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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM 第11話 〜小さな火種は燃え盛る〜

第11話



神代泉雲は 自分以外の珍しい瞳を持つ藤峰汐梨に驚いていたが、怯え切っている汐梨に流石に ちょっとだけ悪い事をしたかな と思い、汐梨の顔まで己の手を差し出しもう一度


「…ほらよ」


汐梨は覆っていた己の手を恐る恐る退けて、泉雲の差し出された手の中を見てみた。

そして ゆっくりその手の中にあった小柴さんの消しゴムを受け取ったのだ。

今度はすんなり取らせてくれた。


そしてチラリと泉雲を見ると、ちょっと申し訳なさそうな 不貞腐れているような顔をしているのが見えたので


(…神代くんのこんな顔…はじめてみた…

ほんと…翔太みたい)


そう思えると、少しだけ笑みが溢れたのだ。


2人が黙ったまま暫く座り込んでいると、漸く外から菊ノ助が戻ってきた。


「いやーこのメガネ凄いね!なーんにも視えないし感じなー おや?2人とも 何してんの?」


菊ノ助にそう問われて少し焦った泉雲が立ち上がって


「な なんでもねーよ」


そして汐梨もアセアセとスカートをはたきながら立ち上がる。

そして2人のなんとも居た堪れない姿を目にした菊ノ助はニヤニヤと口元を歪めるが、


「かっ 鴉丸さん めっ メガネを返してくださいっ」


「ーっあ ごめんねーついつい楽しくなっちゃって」


そう言って汐梨は菊ノ助に駆け寄り、メガネを返してもらって、目的の消しゴムも取り返せたので、


「きょ…今日は あ りがとうございました わ わたしは これで 失礼します」


とペコリと頭を下げた。


「え? 不思議ちゃんもお帰っちゃうの?」


「はい 約束の物は返してもらえたので 後私 夕飯作らないといけませんので」


「え? 不思議ちゃんとこお母さんいないの?」


「いえ…今 出張に行ってまして」


「えー?出張? お母さんってバリキャリなんだー♪ えー大変だねー不思議ちゃん料理できんだねー 一度でいーからぼく食べてみたいなー♡」


「え? いや…大した物は作れ…ませんのでっ」


そう言いながらそろりそろりと出口に向かい、出て行こうとする汐梨に気づいた菊ノ助が、素早く己の後ろの首に手を回す。

そして


「えーそうなんだーあっ不思議ちゃん背中 なんか汚れてるよ? 僕が払ってあげるね〜これはセクハラじゃないからねー」


「え?ほんと ですかっ」


そう言って菊ノ助は汐梨の背中に自分の手を回し、ポンポンと軽く払ってあげた。

そんな菊ノ助に汐梨は素直にお礼を言い、もう一度頭を下げ、そのまま店を出て行ったのだ。

そんな汐梨に笑顔で手を振り見送る菊ノ助が


「ーで  …何があった?」


「……」


泉雲はカウンターに腰掛けて無言を貫いている。


「… いやらしいな」


「! なんもねー!」


「なーに? またムキになってぇー あの子が絡むと泉雲くんは感情的になるのかな?」


ニヤニヤといやな笑みを浮かべながら調子に乗って揶揄う菊ノ助だが、泉雲の瞳が赤く光っており、本気でキレかけていると悟って素直に謝った。


暫くして泉雲の怒りがおさまったのか


「カラス さっきアイツになんかしたろ」


「あははー気づいた?」


「あたり前だ」


「〝GPS″をちょっとね」


「…お前 バレたら訴えられて捕まるぞ」


「だーいじょーぶだってぇ どうせ 〝普通の人間″には視えないんだから〜」


そう言う菊ノ助をジト目で見遣り、ため息が溢れた。



そしてその頃汐梨は電車に乗っていた。


(…見られた見られた見られたー!)エンドレス


相当ショックを受けていたようで、過去のトラウマがずっと頭をフラッシュバックする。


(わたし…また昔みたいにイジメられるかも 今の学校は誰も私に関心持たないし それは寂しいけどでも 平穏に学校生活過ごせるから…それをよりによってあんな…キラキラした人気者の神代くんに見られたなんて…)


