異能者IZM第25話~汐梨と泉雲 祖母の家に行く~
M県という表現が出てきますが、おそらく次回に県名を書くと思います。
では 本編をよろしくお願いします。
25話
こちらは東京都内の警察署である八谷署内。
ミイラ化連続変死事件の重要参考人としてホストの兜斗の取り調べが行われていた。はじめの取り調べでは、実の妹が犠牲者でもある事で、岡松は感情的に兜斗を責め立てていたが、同僚に制されながら落ち着きを取り戻し、冷静な取り調べをしていた。
岡松「ーお前が組んだというそのブローカー!その名前も顔も知らんのだな?」
兜斗「だからっ そーだっつーの 連絡はsilent(※テレグラムのようなモノ)
っつうアプリ電話で 女の子の あ… 斡旋だけの はなししかしてねーし…引渡しは いつも睡眠薬で眠らせた後 黒服の奴らが連れてったし…受け渡しが完了したらその報告をする決まりで…」
岡松「この クソ野郎がっ」
兜斗の自白する卑劣な手口にまたも激昂しそうになる岡松を同僚が必死に止めに入る。
刑事A「岡松さんっ 気持ちはわかります!ですがっ頼むから冷静に!silentは最近闇バイトの犯罪に使われている自動消去できるアプリだな?」
その刑事の問いかけに兜斗は岡松の怒りに怯えながらコクコクと首を縦にふった。
岡松「そんな厄介な機能があるから手掛かり無し ときた くそ…」
苛立つ岡松に同僚刑事が
刑事B「…岡松さんどーします?このホスト素直にゲロってるよーにもみえますが、これ以上絞り上げても吐かないんじゃないですかね」
岡松「そのブローカーが何処に潜んでるのか とりあえずこいつの店洗え」
兜斗「おっ オレは 殺してなんかいないからな!殺ったのはあの男だ!」
兜斗は半分怯えながら自分は悪くない悪くないとブツブツ口にする。
刑事A「…わかりました とりあえず岡松さん一緒に部屋出ましょう おい その後応援呼んで行ってきます」
刑事B「後はこっちでやっとくよ」
刑事A「ああ 頼む」
同僚刑事Aは、重要参考人の兜斗に危害を加える恐れのある岡松を放っておけないので、腕を掴みながら取調室から退却したのである。
もう首謀者である妖は神代泉雲によって討伐されて解決しているのだが、人間側では妖の仕業など知る由もないので、
ミイラ化連続変死事件の再捜査が行われる事になったのだ。
そんな最中藤峰汐梨は厄介事を抱え込んでいたのである。
***
夢だと思いたかった…
けど夢ではなかった…
あの 神代泉雲が祖母の家に来る?
なんの冗談なんだろう…
夏休みに入る2週間ほど前から神代泉雲からちょくちょくluin(lineの事)にメッセージがくるのだ。
その内容が
泉雲《明日 唐揚げがいい》 ←弁当のコト
汐梨
泉雲《明日は鮭がいい》
汐梨
という内容である。
汐梨(…あれから お弁当のリクエストが毎日くる…)
そして夏休み前日
※汐梨は初日から祖母の家に行く予定なのである。
泉雲《ばあさんとこの住所教えて》
汐梨《あの 住所はよくわからないのでそこに行くまでの途中経過なら》
泉雲《なんで?教えるのやなの?》
汐梨《そういうわけじゃないんです上手く説明できないんです。》
泉雲《いいよ じゃーそれ地図で送って》
汐梨(えー…それは調べて送ってこい と…)
文句を言いたかったが、送れと言われたので、汐梨はやった事なかったG◯g◯eマップのアプリをインストし、住所を調べてリンクを貼る。その間の作業約15分。
その間泉雲から《まだ?むし?》の催促…
汐梨(ちょっと待ってほしい…)
そんなこんなでなんとか地図を貼ると、
泉雲《すっげー田舎じゃん》←(悪いですか)
プチッ やっとの思いで返信したらこの言い草…
しかも祖母の住んでる場所を馬鹿にされたと思った汐梨はちょっとムッとして、既読スルーをする事に決めた。
すると泉雲から着信が入ってしまった。
汐梨(えー! でっ電話かけてきたの??うそっうそっ)
一人であわあわと狼狽えてしまうが、鳴り止まないスマホを見つめて…嫌々ながらも電話に出た。
汐梨「…はい もしもし」
泉雲『なんで返事しないの?』
汐梨「…地図送ったじゃないですか」
泉雲『ああ 届いた』
汐梨「じゃあ要件は 済みましたよね?」
泉雲『…お前なんか 喋り方に棘ない?』
汐梨(どっちが!でしょうか?)
