異能者IZM 第23話ミイラ化変死事件編 ~はじめての共闘?麦野朱夏救出作戦~
23話
人の血肉を吸い尽くし、ミイラに変えてしまう 恐ろしい妖に攫われてしまった麦野朱夏は、潰れて廃墟になったとある病院の中に居たのだ。
その麦野朱夏が今 漸く目を覚ました。
意識を取り戻した麦野はギョッとしていたのだ。
麦野「…え? は? なに?? ど 何処ここ??」
驚く麦野の目に飛び込んできた光景は、薄暗く、床や壁は傷んでいて、所々壁紙が剥がれ落ち、雨漏りしてるのか湿ってカビ臭い、明らかに廃墟だったからだ。
麦野「ーる ルミぃー! みっ ミナあー!!どこにいるのー?」
麦野は別に拘束されてはいない。だから汚い地面にいつまでも寝っ転がっているのは嫌なので、全身をヤダヤダとはたきながら、とにかくこの薄気味悪い場所から逃げようと、見つけた近くの扉を開けようとガチャガチャノブを動かすが、開かない。
麦野「?? なっ なんで? 開けてよ! もおっ 」
麦野が焦って何度もドアノブをガチャガチャしてると、
「おっとぉ〜 起きちまったかぁー」
何処からともなく先ほどのバケモノが現れたのだった。
麦野「ひぃいいっ!?? ヤダヤダ!なにこれなにこれ!?」
怯えきっている麦野に近寄り、くんくんと臭いを嗅いで、そのバケモノはニタリと目を細め、嫌な笑みを貼り付ける。
妖「おめえ 生娘だなあ」
麦野「きゃぁあーーー!! なっなに バケモノ?? なんでしゃべって やっやめろよ!キモい!!」
妖「ひゃはははー いいぞいいぞもっとオイラを怖がれよ そいつは喰った時に堪らないスパイスになるんだべ」
麦野「くう?食うって…いっいやぁあー!! 」
麦野が恐怖で絶叫しても、ニタニタと愉しく笑うだけの妖。
麦野「!? なっ なに言ってんのコイツ?? はっははは… なーんちゃって ほ ほんとは なんかの撮影なんかじゃないの?」
麦野は今の現状を受け入れたくなくて、周りに誰かいないかと、スマホやカメラがないかとキョロキョロ探し、現実逃避したくて堪らないのだ。
そして気味が悪いバケモノから少しでも離れたくて…後退りするが、
一歩離れれば一歩近づかれるので、一定の距離を保たれてしまう。まるで揶揄われるように…嘲笑うように…
だから 恐怖で耐えられなくなり、麦野はダッと走って物陰に隠れたのだ。
麦野「あっ あんた いい加減にしろよな!
こっち来んな! 来んな!くんな!!」
(なになに? ほんとなんなの??このキモいバケモノなに??しゃべってるとかヤバいんだけど そんなの…ゲームの中の話じゃないの??)
虚勢を張るが、隠れた物陰ではガタガタと震えて縮こまっている。
だが…そんな抵抗も虚しく そこへ妖は楽しそうに笑いながらやってくるのだ。
妖「娘っ子 元気だべなぁ ええなあ 活きがよい生娘は〜」
麦野「!! いやぁあー!! 来ないでえー!! ? ーッゴホッ ゲホッ…」
麦野は…前回鬼に憑依された後遺症で、瘴気の毒素が溜まりやすくなっている。そして今目の前にいる妖の瘴気をモロに受けて、次第に息苦しくなってきたのだ。
麦野(うゔ…気分が 悪い…悪夢だわ…アタシ このキモいバケモノに喰われて… 死ぬの?…なんで?)