もー言いふらされると悪い先入観しか働かないのだ。


ラッシュの時間帯が終わった人がまばらな揺れる電車の座席で、汐梨の頭の中もぐわんぐわん揺れていた。

その汐梨の背中でもカサカサと揺れる白い紙。


それは実は菊ノ助が仕掛けたモノ。


いわゆる〝式神″である。 汐梨は今は自分の事でいっぱいいっぱいなので全く気づかないのである。メガネをかけている影響もあるが、


それどころじゃない心情も手伝って、電車の中で人目があるにも関わらず頭を抱えてうんうん唸るのであった。


それに周りに人々は少し気味悪がり、我関せずを決め込むのである。



また所変わってこちらルーズカフェでは


「ちょっ いずむいずむっ不思議ちゃん またー乗り継いだみたい  え? まだ家着かないの?それともどっか行くのかな?」  


店で出された酒を呑みながらカウンターに座る泉雲に少し興奮気味になる菊ノ助。


「…お前 まだリンク追ってたのかよ」


「だって あの子 興味あるじゃん?」


菊ノ助にそう言われてふと先程の汐梨の緑色の瞳を思い出す泉雲。

奇妙なメガネと長い前髪で隠した小さな顔。そして美しくエメラルドグリーンに煌めく瞳。そんな予想もしなかった汐梨の素顔に困惑もしていた。


(あの目は…オレと同じで不思議な色をしていた アイツの能力と 何か関係があるのか?)


泉雲が珍しく考え込んでいると


「おーい泉雲くんってばっ」


その声にビクリと反応すると、菊ノ助がいつの間にか顔を覗き込んでいたので、それにギョッとして思わず仰け反った。


「…なになにー?僕がここまで接近しても気づかないって なーに真剣に考え込んでたのー?」


「…だから なんでもねーよ」


「フーン…」


「…で アイツ 今どの辺なんだ?」


「アレ?あれあれあれ〜 やっぱ興味あるんだ☆」


「あーうぜえっ ねえーよ!」


ニヤリ「今はー〇〇区らへんだよー」


「…」 むかつく


(…学校からえらい離れてるじゃねーか どこまで行く気だ?)


気を取り直して菊ノ助は己の霊力を使い、式神の気配を追う。


「このままいくと だいぶ都心だねー いやー遠い所から通ってんだねー」




およそ2時間後、汐梨は漸く地元まで帰ってきていた。


(…とりあえず あの防衛省とかの鴉丸さんともこれ以上近寄らないようにしないと おばあちゃんに相談した方がいいかな…)


ぶつぶつと考えながらトボトボと歩き、自宅前に着いたのだ。

そして玄関のドアを開けて中に入ろうとした時背中にバチっとした小さな衝撃が走った。

それに驚いて後ろを向いたが何もなかったので不審には思ったが、気のせいかなと思ってそのまま中に入っていったのだった。


汐梨の家に張られている強大な結界の影響で菊ノ助が仕掛けた式神は見事バラバラに砕かれてそのまま消えたのだ。

それと同時に菊ノ助とのリンクも切れてしまった。


「あ…式神が…消えた…?気づかれたか?」


「え?そうなのか」


ルーズカフェの2人が異変に気づいた同時刻




遠く離れたある地方の大きな屋敷の中で


「おやまあ 汐梨ぃあかんなー悪い虫つけてぇ」


一人の初老がそう呟き、怪しく笑んでいた。



そして再びルーズカフェでは


「〇〇区で消えたねー んー 僕の霊力の精度では町内が分からないのが難点だねーせめて呼び戻せていたら」


※式神はそれを使う術者の能力に比例し、精度が変わるのです。

このやり方は現実では違法になりますが(発信機をつけられた事と同じ)霊能力は合法というか、規制する法律がないのでセーフなのです。


「…お前 家まで特定する気だったのかよ さすがにキモいぞ…」


「相手女の子だしねーダメだよねー」


「お前仮にも防衛省の人間だろ 法に触れたらアウトだ」


「ですよねー」あはははー


などと、汐梨は危うく自分の住む家を特定されそうになっていた事を知る由もなく、家族の為にせっせと料理を作り、学校の宿題と課題を済ませていた。

その横には本日やっとの思いで取り戻した小柴さんの消しゴムを再びラッピングして置いている。それを見つめながらため息が溢れた。


(明日…学校行くの嫌だな…私の目を見た時の神代くんのあの驚いた顔が忘れられない…)