散々キツい言い方されてイジメられて…
でもふと思う、
汐梨(…そういえば 気のせいかな?最近神代くんの私に対する喋り方がちょっと 柔らかくなったような気がする…きのせい?)
泉雲『ねぇ 聞いてる?』
汐梨「あっ はい」
泉雲『…まーいいや 明日からだろ?ばあさん家に行くの』
汐梨「はい…(ほんとーに来る気なんだ…)」
泉雲『明日さ 起きたらオレにコールしてよ モーニングコール わかる?』
汐梨「…はい?」
〝モーニングコール”とは
その名の通り朝 起こす事。宿泊施設等では業務の一環ではあるが、個人では親子関係の者や友だち、もしくは恋人と呼ばれる親しい関係性がある者同士が行う行為。
なのだがいかんせん汐梨は人脈のネットワークが皆無である。
汐梨「それは 私が起きたら電話して神代くんを起こしたらいいんですか?(業務の事ですね)」
泉雲『うん そーいうコト』
汐梨「…はい わかりました」
汐梨がそう言って通話は終わったのだった。
汐梨「はぁ…神代くんは きっと私の事便利屋とか思ってんだろな…」
泉雲がどーいう意図で言ったのかも、汐梨にも誰にも解るはずもなかったのである。
さすがに汐梨の一存では決められないし祖母には断って欲しいと思ってクラスメイトを1人連れて行くけど大丈夫?とお伺いを立ててはいたが、(妖や幽霊が視える人と伝えた)予想外に大歓迎されたので もう 引くことはできなかったのである。
そんなこんなで迎えた夏休み 汐梨にとって、憂鬱な朝がやって来た。
汐梨「…朝だ… 」
汐梨は習慣で6時前には起床する。
出発は9時なのでまだまだ時間はある。
目が覚めた汐梨は荷物の確認をし、大きなため息を吐いた。
汐梨(…ほんとは鏡を渡って行くつもりだったんだけどなー はぁ…あの道…通るのか)
髪をときながら また憂鬱になる…
汐梨(神代くんにちゃんと説明もできてないし それに〝あの道”通る事行ったらきっと途中で帰るって言うかもっ あっ電話した時に伝えて丁重にお断りしたらいいんだ♪そーだそーだ!)
汐梨は前向きに正当にお断りする理由を作り、考えて少し元気になったのだ。
当日にいわゆるドタキャンするよーな行為は、人として非常に嫌われる。
そして現在時刻はAM7:30
そろそろ電話をするかとスマホを手に取る。
そして想像する。
汐梨(…きっと寝起き悪いんだろなぁ…きっと怒る いや絶対怒る!怒るに決まってる!)
かける前からそう決めつけて、また落ち込んでいるのだ。またあれこれ考えながら発信ボタンを押せずに5分が経過。
自分の 逃れられない厳しい任務に
汐梨(あ~~…こわいなあ……でも さすがにそろそろ電話した方が…いいんだよね…あー誰か助けてくださいっ)
現在自室。でなくても頼れる相手なんていない。
そんな 独りでまるで暗雲に包まれた状況に絶望する汐梨は、神代泉雲に〝モーニングコール”をする為、覚悟を決めて震える指で発信ボタンをタップしたのだ。
コール音が耳の中で鳴り響くたびに汐梨に有り得ない緊張が走る。
5度目だろうか コール音が鳴り止んだ。
汐梨の心臓も止まりそうになる。
だが相手からの声は聞こえない。意を決した汐梨が呼びかけたのだ。
汐梨「あ… あの…もしもし?」
泉雲『 ……ん… 』
汐梨「か …かみ しろ くん…朝 ですよ」
身体を縮こませて震える小声で話しかけると
泉雲『ふあ~…ん~~ おはよ』
なんと!電話に出た泉雲の反応は予想とは斜め上を行くモノだった。だから汐梨はものすごく動揺する。
汐梨(??あれ? おっ 怒らない?? おだやか??)