麦野の足は次第にガクガクと震え、上手く立ち上がれない。
恐怖と絶望感で、涙がボロボロと溢れてくる。
妖「ん なんだなんだ?さっきの威勢はどーしただ?なしてそんな弱ってる?オイラの瘴気がきついべか?オイラはお前を美味しく喰いたいんだぞ」
この気持ち悪いバケモノが自分を〝喰う”と言い放ってる…信じられない…これが 今 現実なのかと絶望する。
妖「…オメエは元々強い人間ではないんだな まあ人間なんてしょせんそんなもんだべ おめえがなしてオイラが〝視える”のかはどーでもいいべそれより鮮度が落ちるのが 問題なんだべな」
麦野「ゲホッ ゴホッ…はあ はあ しょ しょうき?…喉が 痛い 頭 …グラグラする」
妖「もういいべ ジュルルぅ〜」
そう言って妖は麦野が隠れた物陰までドスドスと近づき、己の長い管のようになった口をグルングルンと回しながらニタリと目玉を細めてひょっこり麦野を覗き込んだ。
麦野は既に瘴気が身体に周ったようで、弱り、倒れていた。
それを無慈悲に妖はガッと両手を掴み持ち上げ、
麦野の柔らかそうな腹に、管を刺そうとしたまさにその時、
「ーおい バケモノその辺にしとけよ」
誰もいないはずの廃墟の中で、見知らぬ声がしたのだ。
不審に思い、妖は声の方に振り返ったが、誰もいない。
すると
「フッ…どこ見てる ここだ」
妖は今度は上を向いた。するとそこにはむき出しになった柱に腰掛けた人影が…
ここは自分の領域…他の者に侵される訳はない。だが 確実に何者かに侵入されている。
薄暗く、逆光になっていて、あまり姿は見えないが、ただ…その目は緋く、まるで燃えているように光を放っていた。
妖「?誰だべ? よそモンか?」
(…おかしいべ…ここにはオイラが結界張ったはず 誰も入れねーのに …アニキの弟分か?)
「そんな事どーでもいいだろ」
妖「おっおめえ だっ 誰だべ!?」
「フッ…お前は田舎モンだな クク…」
妖「! なにをっ」
妖を揶揄いながら妖しく笑む侵入者は 先程式神のナビでここの居場所を探りあて、妖の結界をも破ったのだ。
そう この侵入者は、銀色の髪を靡かせて、ふわりと地上に舞い降りた神代泉雲だったのだ。
***
泉雲が麦野の元へやって来る数分前。
勢いよく走っていた式神の鼠がピタリと止まった。
そしてキョロキョロと辺りを見渡し、二本足で立って鼻をヒクヒクさせる。まるで 本物の鼠のような動きを見せている。
泉雲「… どうした? この辺なのか?」
泉雲に話しかけられ、式神は困ったような顔をして少し弱気に「チュウー…」と鳴くだけ。
泉雲「…迷ったんだな…」
式神「…チュウ…」
やはり主がポンコツなんだな…と どうしたもんかと考えてる所にその主が追いついて来たのである。
汐梨「はあっはあ…や やっと 追いつき ました…」
泉雲「…へえ マジ 追ってきたんだ」
汐梨「…はあっ はー で ですよっ」
汐梨は息を整えながら応える。
泉雲「…いや お前 どーやってオレのスピードについて来た?」
汐梨「だ だから わたしには 私のやり方があると 言ったじゃないですか」
見ると汐梨の両足がぼうっと光っている。恐らく何か術をかけたんだろうと推測できた。
汐梨「待って って言ったのに… 」
泉雲「このオレに追いつくなんて なかなか根性あんじゃん」
汐梨「そっ それは どうも…」
泉雲「それはそうと どうやら見失ったみてーだぜ」
汐梨「え? み 見失った え?」
汐梨は足に術をかけ、広範囲に強大な結界を張った影響でだいぶ疲れているのだ。
ゼエゼエ肩で息している汐梨を見て、
泉雲「…お前 力を無駄に使いすぎじゃね?そんなんで保つのかよ」
汐梨「わっ わたし 普段は自分の力なんて使わないので その 使い方は よく 解らない んです…」
泉雲(…そーいやこいつ 妖が視たくないとか言って あのキモメガネいつもかけてるもんな…あのメガネは能力を無効化にできるんだろう 能力使う時はメガネ外してるし あの…緑の目も関係してるのか…)
汐梨が今も、素顔を晒す理由はそれである。
