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異能者IZM  作者: てんせん
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異能者IZM 第10話 〜碧い瞳と緑色の瞳〜



第10話


ここは 神代泉雲と藤峰汐梨が通う大和仁王学園から程近い場所にある

喫茶店ルーズカフェ


現在その中には、泉雲と汐梨と菊ノ助の3人だけ。


この喫茶店の店長が放った一言で異様なまでに静まり返っていたのだ。


泉雲は離れた席で


(マジであのオッサンありえねぇー女子高生捕まえて何言ってんだ? ンなのP◯だろ!… てか 趣味悪いだろ!)


心の中でのみツッコミを入れるドン引きの衝撃。


汐梨は相変わらずそのまま固まったままでフリーズしていて、漸く動き出したところだ。


「わ…わたし…と 友だち…ですか?」


汐梨が恐る恐る聞き返すと菊ノ助は元々の細い目を更に糸のように細くし、にっこりと笑んで 「はい」と応えた。


そして汐梨はとりあえず想像してみた。


真剣に…



もし私と鴉丸さんが〝お友だち″になった場合


※ここからは汐梨の妄想劇場です。


〜朝の登校編〜


汐「おはようございます!鴉丸さん」


菊「おはよう 不思議ちゃん♪」


菊「あははは」汐「うふふふ」


〜放課後 下校編〜


菊「学校終わった? 一緒に帰りましょーか?」


汐「はい」


菊「あはははー」 汐「うふふふー」



以上…経験値がほぼゼロの為、この程度の妄想しかできない藤峰汐梨…


そして 


もし 小柴さんがお友だちになった場合


〜朝の登校編〜


小「おはよう 藤峰さん」


汐「おはよう 小柴さん!」


小「今日の数I課題できた?」


汐「うん できたけど 難しかったね」


小「そうだねーあっ 今日移動教室あるよー一緒に行こーね」


汐「うん! もちろん♪」


※現実問題汐梨は自宅から学校まで1時間30分は軽くかかるので、小柴さんと一緒に登校できる確率は極めて0%なのに、今テンション上げて妄想してるので気付いてません。



憧れの小柴さんとの夢の登下校(下校省略)を想い描き、菊ノ助とのお友だち妄想が消し飛んだので、汐梨は丁重にお断りを申し上げたのだった。


菊「えー残念だなー僕とお友だちになると とってもお得なのにー」


「…ですが 鴉丸さんとは年もだいぶ離れてますし…お  友だちと言われても…その…違和感が あるんです」


正直 秒で断れる提案なのに、それに対し5分もかけた汐梨である。


「あっ そっか 〝同級生″がいいんだね♡それなら ちょうどそこに同級生いるじゃん♪うちの泉雲くんなんか どう?」


「ヒィッ!!」


そう菊ノ助に提案されて、思わず悲鳴を上げてしまう。

それを聞いて気分を害し、カチンッと頭にクル泉雲


「ぁあ? ざけんな!こっちこそお断りだ!」


そう言って感情的になり、語気が強くなる。


菊「おーおー泉雲が感情的になるの 珍しくない? いいと思うんだけどなー」


汐「やっ やめて下さい!かっ 神代くん 迷惑がってるじゃないですかっ」


泉「…フン オレは誰ともツルむ気がないだけだ」


菊「ほらねー泉雲もあの通り お友だちほとんどいないんだよねーだから仲良くしてあげてね♡」


汐「いえっ かっ 神代くんは 学校でとっても人気があります…わたし…なんかと 全然 違います…から」


とことん自己評価が低い人間の汐梨は、自己肯定感が低い系女子。

だから 言わなくてもいい事がついポロッと出てしまう。そんな汐梨に泉雲が堪らず


「…お前 ウゼェ 見た目も中身もキモいんだな」


「こらっ泉雲 お前またっ 」


ビクッ 「…」


振り向くと泉雲が軽蔑の視線を送っていた。


「バケモンが視えるから なに?周りに解ってもらえないのが辛いって? ハッ…んなモンオレも経験済みだっての」


「…」


「自分の 持って生まれた力はお前が勝手に呪えばいい 視えねえ人間相手に理解してもらおうなんて 甘えんじゃねぇ」


そうズバッと言われ、ずっと我慢していた涙が とうとう溢れ出し 零れ落ちてしまった。 ポロポロポロポロとめどなく落ちる涙。


「うわっ こっ コラ!いずむっ お前 流石にダメだ!! なんでこう オブラートに包んで言えないんだ! お前わっっ」


「…フン」


(…く  くやしい  わ わかってる…誰にも 理解なんてしてもらえない事なんて ずっと…経験してきて身に染みてるもの)


グッと己の拳を握り締め、ふるふる震えながらポロポロ零れる涙を止められない。


「〜〜泉雲 お前 謝りなさい!」


菊ノ助が咎めると、泉雲は珍しくバツの悪そうな顔をし、


「…だから アレだ 視えない奴らには理解してもらえないが…視える奴なら理解してもらえる」


「…謝れと言ったのに お前は」


「フン オレは 間違った事なんて言ってねえ」


暫く涙が止まらなかった汐梨だが 泉雲の言った〝視える奴なら理解してもらえる″という言葉に少しだけ救われたような気がして自然と涙が止まったのだ。


(そう  か… そーだよね… うわぁ 恥ずかしいな! 人前でこんな泣いてしまってっ メガネがあって 良かった…)