『何その目?きもちわる』


そんな言葉を言われた訳でもないのに、どうしてもマイナスに考えてしまう汐梨は泉雲の勝手な想像をしてしまう。


昔からのコンプレックスというよりはトラウマでそれに怯えて疑心暗鬼に陥るのだ。


だがそれもあながち的が外れている訳でもなかった。

なぜかと言えば


別の小さな火種が勢いを増し、

それが現在進行形となって赤々と燃え広がり、やがて大きな炎となって汐梨の身に降り注ぐ事になるからである。


汐梨は神代泉雲の事が気がかりで、不安で眠れぬ夜を過ごしていた。


そして次の日である。

重い重い足取りで汐梨は、学校へ向かった。


ただそこに待ち構えていたのは、予想だにしない意外な人物であった。


いつものように 誰よりも早く登校し、誰に言われる訳でもなく教室に置かれた花瓶の水を替え、黒板の消し残しを綺麗に拭き取った後自分の席に着いて本を読む。


これがだいたいのルーティンなのだが…


それが今日は何一つ出来ず己の席でたじろいでいる。


なぜかといえば…汐梨が教室に着いて鞄を置くやいなや、前原真太郎と日下部秀雅が教室に入って来て、すぐ汐梨の前の席に真太郎が座り、そのすぐ隣の席を秀雅が確保して真太郎がにっこりと微笑んできたからだ。


真「ねー藤峰さあーん昨日の放課後さあどこ行ってたの?」


手にスマホを持ち、ポチポチ操作しながら汐梨にそう問いかける。


「…??」


もちろん汐梨にはそんな事聞いてくる真太郎の真意が…意味が判らない。

解る事といえば、この前原真太郎という男はクラスの中でも人気者で、キラキラ組(カースト上位)である事。そんな彼に話しかけられる意味が全く解らないのである。


真「あれ? 聞こえてなーい?」


秀「…真ちゃん相手 困ってるみたいだよ」


真「え? なんで?」


(昨日は…神代くんで…今日は前原くんと日下部くん?? なんで…私なんかに?? 喋った事なんてないのに…というか クラスの人すら神代くん以外マトモに喋った事ありませんけどーー!??)


悲しい事実を心の中で絶叫する汐梨…


(いや…だっだれかっっパ…パパ!おばあちゃん!!)


こんな時、心の中でも肉親にしか助けを求められない汐梨。


汐梨が半分パニックになり、心の中で大絶叫してる現在、


真「ちょっと!地味峰さん!聞いてる?」


真太郎はイラっとして思わず陰で呼んでるあだ名で呼んでしまったが、汐梨はパニくっていたので、声に反応して思わずハイ!と返事してしまう。


秀(…地味峰さんでいいのかよ)


汐「あの…な なんで…しょうか?」


真「なんでしょうか?(イラ)だからさー昨日の放課後どこ行ってたの?」


昨日に引き続き質問攻めにばかりあう汐梨はタジタジしながら


汐「…ほ 放課  後…? 」ハッ!


昨日の放課後は神代泉雲に小柴さんの消しゴムを人質に捕られて、連行され、鴉丸菊ノ助という防衛省の人間が経営する喫茶店ルーズカフェに行って仲間にならないかと勧誘されたが…

既に情報過多


そんな事言えるはずもないので


汐「…い 家に…帰りました」


真「ウッソだあ 昨日神代くんとカフェ行ったでしょ!」


汐「!?」


(し   知られてる??)


真「ねえ 2人でなにしてたの? もしかして デートとか?」


汐「… でー   と…   ?」


友達もいない、もちろん〝彼氏″と呼ばれる存在なんて今までいた事もない汐梨にでも、〝デート″の意味ぐらいは解る。解るだけ。


汐「まっ まさかっ とんでもないですっないですっ」


真「じゃーなんであんな所にお茶しに行くのお?しかも2人っきりでさー」


汐「… お茶?」


汐梨は店内でお茶をゆっくり飲んでいた訳ではないので何も言えない。

正確には質問攻めにあっていただけ。


それは今もそう


それをなんて説明したらいいのか分からない汐梨はただただ状況が飲み込めない中、冷や汗を流す事しかできないのだ。


そんな要領を得ない汐梨にイライラヤキモキするのは真太郎


(なんだ?この女? ほんとイライラさせる スマホの中(クラスのグループluin)ではあんたの事で大炎上してるってのに 知らないのか? )


真「あれ? そーいえば藤峰さんてぇスマホは?」


汐「…も  持って  ません…」


(チェッ 持ってないのか…そーいやこいつのアイコンって見たことなかったっけ  じゃあ知らなくて当然か…つまーんなーいのー)