汐梨が大混乱に陥っていると、
泉雲『ふじみね おはよ』
汐梨「おっ はよーございます ……起きましたか?」
泉雲『んー…まだねむい…後5分…』
なんか 違う…
汐梨「えっあの でしたら5分後にかけ直した方がいいですか?」
真面目な汐梨は言葉通り受け取り聞き返すが、
泉雲『んー…じゃあ なんかしゃべって』
と 超ド級の無理難題を吹っかけられて、汐梨はフリーズした。
汐梨(ちょっ ちょっと待って!?なにこの反応??怒られなくて安心したけど!優しい??けどっ どーしたらいいかわかんないよぉおー!!)
汐梨がダラダラとよく分からない冷や汗を流し混乱の渦の中にいると、また
泉雲『ねぇ なんかしゃべってよ』
と 普段聞き慣れないような声のトーンで、すごくソフトで、しかも耳に絡みつくように響く甘いボイス。
汐梨(え? あれ?…この人ほんとに神代泉雲くん なのですか??)
汐梨の頭の中には「?」マークが散乱する。
「ふ じ み ね 」←ソフトボイス
汐梨「! はっ はいっっ」
泉雲『クスクス…朝から元気いーね』
汐梨(…… ほんと 誰? この人…)
とは思うがさすがに普段の聞き慣れないソフトな甘いボイスは破壊力じゅーぶんで、汐梨の顔が無意識に熱くなってくるのである。
この空気に耐えれなくなった汐梨が、
汐梨「あのっあのっ とっとりあえずモーニングコールはしました!そのまま起きててくださいっ」 プツ…
泉雲に変にペースを乱されて、ドッドッドと心拍数の上がる心臓が痛いと汐梨は蹲った。
汐梨(なに? なんなの??なんで怒らないのー??)
※怒られるのがあたり前になってる。
そしてハッとするのだ。相手から断ってもらう為に電話したのにソレをすっかり忘れてしまった事を…
その頃泉雲は自分のベッドの中で
泉雲「あ 切りやがった…ふぁああ…ま いっか」
そう言いながらダルそうに起き上がったのだった。
そんな調子で時刻は9時になり、汐梨は父親の運転する車に乗り込み、祖母の住むM県へと旅立ったのだ。
翔太には汐梨が祖母の家に夏休みに行く事は知らされてなく、友達と出かけて行ったのだ。
※泉雲とは現地集合であり、父親も誰も泉雲が来る事は知らない。そんな事言えない…
東京からM県までは車で約5時間ほど、
道中汐梨はほとんど放心状態であった。
父親の問いかけにもほとんど「うん うん そーだね」ぐらいしか答えてなかったという。
一方神代泉雲は、菊ノ助に一言「修行に行ってくるから車出してくれ」と伝え、菊ノ助は何気にやる気になってくれた!と泉雲に感動して、「どこでやるの?」と聞くと「M県」と言われて「?」となった。
(そんな所…縁もゆかりも無いんじゃない?なんで?)と思ったが、教えてくれないから要求を飲むしかない。そして車を泉雲に言われた場所まで回したのだ。泉雲はその車に乗り込みM県へと旅立ったのだった。
そこで待ち受けている受難がどんなモノかも知らず…
互い5時間程の車での長旅…泉雲はその間ずっと寝ていた。
現地に先に到着したのは汐梨だった。
父親が心配そうに、
父「本当にここでいいの?」
汐梨「うん 」
父「…なんで今回は鏡使わなかったんだ?」
ギクリと顔を強ばらせたが、
汐梨「うん これも 特訓だから」
となんとか誤魔化し、
汐梨(…なんか 私 最近ウソつくの多くなったような気がする…)
と罪悪感を覚え、父親に申し訳なさそうに告げ黙々と荷物を下ろす。
父「…父さんは 〝ここから先”は行けないから…荷物は大丈夫?」
汐梨「うん 式神がいるから大丈夫だよ」
父「…そうだよな…汐梨は強い子だもんな
お義母さんにくれぐれもよろしく言っといてくれな」
汐梨「うん ここまで運転ありがとうパパ
気をつけて帰ってね」
父(康平)は、汐梨の運転の為だけに5時間もかけてM県まで車を走らせ、トンボ帰りするのだ。
愛娘との別れを惜しみながら父は再び車を走らせたのだった。それを笑顔で見送る汐梨は父の車が見えなくなると、スマホを取り出した。
汐梨(…そろそろ神代くんに連絡しないと……あー なんかなぁ…気まずい…)
そう思いながら
汐梨は今朝のやり取りをジワジワ思い出し、耳を塞ぎながら蹲ってしまった。
神代泉雲のあま~い優しい声…
汐梨(ヤダーッ忘れろ わたしぃっっ!!)