俯いてばかりいた汐梨が漸く顔を上げたので、菊ノ助が慌ててティッシュを取り出して涙を拭くように促す。


「あーあー不思議ちゃん!ほんと ごめんねっっ これ使って ほらメガネも涙で濡れちゃってるよっ」


「あっ ありがと…ございま  す」


そう言いながらティッシュを受け取り、キョロキョロ辺りを見回す汐梨。

そして自力で洗面台の場所を示す看板を見つけて動き出した。


菊ノ助は突然動き出した汐梨に「?」となったが、〝変わった子″だと理解したので何も言わず見送る。


汐梨はその場所へ入っていき、備え付けの鏡の前に立ち息を整えていた。そしてメガネを外したのだ。

(ちょっと外すけど…迷惑 かけないかな? これ外すと妖達が寄ってくるから…)


すると普段押さえられていた霊力が解放される。それを能力が高い泉雲が感じ取り確信するのだ。 やっぱりあの時のアイツだと


「…アイツ 今 能力が解放した」


「え? 今? なんで?」


菊ノ助は一旦預かった消しゴムを泉雲に放り投げ返しながら驚く。そして泉雲は再び消しゴムを受け取り、ポケットに入れながら頭を振り応えた。


「わかんねぇ」


外で泉雲達がそんな会話をしている事を知らない汐梨は、鏡の前に普段メガネと長い前髪で隠しているエメラルドグリーンの美しい瞳を露わにして、借りたティッシュで涙を拭う。


(ほんと恥ずかしい…人前で泣いたのって何年振りだろ…強くなったつもりだったけど まだまだだわ…)


丁寧に己の涙を拭いて、涙の痕跡を消していく。そしてメガネを一度水に濡らして綺麗に拭き取り、気持ちもリセットしようと準備しながら汐梨は思った。


(アレ…?ここ なんだか家と一緒で妖の気配がしないんだけど?…)


そう不思議に思い、メガネをかけ直してお手洗いから出る。


(ん? また能力の気配が消えた?)


「あの…ここってもしかして結界か何か 張ってますか?」


「あっ よく解ったね そうだよ 結界張ってますよー」 


そう言いながら汐梨は泉雲の横を横切って、元の場所へ戻ろうとしたが、呼び止められた。


「おいお前 今中で何したんだ?」


「はい??」


突然声をかけられて、しかも見ると威圧的に睨んでくるので、せっかく止まった涙がまた出そうになる汐梨。


「? え? なにって…涙を 拭いてた…だけ です… 」


「はあ? それだけ? ハッ! お前そのキモいメガネ!それだろ それで能力消してんだろ」


とうとうバレてしまった。鋭い泉雲にこれ以上嘘をついても仕方ないと思った汐梨は ぎこちなくも、コクリと頷き、認めたのだ。

そして菊ノ助が興味を示した。


「えっ 不思議ちゃん そうなの?見せて見せて〜」


「あっ いや…でも これ外すと視えちゃうんでっ」


「だーいじょぶ大丈夫 ここの空間は結界張ってあるって言ったでしょ♪」


貸して♪と言ってくる菊ノ助を断れず、押しにはトコトン弱い汐梨は渋々初めて人前でメガネを自分の意思で外した。

外しても長い前髪で己のエメラルドグリーンの瞳が見えないようにはなってはいるが、拗らせすぎて慎重にならざる得ないのである。


すると再び能力が解放された。


オドオドする汐梨を見て


「…前髪 長すぎない? 思ってたんだけどー不思議ちゃんって顔小っちゃいよねーお肌もツルツルだよー♪このメガネでだいぶ損してるよー」


ただでさえ絶対外したくない鉄壁のフィールドであるメガネを外す羽目になって、人の目を直接感じる状態になり、超コミュ障の汐梨は


「!! やめてくださいっ 」


お礼の言葉どころか否定の言葉しか出ない。

褒められた言葉であっても素直に受け取れず、心底嬉しくないのである。


菊ノ助は(褒めたつもりなんだけどなー)と苦笑いし、そのまま笑って誤魔化した。

だが そんな菊ノ助の感想に興味を持ったのか、泉雲がコッソリ近づく。

そして菊ノ助は話題を変えるように


「へぇー 自分の能力を抑えるメガネかー凄いね!こんなの作っちゃうなんて 誰が作ったの?」


「…」


(あれま それは教えてくれないんだー)


「これ かけると妖 視えなくなるんだよね?」


「…ハイ」


「えーそれはおもしろそー♪ ちょっと試してくるねー♪」


興味津々の菊ノ助はそう言って、楽しそうに汐梨のメガネをかけて外に出てしまった。

あまりにも行動力がありすぎて、汐梨は反応が遅れてしまい、「しまった」と思ったが

時すでに遅し メガネを人質に取られてしまったのだった。

そして顔面蒼白になる汐梨。


(わっ わたし それがないと…外に出られないんですけどー!!)


