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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM 第2話  〜最初の出逢い〜

2話


真っ暗な闇の中、1人の幼い少女が机の椅子に座り肩を竦めていた。そして震えながら小さな声で


「えっぐ… ひっく… ち ちがうもん…っ」


何かを泣きながら訴える少女。

その言葉に周りを取り囲む顔の見えない少年少女たちが、


「やーいやーい ウソツキー」


「お前キモチ悪いんだよ 変な事ばっか言いやがって」


「目の色こわーい」クスクス


その中の1人が少女が座る椅子を蹴りはじめた。そしてバランスを崩した少女はバターンと倒れる。その様子を楽しそうに己の口角を歪めながら笑う者もいる。そんな者たちを弱々しくもありながら勇気を出し、己の小さな拳を握り締め、大きな瞳に涙を溜めながら


「ちっ ちがうもん! ウソじゃないもん いる もん」


(なんで…? なんで みんなには見えないの?)


そういう少女のすぐ背後では、その少女にしか視えない黒い大きな塊の化け物がいる。しかし少女にしか視えないので訴えても信じてもらえない。


「ウソツキー ウソツキー」


「なんで? ひっく… こわいよ なんで みんなには みえないのー!!」


その幼い少女が泣きながら叫ぶと、

少女は目を覚ました。その時目に飛び込んできたのは、見慣れたいつもの天井。どうやら夢から覚めたみたいだ。少女の目や頬には涙が残っている。それを己の手で拭い、

そのまま少女はゆっくり起き上がり、夢だったと分かってホッと胸を撫で下ろした。


「やだなー… やな夢見ちゃった…

今日入学式なのに…」


夢のせいで、過去の暗い経験を思い出し、朝から重い気分になる少女の名前は藤峰汐梨ふじみねしおり(15)

そんな少女の瞳は日本人には珍しいエメラルドグリーンに光り輝いていて人目を引く、日本人離れした愛らしい容姿をしているのだ。

しかし、そんな彼女は自分の顔が好きではない。特に日本人離れした、エメラルドに光り輝く己の瞳は。


だから長く伸ばした前髪で隠すのだ。制服に袖を通し、長い髪は一つに束ねて、机に置いてある眼鏡ケースに手を伸ばした。


近年の眼鏡と言えば、某有名芸能人がTVなどで使用し注目された事から、度のないメガネをわざとかけたりオシャレ目的でかける人が増えている。


だがしかし!

彼女がかけたメガネというモノは、顔のおおよそ半分を覆い隠し、度は入ってないにも関わらず、レンズは極太でなにより昔のガリ勉くんを彷彿とさせるような牛乳瓶の底のようなメガネなのである。


よってそれをかけると汐梨のエメラルドグリーンに輝く瞳は、キレイさっぱり隠されてしまうのだ。 

そんな彼女はニンマリと笑う。そして己を姿見鏡に映す。


そんな彼女の今の姿は制服は体に合ってない一回り大きめサイズでブカブカ 長い髪はなんの撚りもなく1つに束ねただけ。そして顔には例のメガネ。

よって愛らしい見た目からは遥かに遠のいたのだ。


(ちょっとメガネ大きいかな?ずれ落ちそう…)


「んー… まあでも これなら目立たない! きっと私高校生活は上手くいく!ありがとう おばあちゃん!」


どうやらそのアイテム(メガネ)は祖母からの贈り物らしい。


汐梨は部屋を出て、階段を降り下のリビングに入っていった。まだ朝の6時回ったばかりのリビングは静まり返り、まだ4月を迎えたばかりだったのでひんやりとした冷たい空気で覆われていた。慣れた様子でヒーターを着け、朝食の準備を始める。30分程するとリビングの扉が開き、まだ寝ぼけ眼のままで現れたのは父親であった。


「あ おはよう パパ」

「おはよー  しおー」


あいさつを交わそうとしたが、己の娘の姿に目を遣り、ギョッとした。そして



「なっなんだ!? お前その姿は??そっそのメガネ??」


いつも見慣れた愛らしい娘の姿形が完全に失われていたからだ。


「… …おばあちゃんからのプレゼントだよ」


父親の態度に不服そうに応える汐梨だが、愛らしい己の娘の変貌ぶりに開いた口が塞がらなくなったのだ。魚のようにパクパクと口を動かし固まる父。


「これかけるとね、視えなくなるんだって!」


だがしかし我が娘は(メガネで見えないが)嬉しそうに笑顔で応えるのでそれ以上何も言えなくなる弱気な父なのである。


「 …そ そのメガネかけると…怖い思いしなくて 済むのか?」


「おばあちゃんが作ったんだよ!それにサンプルで実験済みだから大丈夫!」


「…そ…そうか」


「…ママ 今度いつ帰ってくるの?」


「ん? たぶん 一ヶ月後かな」


「そっか」


そんな家族の会話を数話交わした後、汐梨は食事を終え、リビングから出ていくのである。取り残された父親は


(咲子さん(汐梨の母の名) 僕 汐梨になんて言ってあげればいいんだろう…ぐすん…早く帰ってきてよ…)


