。

それを見た残りの男子生徒が何が起こったのか理解できず、とりあえず倒れた生徒に駆け寄ろうとする。

泉雲はその姿を一瞥しその間に割入り、そのまま何も言わずに出ていくのだった。

取り残された男子生徒はハッとして未だ倒れ込んでいる自分の友人を揺さぶり、声をかけ、ようやく意識を取り戻した友人に対し、「何があった?」と聞いたが相手はわからん…と一言だけ言っただけで逆に聞く


「何があった?」


すると2人の生徒は顔を見合わせ


「あれ?俺たち ここで何してたんだ?」「…トイレなんだから用をたしきたんじゃねーの?」


「…だよな…」


不思議な事に3人は泉雲を追いかけてきた事も、争った事も忘れてしまっていた。


その頃泉雲は迷っていた。このままサボるか戻るかを、正直学校なんかに通う気なんて全くなかったのだから。


しかしここへきて少し気になる事が


それはやはり同じクラスの汐梨の事である。考えが纏まらないうちに結局教室まで戻ってきてしまった。その時汐梨の姿が目に入り質問するか迷ったが、どうにも声をかけにくい。


(どーー見ても だっさいイモにしか見えない… アレに話しかける勇気は流石にねーわ…)


ドサっと席に着いて一息つくと、周りの女子達がまた泉雲に話しかけようとしたが、始業チャイムに遮られてそのまま大人しく授業を受ける事になった。

あの3人の生徒たちは授業には現れなかったのである。

そして昼休みを迎えたクラスメイトは、それぞれ仲の良い友人達と集まり、昼食を摂るのだが、汐梨にはこの時間が苦痛である。

結局の所〝見た目”でみんなにだいぶ嫌厭され、

誰とも打ち解けられず、いつも1人で昼食を摂る場所へと向かうのだった。


(…編入生の人…ちょっと期待したわたしは バカだったなー…席が近くてこわい…)


1人落ち込みながらお気に入りの静かな中庭で、手作り弁当を広げて食べ始めた。

その時汐梨の頭上に大きな影が覆い被さったのだった。え?と思い頭を上げると、目に入ったのは大きな翼。

初めて目の当たりにしたかもしれない。バッサバッサと大きな翼をはためかせ、その眼光は、獲物を狙うが如く鋭く、その嘴は尖り、大きな脚と鋭利な爪を持つ猛禽類と呼ばれる鷹であった。

汐梨は声にならない声を出し驚愕した。


「え… え? こんな所に タカ? …な …なんで??」


座っていたベンチから立ち上がり、少し後退りしながらゆっくり距離を取る。

するとその鷹は器用にホバリングをしている。大きな翼を広げた姿が思っているより威圧的で相当怖い…そしてとうとう地上に降りたのだ…

その様子にビクリと肩を震わす汐梨…しかしその鷹はジーッと汐梨の手の中の物から目を離さない…それに気づいた汐梨が恐る恐る


「きみ…おなか  空いてるの?」


声をかけるとまるで返事をするように鷹がピーッと鳴いた。それにハッとして汐梨がもう一度問いかける。


「えっと 人間の食べ物って 大丈夫 なのかな?か 唐揚げ とか?」


「ピィッ」


「ふふ…キミ 変わってるね」


と まるで言葉が分かるかのように言葉を交わし、汐梨はもう一度ベンチに座り直し、自分の箸に唐揚げをぷすりと刺し、少しずつ鷹に近寄って行った。

すると鷹もゆっくり歩いて近づき、箸に刺さっている唐揚げに食いついたのだ。


「…ほんとに 食べた…ころもとか…味とか いいのかなー」


そうやり取りしていると、


「北斗にへんなモン食わせんじゃねーよ」


「…え?」


振り返るとそこには銀髪の少年が立っていた…汐梨はビックリしてまだほとんど手を付けてなかった弁当をひっくり返してしまう。そんな汐梨に白い目を向け、鷹を呼ぶ。


「北斗  おいで」


すると北斗と呼ばれた鷹は、少年の方へ飛んでいき、フワッと自然に少年の肩に舞い降りた。

そう そこに立っていたのは本日編入してきた神代泉雲であった。泉雲は奇妙な光景を見たのだ。北斗は普通の鷹ではない。


(オレにしか懐かないはずの北斗が…なんで?)


「おい…お前 ここで何してんの?」


そう泉雲に問われるが、基本人馴れしてない汐梨はただただ固まって言葉が上手く出ない。


「〜〜〜〜〜」


「…北斗は肉食で 生肉しか喰わねえんだけど」


「あ…ごっごめんなさい!」


やっと出たのは謝罪の言葉。


「…お前 誤ってばっかだな」


「あっ すみま…せん」


何故かビクビクする汐梨にイライラする泉雲だが、彼には聞きたい事がある。


「あんたさぁ 北斗の事知ってんの?」


「 いっ いえ!」


「………」


(じゃーなんで北斗がお前なんかに懐いてんだよ それでなんであの時化け物の血が視えたんだ?)


泉雲は理解できない事が多くあり、問いただしたかったが、先に動いたのは汐梨だった…落とした食べ残しを拾い弁当箱に戻し、すくっと立ち上がり、またダッシュでその場を立ち去ったのだった。


「ハア?? アイツ…また逃げやがった…」


「チッ…よく考えたら 北斗の事知ってるはずねーじゃん くそ…オレも何聞いてんだか…」


そう言いながら泉雲は己の顔を顰めながら北斗を見遣り


「お前…趣味悪いぞ」


と言うと、北斗はなんだか嬉しそうにピィっとだけ鳴いたのだ。


その頃汐梨はとにかく逃げていた。


(ひぃ〜〜!なんかあの人怖いよおーーなんで?日本語喋れるみたいだしっ なんか 睨んでくるしーー!!)


実は汐梨が入学してからまともに会話を交わした相手はこの泉雲だけなのである。


本当は友達が欲しいのだが、長年のコミュ障が災いしてまともに喋れない。話しかけれない。

外見では男子生徒からは圏外扱い。

ひとしきり走った後汐梨は図書室まで来ていた。


「はぁ…はぁ…」


(なんで 逃げちゃったんだろう…わたし 学校で会話したのって 神代くんが初めてなのに…)


でもでも あの人 なんか綺麗すぎて苦手〜〜心の中で絶叫しながら頭をブンブン振り回す。


(そういえば さっきの鳥 北斗くんって言うんだ…神代くんて鷹匠か何か? あれ鉤爪痛くないのかなぁ)


本を選びながら考えていると、お腹がグゥーッと鳴った。


(あっやだ そういえばお弁当落としちゃってほとんど食べてなかったんだー…)


忘れていた空腹を思い出し、泣きそうになる。そして仕方なく購買でも行くかと力なく向かおうとしたが、無情にも昼休み終了を知らせるチャイムが鳴り、汐梨はガックリと肩を落とすしか無かったのだ。


これが汐梨と泉雲の2度目の出逢いであった。

異能者IZM 第3話を最後まで読んでくださりありがとうございます! 「面白かった!」「続きが読みたい」等思っていただけたらぜひ

下の☆☆☆☆☆ から 星5つでも星一つでも構いませんので評価いただけたらとてもとても嬉しいです!よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