大声を出せない汐梨は、心の中で絶叫するしかなかった。


そして汐梨の災難は続く。


「おい」


突然の声に振り向くと、すぐ後ろに神代泉雲が立っていたのだ。

それに驚いて反射的に仰け反り動けなくなる汐梨。

そんな汐梨を今度はマジマジと見てくる泉雲。

何事か?と汐梨の背中に冷や汗が流れる。


(近づくと…コイツの能力がまた鮮明になる やっぱ強いな…霊力…か? 少し違う感じもある…確かに… 顔が小さくて肌がツルツルー)

そこで泉雲はハッとする。


(ハア? オレ…なに考えてんだ?コイツのツラなんてどーでもいいだろ)


何故か眉間に皺を寄せてジロジロ睨んでくる泉雲に恐ろしさで思考がパンクしそーになる。

なんとか今の状況を抜け出したいとぐるぐる考えた汐梨が


「あっ あの けっ 消しゴムを返してくださいっ」


「は?」


「けっ 消しゴムを返してくれるって言うから私 ここまで来たんですっ」


「…あー そうだったな」


そうなのだ。今回藤峰汐梨が逃げずに、泉雲の言われるがまま大人しく着いて来たのは、

〝小柴さんの消しゴム″を返すという条件があったからだ。

しかし


「あ それ 今アイツが持ってるわ」


菊ノ助から返してもらってるのにも関わらず、泉雲はそう答えた。


「…あ  そういえば」


そんな事を知らない汐梨は、居た堪れない気持ちになりオロオロウロウロし出すのだ。

それを見ながら滑稽だな と思い己のポケットから小柴さんの消しゴムを取り出したのだ。

そして無言でそれを汐梨にこれ見よがしに見せびらかした後


「ほれ」


と一言。


それにまたびっくりして汐梨は


(なんで持ってるの? いや 持ってるのに持ってないとか言ったり…この人ほんと

なんなの??)


汐梨は怪訝に思うが、泉雲は己の手のひらに小柴さんの消しゴムを乗せて見せびらかしてくる。


やってる事はまるで小学生である。


だが理由はどうあれやっと小柴さんの消しゴムを返してもらえるんだと安心し、大切な小柴さんの消しゴムを前に、パアッと表情を輝かせてその消しゴムを取ろうとする。

だが泉雲は開いていた手を握って取れないようにしたのだ。

「?」と思った汐梨はそのまま動けなくなるが、暫くするとまた手を開いてくれたので、

今度は様子を見ながらそーっと手を伸ばし、取ろうとする汐梨。

が、 また既の所で泉雲が位置をズラすのである。 そんな事を数回繰り返しされるやり取りは


まるで  小学生である。


そして汐梨は汐梨でこの行動に、まるで自分の弟 翔太とそっくりだと思い、既視感を覚えて思わずムキになり


「もお! いい加減にしてよね!返して!」


まるで家での弟を相手にするように言ってしまった。

それにびっくりしたのは泉雲で、ずっと何故か同級生相手にも一貫して敬語を使う奴がはじめてタメ語で喋ったもんだから思わず固まった。

しかし汐梨の勢いは止まらない、何度も何度もおちょくられて頭にきていたから。


そのままの勢いで飛びかかり、泉雲は珍しく反応が遅れてしまった為、ぶつかってそのまま2人は倒れ込んでしまった。


「いったーい!」


泉雲は流石に無事だったが、汐梨は見るとどこかで額を打ちつけたようで、手で押さえて痛みを訴えていた。

それに自然と泉雲が手を差し伸べたのだ。


どんな時でも決して謝らない男神代泉雲。


「痛いって デコか?」


そう言いながら無遠慮に、わ汐梨の長い前髪に手をかけ額の具合を見ようとした泉雲は思わず息を呑んだ。

はじめて見た汐梨の瞳は日本人には決してあり得ない美しいエメラルドグリーンの煌めく瞳をしており、意外すぎて目が離せなかったのだ。


それに気づいた汐梨がこちらを向いた。


泉雲の吊り上がった美しい碧いスカイブルーの瞳と、汐梨の美しい緑のエメラルドグリーンの瞳がはじめて絡み合った瞬間であった。


「…お前…その 目…」


ハッ!(見られた!?)


バッと顔を背けて更に両手で覆う汐梨。

ずっと隠していた素顔を 自分の緑色の瞳をあろう事か神代泉雲に見られてしまい、ショックと驚きで その場に蹲ったのだった。


(緑色の…  瞳 オレみたいな変わった色の目したやつが いるなんて しかも藤峰…)


泉雲も余りの衝撃で言葉が出なくなったのだった。

























異能者IZM第10話を読んでくださりありがとうございました! とうとう10話まできてしまいました!

私は10話投稿できたら自分が書いてる小説の元となった泉雲や汐梨や登場人物たちを描いてるイラストを載せてるXを公開します とお伝えしてました。お約束通りXのID垢を載せますので、ご興味あればよかったら覗きに来てください。 IDはとりあえずプロフか報告の所に載せておきますね。

何卒これからもよろしくお願いします。

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