そんな汐梨は今も危機的状況に陥っているであろう、麦野の為に、己の能力を惜しまず使うのだ。
式神に更に術を送り込み、探知能力を高めていく。
傍から見てても解る、汐梨の特殊な強い力…
それをジッと見ていると汐梨が話し出した。
汐梨「…神代くんは…私が足手まといになると思ってるんですか?」
泉雲「…いや 思ってない」
汐梨「っじゃあ なんで〝ついて来るな”なんて言うんです?」
泉雲「……これはオレが請け負った〝仕事”だから」
今も緋く光る泉雲の瞳に見据えられた汐梨は
汐梨「…わかり ました…あのっ私の張った結界は30分が限界です…恐らく後20分もないと思います…新たに結界を張るのに半日は休まないといけないんです…それまでに麦野さんを助けてもらえますか?」
汐梨の張るの結界はとにかく強力で、その領域は何者も侵す事は出来ない。
ただ強力故に一度に何度も張る事が出来ない というのが欠点でもある。
汐梨がなぜそんな事を言って来るのか、ほんとは意味を理解できなかったが、ただ〝出来ない”と思われた事に泉雲は引っかかって少しムッとしたのだ。
だが…次の瞬間には不敵な笑みを作り、
泉雲「…お前 オレをなんだと思ってる? フン…20分ね そんないらねーよ10分で片付けてきてやるよ」
汐梨(かっ 神代くんが 笑ってる?…こ こわい…)
神代泉雲の表情は今まで無表情か怒っている所しかほとんど見た事がない汐梨は不敵に笑む泉雲を見て少し震えた。
泉雲「…お前は大人しくここで待ってな」
だから…泉雲にそう言われて汐梨は思わず素直に「はい」と答えた。
すると泉雲は前を向き、「ま 見てなって」と一言呟き式神に合図を送ってまた走り出したのだ。
…… そして 今
泉雲(奴の所まで辿り着くのにけっこーかかったからな…)
妖は突然の乱入者に驚きを隠せなかった。
だが…せっかくの〝気娘”というご馳走タイム…
それを邪魔されて穏やかではいられない。
妖「おっ おめえ〜人間か? そうかどっかに隠れてたんだべな…弱小生物の人間如きが オイラの大事な飯時を邪魔しやがって〜」
フーッフーッと荒い息を立てながら怒りを露わにしていく。
泉雲「ぶっちゃけ オレはそいつがどーなっても構わねぇんだけど そいつが喰われるとちょっと困った事になるんでな」
妖「なにをごちゃごちゃと!やかましいわっおめえから喰ってやる!」
妖はいったん麦野を地面に置いて、侵入者の泉雲にターゲットを変えて、飛びかかった。
妖は長い管を更に伸ばして泉雲に突き刺そうしたのだ。
が
泉雲はそれをヒラリと躱す。だが妖は素早く泉雲の足を掴んだのだ。
この妖はなかなか俊敏で、一発で仕留められそうもない。
泉雲「はっ とろそうに見えて なかなか身軽じゃねーか田舎モン」
妖「フーッフーッ!弱い人間風情が 生意気いうでねーか!ん?おめぇ なかなかめんこい顔してんでねーか」
ニタリと嫌な笑みを作る妖に泉雲はチッと舌打ちをし、掴まれた足を軸にして、グルンと回り、妖の顔めがけて蹴りを入れたのだ。
それに堪らず妖は泉雲の足を離し、よろけた。
妖「うっ グゥ…な なしてオイラに攻撃が?…」
泉雲「能力が使えるのはテメェらバケモンだけじゃねーんだ」
妖「ぐぬ…おめぇ法力僧か?」
泉雲「あ?いつの時代の話ししてんだよ オレの力はそんな生易しいモンじゃねーよ」
泉雲はそう言いながら、己の瞳を緋く燃やし、強力なエネルギーの塊を手に集中させ、放ったのだ。
だがそれを妖は飛んで攻撃を防いだのだった。
その衝撃音で、気を失っていた麦野が意識を取り戻した。
麦野(…え…なに? アタシ 生きて…るの?)
地鳴りがし、パラパラと上から瓦礫のカケラが降って来る。
麦野(え…なに? …地震?)
ボーッ…とした頭で薄目を開けると、誰かが化け物と闘っている姿が見えた 気がした。
2つの影は速くて目で追うのも難しいが、化け物は怒号をあげている。
妖「グォオオオーッ!!きっ貴様貴様きさまぁあー!!生意気な!喰ってやる喰ってやる喰ろうてやるわい!!」
泉雲「ハッ できるもんならやってみろよ」
麦野(! ひ 人の 声 だよね?)
