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異能者IZM  作者: てんせん
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第一話  〜人とは異なるモノたち〜

1話


その昔 人と物の怪と呼ばれる類いは共に同じ世界に住んでいたという。時には共に戦い、共存していた。だがしかし時代が進むにつれて、世は混沌の渦に巻き込まれていった。次第に、人間と物の怪を巻き込む醜い覇権争いや国取り合戦は激しくなっていった。裏切りと殺戮を繰り返す人間。そして迫害を受け、住処を追われる物の怪たち。やがて物の怪は人の住む世界から姿を消したのだ。元々人と物の怪とは相容れない者同士。物の怪とは寿命も長く、異形な、姿形をしている。時には人を拐かし、人を喰らうモノ。何より人とは異なる力を宿している畏怖なる存在。しかし人間はか弱く寿命も短い。ある事を境に、物の怪たちが姿を消した。そして、人間だけの世界になり、長い時をかけて新たな時代を築いていったのだ。そんな中、かつて同じ時を過ごした物の怪を知る者、視える者も、話せる者も 語る者も時の流れと共に少しずついなくなった。信じる者もいなくなっていった。

かつて人間と同じ世界にいた物の怪の存在は時代と共に完全に忘れ去られていったのだ。


しかし物の怪は決して死に絶えた訳ではなかった。人間の住む世界からは消えたが、住処をかえ 今も生きている。確かに存在するのだ。


ただ人々が視えなくなっただけ。存在を忘れただけなのだ。




そして時は巡りここは西暦20◯◯年の現代。



深夜のニュースが流れる。



「ーニュースをお伝えします。2日前の夕方、東京都〇〇区在住の帰宅途中だった高校生の田中洋子さん(16)が家に帰宅しておらず、その翌日、学校の方にも登校しておらず、現在行方不明となっています。家族の話では、母親のスマートフォンのLUIN(通話アプリ)に2日前の夕方3時半頃に「今から帰る」と連絡しておりましたが、その後帰宅がなく、現在に至るまで洋子さんと連絡が取れない状態が続いてるとの事です。洋子さんの家族は昨日付で警察に捜索願いを出しており、事故か、あるいは何かの事件に巻き込まれた可能性があるとみて、警察は付近の聞き込みと、防犯カメラの映像をたよりに、現在捜査を進めているもようです。次のニュースです。ー」


そんな ニュースがどこからともなく流れていた。



そしてここは

まだ肌寒い朧月夜が浮かぶ真夜中。とある廃ビルの路地裏である。


そこには、現代人が忘れ去ったであろうそれはいた。それは、闇の中大きな目だけが光りそれよりも大きな体を不気味に蠢めかせ、舌舐めずりしていた。それは人とは異なる異形なモノ。そんな異形なるモノは、月夜に紛れて大きな目でギョロリと辺りを見渡す。

静かに獲物を待ち構えるように。


そんな 路地裏近くの道を一人の少年がやってきた。


少年A「ちっ つまんねーな 腹も減ったし 金づるはいねーし 」


道端の小石を見つけ、力いっぱい蹴り飛ばした。金髪に髪を染めた明らかに素行の悪そうな外見をした少年が不機嫌そうな顔でつぶやく。その少年が誰もいない静かな廃ビルが立ち並ぶ道なりを歩いていく。そのすぐ後ろに異形なるモノ


「ひひひ…こりゃぁーいい 人の子じゃぁ 旨そうな臭いがプンプンしおる喰いてぇ…喰いてえなぁ…」


不気味な言葉を発しながらそれは少年の後ろをついていく。


決して人の目には映らない。ましてや声すら決して耳に届く事もないモノは、間違いなくそこにいるのだ。 少年は暫く歩いているが、ふと何かの気配を感じとる。


(…ん? 誰か…なんかいる? 犬か? 猫 ?)


人なのか動物なのか、何かは分からないが、「気配」を感じた少年は、ふいにくるりと振り返った。


決して人の世にはいないモノ。決して人の目には視えないモノ。


しかしそれは少年の目にハッキリと映ったのだ。おぼろ月夜の見える今宵。薄暗い月明かりに照らされ、闇のように黒い体に光る大きな目。その大きな手には鋭い大きな鈎爪。

少年は目を見開いた。一瞬己の身体を強ばらせたが、口を開いた。


少年A 「へ…? な なに こいつ??」


驚きはしてるが、少なからず恐怖は薄い。

そんな少年を見下し、ニタリと不気味に笑いながら少し首を傾げ、 


「んー? 人の子よ お前 このわしが視えるのかい?わしが引き寄せられたのは お前の力かい?」


得体の知れないモノに問いかけられ、少年は己の目を丸くした。


「しゃっ しゃべった… キモっ」

少し驚きながらも距離をとりながら、マジマジと見上げる。目の前にいるのは、人でも動物でもないモノ。だが現代人はある意味見慣れているのだ。それは TVだったりインターネットだったり 映画にアニメに漫画。探せばそこかしこにこの手のモノはでてくる。もちろん あくまでも「架空のモノ」フィクションではあるが、現在の撮影技術でホンモノ以上に恐ろしい姿形が描かれるているのだ。だからか、少年の口からは恐怖の声はなかった。


「ははっ なんだよぉ ここって今映画かなんかの撮影でもしてんの?? ってかさー こんなオバケ 黒いだけでちーっとも怖くなんかないんですけどー クオリティ低いっての」


そんな様子の少年に少し驚いた様子の異形のモノ。そして少年に


「お前 このワシが怖くないのか?」

「は?」


そんな問いに、ニセモノだと決めつけて、カメラがあるんじゃないかと辺りをキョロキョロ見渡す。どこかに有名な俳優でもいるんじゃないかと上着のポケットからスマホを取り出したが、少年は

「ちっ…こーんなB級の作り物出す映画だとろくな俳優使われてないかー せいぜい落ち目のアイドルか新人俳優ってとこかなー。だいたいさー季節ハズレだっつーの!ま 記念に撮っとくか」


そう言いながらスマホを片手に「パシャリ」


「後でtureter(SNS)にアップしよ♪」


チラリと異形なるモノを一瞥し、用は済んだとばかりに興味を無くし、クルリと踵を返した。そして そのまま歩きだそうとしたのだ。


だが その時だった。


突然後ろに大きな衝撃が走ったのだ。


ビリイィィーッ


それが自分のだと気づくのに時間がかかった。


(…え?)