父親は嘆くしか無かったのだ。そんな父親をよそに、汐梨は身支度を済ませ、家を出る。それを父親は静かに見送った。


玄関のドアを開け、汐梨は固唾を飲んだ。そして何かを探るようにキョロキョロと辺りを見渡す。暫く様子を確認した後、汐梨は安心して胸を撫で下ろしたのだ。


なぜかと言うと この藤峰汐梨という少女は普通の人間が決して目にすることが無いモノを見るのだ。


それは俗に幽霊と言われるモノであったり妖と言われる異形なモノ。そんなモノを汐梨は見る事ができる特殊能力がある。それをある者は霊能力とも呼ぶ。


そしてそんなモノを見ないようにしてくれるのが、今かけているメガネなのだ。それには特殊な強いまじない(術)がかけられている。そのおかげで汐梨の霊力が抑えられて、視えなくなるらしい。


だから汐梨はご機嫌な様子で通学路を歩いていた。見上げると、満開の桜が咲き誇っている。空気をめいっぱい吸い込み花の香りを堪能する。


(はぁーいい匂い キレイだなぁ せっかく地元から離れた学校に通うんだから せめて 少しは喋れる人 できるといいな)


汐梨は、【ボッチ】なのである。己に備わるこの能力と瞳の色のせいで、幼少期からいじめられ、トラウマとなり、既に小学生からは人と関わる事を極力避けてきたのだ。よって不本意ながらボッチ歴が長い。

しかし、そんな汐梨はあまり口には出さないが、友だちと呼べる存在が欲しいのだった。


ずっと外では独りなので、慣れてはいるが、やはりまだまだ15才の多感な少女。友だちを作って囁かな学校生活を送りたいと思っているのだ。


しかしなにぶん家族は別として、ボッチに慣れてしまったため、今さらながら人とのコミニュケーション能力が更低い。

だから今も制服は体に合ってなくブカブカで、スカート丈は膝下約15cmとなっている。極め付けがこのメガネである。今時のJKとはずいぶんかけ離れているのだ。

そんな汐梨ががこれから通う高校は、家からバスと電車を使って1時間半(場合によっては2時間)もかかる距離にある大和仁王学園高等学校

勿論近場の合格圏内の高校はあったのだが、あえて地元から遠く離れた高校を選んだのだ。

色々とツッコミどころの多い彼女だが、家族は好きなようにさせようと、彼女の意志を尊重し、不幸な事に相談する友達がいない為このような結果になったのだ。

電車を乗り継ぎ、バスに乗り、学校近くまでたどり着くと、河道がありそこは桜並木の通り道となったいた。


「わぁ キレイ」


そよ風に吹かれて桜吹雪が舞う。汐梨はその風景に圧倒され立ち尽くす。

ふと、斜面に生い茂る草むらの中に何かを見つけた。


「あれ…?なんだろ」


気になって近くまで寄ってみる。


「あ…白い?銀色の毛」


春の木漏れ日にキラキラ光りながら揺れる何かの毛のようなもの。


(なんだろ にゃんこ?わんこかな?)


人は苦手ではあるが、動物は好きなので更に近くまで寄ってみる。

近くの階段を使い、少し傾斜になっている草むらに入り、バランスを取りながら近づいてゆく。

「あ…」

と思わず息を飲んだ。動物だと思って近づいたらそれは人間だったからだ。

人だと分かった汐梨はその場をすぐ離れようとしたが、動きを止めた。

その者は珍しい銀色の髪をしている。肌も 着ているシャツも白く、その姿から


「銀色の オオカミ 」


汐梨はその姿から思わずそう呟いた。

その時突然強い風がビュッと吹いて、ふらっとバランスを崩した汐梨が転けた。


「いった~ こ こわかった」


転けた弾みで汐梨の眼鏡が落ちたらしく、慌てて草むらの中を探す。

(もぉーおばあちゃん サイズ合ってないよ~)

とため息を吐きながら眼鏡を探そうとした時ふと目に入った。

まだ深い眠りに入っているであろうその者の手の甲に血がついているのだ。それにビクッと肩を震わせ、

(ちっちっ 血だぁあーーーっやだーーっ)


ガタガタ震えながらワタワタと慌てるが、(痛そう…)と思った汐梨が徐に己のポケットから1枚のハンカチを取り出す。一先ず眼鏡をさがすのを諦め、手当てにはいる。その時思うのは…


(何やってんだろ わたし…でも…こんなのほっておけないし あー!お願いっ 今だけっ今だけは 近寄ってこないで)


何かに心の中で必死に懇願する。


(…お 起きない よね?)