さっきまで この世のモノとは思えない化け物に、自分は喰われる寸前であった。
だが 自分はどうやらまだ生きている。
信じられない事だが、誰かが助けに来てくれている…そう夢見心地で希望を持ったのだ。
そして麦野は声のする方にゆっくり目を動かした。
激しい戦闘を中断したようでその人物とバケモノは睨み合いをしている。
麦野の目に映ったのは、見た事がある白い いや銀色に輝く髪。だが その瞳は赤く光っていたのだ。
遠目でも美しく整った容姿が印象的で、麦野はその顔を知っていた。
麦野「…い 泉 む …くん?」
瞳の色は違う…だが麦野は今見ている状況は半分夢なんだと思っていたから…
非現実的な事柄の連続で、脳が麻痺していたのかもしれない…
だから麦野は自分に都合良く解釈していた。
麦野「あ…いず むくんが助けに来て くれ…た 」
そのまま麦野は安心したように目を閉じて気を失うように眠りについたのだった。
その間も、泉雲と妖による激しい闘いは、続いており、その妖は中々強いようで、泉雲は何ヶ所か手傷を負うが、その瞳は獰猛な肉食獣のようにギラリと光り、絶え間なく確実に妖にダメージを与えていく。
妖「ぐっ ギギギッ…オ オイラ こんな痛てぇ目に遭うのは はじめてだべ」
泉雲「ははっ なら光栄に思いな 冥土の土産に更なる苦痛をくれてやるよ」
妖「グォオオオーッ!腹立つだあー!!貴様は綺麗な顔だけ残して下は肉引き千切ってズタズタに切り刻んでやるだー!!」
怒りが頂点に達した妖が己の鋭い爪をジャキンッと更に伸ばして泉雲に襲いかかったのだ。
常人のスピードを遥かに超えて、熊のように太い腕を強力に振り下ろすが、泉雲は少し頬を切らせて上体を反らして逃れる。
泉雲(…やべえな こいつけっこう強い アイツとの約束の時間が迫ってきてるのに)
泉雲は予想以上に手こずっている。
妖は己の爪に付いた泉雲の血をペロリと舐めとりニタリと笑う。そして妖は得意げに口にするのだ。
妖「ヒャハハー!所詮人間 すばしっこいが ゆーっくり切り刻んでやるべ 我らが〝王”も言っとたしな しょせん貴様らなんぞ我らの家畜に過ぎぬ となあ」
泉雲「〝王” だと?お前らを支配する主でもいるのか?」
妖「ひひひ…オイラ達が どーやって現世にやって来たと思う?」
泉雲「〝オイラ達“? そんなにぞろぞろ現世に異界のバケモンが来れる訳ねーだろ」
妖「ギャハハ なーんも知らんのだな オイラ達には道がある まだ…今はほんの小さな通り道(穴)だがなそのおかげで300年ぶりにこっちに来れただ!」
泉雲「なに言ってんだ?てめえらの事情も考えも知ったこっちゃねーよ」
妖「なんも知らぬ愚かな弱小生物は昔のように滅びるがいいわ!!」
泉雲「今ここでてめえがくたばれ」
泉雲はそう言って、己の手にまた強力なエネルギー波を集中させ、猛スピードで向かって来る妖に、更に素早く妖の腹部をめがけてズドドドドッ!!と重い拳による連打を叩きつけるのだった。
流石にそれは効いたので、全身がプルプルと痙攣し、苦悶の表情を浮かべてそのままバタンと倒れたのだった。
妖「ゔ…ぐ あ゛ぁ゛…」
泉雲「ーったく しぶとい奴だな」
泉雲はそう言いながら倒れた妖の背中に飛び乗り、無慈悲に踏みつけたのだ。
泉雲「てめぇに聞きたい事があんだけど 前にも1人女喰ってるよな?ってかこっち来て何人喰った?」
泉雲が覗き込みながら妖に問いかける(尋問する)が、妖はグリリッと踏みつけられている苦痛が勝ってるからブルブル震えるだけで答えられない。
その態度にイラッとした泉雲が今度は無言で頭をグシャッと踏みつけたので
妖の顔は圧迫されて、地面にめり込んだ。
妖「! いっいでえっ いでえだ!」
泉雲「うっせ 早く答えろよ」
妖「……ご 5人…だ」
ミイラ化変死事件として現在までに判明している被害者は3人。
後の2人はまだ遺体が見つかってないという事になる。
どっちにしろそっちの捜査はカラスや警察がする事になるだろう。
泉雲「わかった それはもういい この女覚えてるか」
泉雲はそう言って、己のスマホを取り出し、今度は首をみしりと踏みつけながら妖に見えるようにスマホの画面を近づけた。