興味を無くした様子の真太郎を見て秀雅が


秀「もーいいんじゃないの? らち明ないじゃん」


秀雅にそう言われ、望んだ反応も得られないし、つまらないと席を立とうとした時、教室に生徒が入って来た。


生徒A「おはよー え?シンタロ…そんな所でなにしてんの?日下部もいんじゃん」


真「おはよー別にぃ ちょっと藤峰さんと話してるだけだよー」


生徒A「あー…それって〝例のヤツ″…?」


意味深な事を言ってくるクラスメイトを不思議に思い、ただただ時が過ぎて予鈴が鳴るのをひたすら待つ汐梨だが、


その前には必ず続々クラスメイトが入ってくるのだ。当たり前だ。


生徒B「はよーっス あれ…なに?」


いつもは藤峰汐梨の座る席周りなどには人は寄りつかないのだが、今日は真太郎と秀雅が座ってる事もあり、〝例の件″もあって人が集まっているのだ。中には大きな声で感情的になる者も


女生徒A「ちょっとどーいうことなのか答えなよ!」


汐「あっ あの っ 」


女生徒B「ほらっ説明しろっての!」


クラスの中でも目立つタイプの派手目の女生徒2人に食って掛かられ、汐梨は怖くてどんどん萎縮してしまう。



それを傍観するだけの生徒も

余りにも珍しい光景に、周りがザワザワしだす。

そんな騒ぎの中神代泉雲が登校してきたのだ。


そして泉雲も光景にギョッとした。


いつもは教室の中では、いや中でも藤峰汐梨の周りはガランッとしていて静かなのに、人集りができていたからだ。


そして泉雲の登場に気づいた1人が


女生徒A「あっ かっ神代くん!ねぇ!ウソだよね?昨日藤峰さんと一緒にカフェにお茶しに行ったなんて?」


(なるほど 昨日付けてた奴らからの情報か )


そうすぐ察した泉雲が、汐梨を見るとクラスの女生徒に質問攻めにあっているようでオロオロとする様子が見てとれた。


(アイツは どーせマトモに釈明も説明もできないんだろな 滑稽だな 自分の能力のせいで あのキモいメガネも外せない せめてデザインどーにかしろよ センスゼロかよ)


泉雲がそんなような事を考えていると、汐梨が珍しく視線を合わせてきたのだ。


なんとかアイコンタクトのようなモノを送っているらしく、そして必死に頭をブンブン振っている。


(お願い!関係ないと一言みんなに言って! 私の平穏な高校生活をっどうか 守ってくださいっ )





どうやら助け舟を出して欲しい様子だ。

だが汐梨のそんな悲痛な願いは届かない。

泉雲は意地悪にたまには困れ と言わんばかりに


「だから なに? もしそうだとしてもお前らに関係なくね?」


サラッと爆弾発言を放ったのだった。


それは 滅多に喋らない泉雲が口にした事と肯定を示す発言だった為


教室内にピシャーン!!と衝撃が走る。


そして 当の汐梨は


(??な なんで 否定してくれないんですかーー!!??)


と心の中で大絶叫するしかない。


この状況を1人ほくそ笑むのは前原真太郎。


(わあ!これは 面白くなってきたぁあー♪)

パアッと瞳を輝かせた後黒く笑う。


真太郎にとって、退屈な日常に飽き飽きしてたところにちょうどいいネタが舞い込んできた形なので、

それを嬉々として見つけた小さな火種を故意に大きくし、燃え上がらせたのだ。 

また真太郎にとって嬉しい事に、当事者である神代泉雲がそこに自らガソリンをぶっ込んでくれたのだ。


前原真太郎は〝まつり″が好きなのである。

それも厄介な事に他人を巻き込んで大騒ぎする事が大好きなのだ。





そして…今回のこの火種で見事ターゲットにされてしまった藤峰汐梨の〝静かで穏やかな高校生活″はゆっくり音を立てて崩れ始めたのである。

























異能者IZM 第11話をご閲覧いただきありがとうございます! ここまでは順調に週一ペースを守ってこれましたが…恐れていた事態が この後12話までしか書き上がってません!申し訳ありません!ですので来週金曜日12話投稿後 次回からは隔週投稿となります…

亀筆なのでお許しください。

これからも何卒よろしくお願いします。

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