アレは違う 絶対なにかの間違いだ!と全否定し頭をブンブン振ってると
「…なに やってんの?」
と頭上から声がした。
イヤな予感はした…
「なあ 藤峰」
自分の名を呼んでいる。顔を見なくても解る。神代泉雲だ。
なのでスクッと立ち上がって
汐梨「…そろそろ連絡しようと 思ってたんですけど」
所在無さげに膝をパタパタとはたく汐梨。
泉雲「うん 父親の車が帰って行くの見てた」
汐梨「あ…そうですか」
泉雲「てか…なんでジャージなわけ?」
まず泉雲は汐梨の色気も素っ気もない格好に苦言を呈した。だが汐梨は
汐梨「…この方が動きやすいからです」
なんとなく顔を向けれない。
泉雲「?どゆコト」
聞いてくる泉雲に相変わらずそっぽを向いて応える。
汐梨「…神代くん なんにも聞こうとしなかったでしょ 私のおばあちゃん家の事とか 注意事項とか」
泉雲(…こいつ さっきからどこ向いてしゃべってんだよ)
泉雲「…注意事項? ってかさ そのばあさん家ってどこ? 人家なんてなーんも無いけど」
やはり聞く耳を持ってくれない。
泉雲と汐梨が今いる場所はほとんど鬱蒼とした深い山の前。そして目の前には立て札に見慣れない標識があるのだ。
立て札にはしっかりこう書いてある
山には入るな!自分を大事にしろ!と誰かが直筆で大きく書いてある。
そして立ってる標識が示すのは黄色のひし形に!マークの文字。
泉雲「ここ 禁足地…?」
汐梨(あ 禁足地のマーク知ってるんだ)
それならもう隠す必要はないと
汐梨「…おばあちゃん家はこの中にあるんです だから ムリについて来なくていいですよ」
泉雲「え? マジで?」
汐梨はこくりと頷いた。
汐梨「地元の人達は怖がって来ないそうです だから人は滅多に通らないと思いますよ」
確かに今居るのは汐梨と泉雲だけ。後はカラスの鳴き声と蝉の声と風が吹く音ぐらい
山の雰囲気はどんよりと不気味な感じさえする。
汐梨はそう言いながら
汐梨「今からですね この山に入っても 私は責任持てませんから 申し訳ないですけど助ける余裕もないですし お腹空いても自分でなんとかしてくださいね!わたしは 知りませんからっ」
泉雲(え? 本気か?…)
汐梨は泉雲にそう言い放ち、泉雲の足元に今朝作ったお弁当の入ったランチバックを置いて、術で式神を召喚し、自分の荷物を持たせて準備は万端。
そして鬱蒼とした山に躊躇する事なく まるで泉雲から逃げるように入っていった。
突然勝手に動き出した汐梨に気を取られて戸惑ったが、基本負けず嫌いなので、
「あっ てめぇ 藤峰!待てよ オレも行くに決まってんだろ」
泉雲はそう言って禁足地の中に入り、汐梨の後を追おうとしたが、汐梨は既にもう居なかった。
木々で覆われた中は、道と呼ぶ物はほとんど無く、どの方向へ向かったのかすら解らない。
泉雲は本当に置いて行かれたのだ。あの藤峰汐梨に。
泉雲「え? うそだろ…」
ぽつんと置いてけぼりをくらった泉雲はプルプル震え、
「ふじみねーー!! オレを置いてくなー!!」
泉雲は思わず大声で叫んだが 汐梨には届かなかった。
泉雲「…なんだよ これ… 」
突然の状況に、1人とり残されてしまった泉雲は 汐梨に追いつき 無事この禁足地の中にある祖母の家へ辿り着く事が出来るのだろうか…
次回へ続く
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