その画面に写る女性は、岡松の妹のますみの写真。
妖「いでえっ いでえー いちいち おっ 覚えてるはずねーぎゃっ!」
妖が痛みを訴えながら言うと、泉雲は無表情でガンガンと妖の頭をサッカーボールのように蹴るのだ。
泉雲「お前にとって人間の女は馳走だろがしかも300年ぶりなら覚えてねーわけねーよな?」
妖「悪かっただ… 知ってる…だ」
泉雲「はじめっから素直に言えよ雑魚が」
相手はバケモノだが泉雲は鬼だ 悪魔だ…
泉雲「この女は霊能者でもなんでもなかったハズだ なんで視えもしないこいつをお前が喰えたんだ?」
人間も妖も視えも触れもしなければ空気と同じなのである。そこに居ても無いモノと同じ…決して交わる事は叶わない。
だからこそ存在は公にされないし、妖も全てがこちら(現世)に来られる訳でもない。
だが 何故か今、妖による怪異事件が増えているのである。
それは鴉丸菊ノ助が懸念している事だが、正直泉雲にはどうでもよかった。
ただ泉雲は半分は己の仕事としての役割を果たしている。そして残りの半分は己の有り余る能力を遠慮なく使える相手が妖だから…
妖「……」
泉雲「あ? だんまりか?」
そう言いながら泉雲は容赦なくまたドカドカと蹴る。
なので妖は堪らず、
妖「グハッ ゲホ…ーそっそれはオイラも知らねーだ!〝喰える人間"はっあ アニキが用意してくれだ!」
泉雲「あ? 王だのアニキだの…てめえの上に何人いんだ?」
そんな泉雲の問い(尋問)に答えず、
妖「っ凶暴で 非道な貴様はばっバケモンじゃないかー!」
妖が大声で叫ぶと、泉雲は「もーいいわ」と無表情のまま妖の管をガシッと掴み、掴んだ手にエネルギー波を送り込む。
そして有無を言わさずそのまま勢いよく管を引き千切ったのだ。
妖はその壮絶な痛みに大きな悲鳴を上げて手足をばたつかせるのである。
ボタボタと血を垂れ流しながら
妖「ぶぎゃぁああー!!!びでえ!びでええ!!」
泉雲「口(管)無くなってもうっせーな 」
妖は涙を溜めながら泉雲を恨みがましく睨み
妖「ぶぉおえー ぶじえ゛ばお゛お゛びじん゛べん゛は゛あ゛!!」
※訳 おのれ虫けらごとき人間が
泉雲「ぁ゛あ?なにほざいてっかわかんねーよ あーだりぃ…てめえの汚ねえ面にも飽きたわ」
泉雲はそう言いながらゆらりと身体を覆う大気を揺らして、体内のエネルギーを玉のように凝縮しだした。
すると妖はとてつもない泉雲のパワーを感じ取り、思いっきり怯えているが、泉雲は更にエネルギー玉の能力を高めて凝縮する。「びいい゛ー!!ぎゃげお゛(やめろ)!!」と妖は最後の力を振り絞って
泉雲の拘束から逃れようと暴れるが、しょせん無駄な足掻き…
泉雲はその間己の右手にそのエネルギーの塊を1点に集中させて、更に手刀のように指先を伸ばし、鋭く固めて力を込めて、強大な重い一撃を妖の背に突き刺し貫いたのである。
それにより 妖は致命傷を負ったのだ。
生気を失った妖はビキビキッ…と身体にヒビが入り、ボロボロと砕けて霧散し、完全に消えたのである。
泉雲「あ…クソ 時間オーバーしてるじゃん」
泉雲はポケットからスマホを取り出し、時間を確認したところ、約束のタイムリミットがオーバーしていた事に少々悔しがったのだ。
ひと段落した泉雲が麦野朱夏が倒れていた場所に救出の為戻ったが、愕然とした。
泉雲「あ…れ? あの女が いない?」
どういう事だと頭を巡らせ「まさか 妖が自分の棲家に隠した?いや…そんな素振りはなかった…」一通り考えを巡らせた泉雲はハッとした。そしてキョロキョロと辺りを見渡す。
おかしい…ナビをしていた式神の鼠がいない…
そして何かを察した泉雲は口の端をつりあげたのである。
泉雲「ハッ…あいつ…コソコソと やってくれんじゃん 」
そう言って 泉雲は複雑な表情で、己の拳を強く握りしめたのだった。
かくして新宿華怒鬼町で起きた連続ミイラ化変死事件は、神代泉雲と藤峰汐梨によるはじめての共闘で、犯人である妖の死をもって幕を閉じたのである。
いつも異能者IZMをご閲覧いただきありがとうございます!また次回も投稿は未定ですので 投稿準備が整い次第活動報告でお知らせ致します。
何卒よろしくお願いします。