その者の右手をそっと取り、傷口にそっーと己のハンカチを巻いていく。その時ふと思う。自分は今あのメガネをかけていない…なのに …まだなにも視えていない…気配もあまり感じない…いつもならすぐなんか視えたりするんだけど…この辺りは何もいないのかな?川があるのに? 不思議に思いながら己の思考に意識を飛ばしていると、


「 おい 何してる ?」


耳に届いた言葉にハッと我に返った。恐れていた事が、相手が目を覚ましたのだった…汐梨は顔を上げられない…

どうしよとダラダラ冷や汗が流れる中、あさっての方向を向いた時に、探し物が目に飛び込んで来たのだ。

(あったー!メガネ!)


汐梨は1人安心するが、相手の人間は自分の問いかけを無視し、そっぽを向かれたまま。加え何者か分からない者に己の腕を触られている事に腹を立てたのだ。

そしてグイッと力を込めて腕を振り払おうとするのと同時に相手が手を離したものだから、勢いで己の拳は宙を舞い、そのまま近くにあった小さな岩に拳を打ち付けた。その痛みに声を殺し悶絶する。


一方汐梨は落とした眼鏡を拾い、それを再びかけて、一人安堵していた。そんな汐梨に向かって打ち付けた拳を摩って痛みを緩和させた相手がもう一度、


「 ーてめえ 誰なんだ 」


そのドスの効いた声にビクリと肩が震え、恐る恐る振り向いた。するとそこには上体を起き上がらせ、こっちを睨む少年が、その少年の瞳は蒼く、日本人には珍しい色をしていて、細身で眩いばかりの美少年である。

その姿に


(うわぁ…私みたいに珍しい目をしている…でも 銀色のオオカミみたいなキレイな人…)


と汐梨がボーっと時を奪われている頃、相手は世にも奇妙なメガネ姿の女子にある意味目を奪われた。


「 … ヘンな メガネ 」


とドン引きしながらの一言。やはり誰が見ても眼鏡のインパクトは相当らしい。


(うわぁ なんだコイツ? 関わりたくねえ)


心の中でそう思った。

その場で一時、両者はフリーズし時が止まる。そしてその空気を壊したのが


「だから お前 何者だ? ていうか あっちいけよ」


訝るように睨んでくる少年に少し怯え、


「ああああ のっ!~~ごっごめ なさいっっ てっ てを手をぉ怪我してらっしゃいましたからっ」


吃る汐梨がオーバーリアクション気味にあたふた説明する。

汐梨が家の外に出て、吃りながらも初めて声を発した。

そして頭を思いっきり下げる。


「 ーは? ケガ ?」


そう言われ、少年がハンカチを巻かれた己の腕に視線を落とすと、汐梨は今だ!と言わんばかりに

頭を下げ 


「もっ申し訳ございません! シツレイシマス!」


ともう一度頭を下げてくるりと踵を返し、足元が悪いにも関わらず、今度はダッシュで走り去った。逃げた とも言うが…


(あーん!余計なことしたぁー知っ知らない人と!しかも男の人!怖かったよォおおーー)


その状況にあっけに取られてボーゼンとするのは神代泉雲である。


「…なんだ? …ヘンな やつ 」


泉雲は大きなつり目でじとっと見遣り、1つ息を吐いた。もしかしたら新手のストーカーか?と少し身震いし、己の手の甲に巻かれたハンカチを汚い物でも触るかのように払い落としてた。


「なんだよ  さっきの女… 化け物の血が付いてるだけで俺はケガなんかー」


ブチブチ文句を言いながら先程始末した物の怪の血を見ていた泉雲の動きが止まった。


「…は? なんで コレが見えたんだ? 普通の人間には見えるはずねぇじゃねーか」


そう言いながら泉雲は先程の少女が走り去った行方を目で追う。


「…ストーカーじゃねえのか?なんださっきのメガネ女は… 何モンだ?」



己の額に手を当て、少し考えてみる。しかしわかる筈もなく、めんどくさくなったので


「あーどーでもいいや どうせもう会う事もねえだろーし、関わりたくもねー」


そう言いながら再び寝っ転がって、先程のハンカチを片手で持って空を仰ぐ。春の風にユラユラ揺れるそれを見て、泉雲はそのまま己のズボンのポケットの中に押し込んだ。そして春の陽気に誘われて再び眠りに落ちたのであった。

これが泉雲と汐梨の最初の出会いであった。




第2話を読んでくださりありがとうございました!

初投稿でミスを犯し 第2話が消えてしまったみたいなので再投稿させていただきました。申し訳ありません… 今回エピソード登録もできてるか不安しかりませんが… 「面白かった」「続きが読みたい」と思ってくださった読者様 下の☆☆☆☆☆から評価いただければ嬉しいです。

またブックマークいただければ大変嬉しいです!

何卒これからよろしくお願いいたします。

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