一瞬 何が起こったのかわからなかったが、自分の腕にピリリとした痛みが走る。ふと痛みを感じた左腕を見ると、着ていたジャケットが破けて裂けている。そこから血が出ていた。

そして 少年ははじめて恐怖を感じたのだ。己の腕から血が滴り落ちる。思わず傷口を押さえて身体をこわばらせた。今まで感じた事がなかった戦慄が身体を突き抜ける。


「お前 うるさいよ」


それは地を這うような低い声。


「それにしても うひひ…人の子の血は 甘くてうんめぇなぁ…ありがてぇ お前は“喰える人間”だ」


鈎爪に付いた少年の血をペロリと舐めながら

嬉しそうに言う。

心の中がひんやりと冷たくなったような気がした。少年は震える身体を己の両腕で抱きしめ、生唾をゴクリと飲み込み、勇気を出して恐る恐る振り向いた。


(なに コレ… ホンモノ ?)


少年は己の脳内の活動が止まったかのように思えた。逃げたいのに足が動かない。声を出したいのに言葉が出ない。今 自分の目の前にいるバケモノを全力で否定したい。しかし、どんどん湧き出てくるような恐怖心に支配されて、自分の身体なのに動かす事ができない。そんな様子の少年にバケモノが嬉しそうにニタリと笑う。

「そうそう その顔 わしが 怖いか?人間よ。 わしは人間の その恐怖で歪む顔が最も好きなんじゃ。実に愉快 実に 旨そうじゃ」


少年の背中にヒヤリとした汗が伝う。

(なんだよ…コレ… 今 これは 現実なのか??

オレ…もしかして…この 気味わりぃバケモノに

く 喰われるの? ウソだろ…)




少年はあり得ない恐怖に襲われて、とうとう全身から力が抜けて、すとんと座り込んでしまった。恐ろしくてしかたないはずなのに、少年はその異形なモノから目をそらせないでいる。「助けて」と言いたいのに 声を失ってしまったかのように、言葉が出ない。そんな様子の少年に舌舐めずりしながら


「人の子の血 に 肉ぅ…」


大きな口からはヨダレが滴り落ちる。そして狂気の塊となったバケモノが、そう言いながら さらに大きな口を開け、鋭い牙だらけの口で勢いよく少年にかぶりつこうとしたのだ。

(ひっ!…)

自分は喰い殺される。心の中で悲鳴をあげながら

少年の見開いた瞳からは恐怖で溢れる涙が零れた。


その時だ。突然赤い閃光が目の前を走ったのは


少年は、あまりの眩しさで目をギュッと閉じた。

その時である。少年の顔面まで迫っていたバケモノは、大きな断末魔をあげた。


そして、その大きな体は、嘘のように霧散し、目の前から消えたのである。

だが少年は今から襲い来るであろう衝撃に激痛に恐怖し、固まっている。

しかし、

(え…? なに さっきの声 ? いき てる ?)

大きな叫び声と 何も起きない事を不思議に思い、恐る恐る目を開けた。

目を開けると、そこにはさっきまでいたはずのバケモノの姿はなかった。勇気を出してもう少し目を開けると、目の先に人影のようなモノ。今宵の朧月夜に照らされたその者の髪は銀色に光り輝き、その瞳は紅い炎のように光っていた。


「ひっ…!」


少年の声がやっと出た。だが思考が追いつかないでぐるぐる廻る。

(なっ なに?? 新しい バケモノ?? 人間??)

パニック状態の少年は区別がつかないでいる。しかし その場で座り込んでいる少年にその者は


「何やってんの? 早く立ちな」


その者は男であった。そして何もなかったかのようにぶっきらぼうに声をかけてきた。そして男の緋く光っていた瞳が、光りを失い消えた。

(え…? 見間違い?)

未だ混乱の渦にいる少年に、男が近づいてくる。そんな男に少年は少し怯える。

だがそんな少年にお構い無しの男は更に近づき、少年の顔に己の手を翳したのだ。

襲われる と思った少年は身体を強ばらせ、また己の目をギュッと閉じた。

すると、何故か少年はその時一瞬気を失ったような気がした。

そして少年が再び目を開けた時だった。


「…あれ…?オレ なんでこんなとこに座り込んでんの?」


何故か少年は今の状況を理解できないでいる。そして不思議な事に、先程の異形なるモノもその恐怖も忘れてしまっているようだった。

先程いた、男の姿もなかったのだが、少年は何故か忘れている。そんな少年は、何故自分が座り込んでいるのか、その事だけに疑問を感じながら、ふらふら立ち上がろうとする。

その時ふと痛みが走った。それは異形なるモノに引き裂かれた服と裂傷。左腕を見ると血が滲み出していた。ビックリした少年が


「え!?うっそ?? 何この破けた服!ってか いってえ!オレなんで怪我してんの??」


記憶がないからパニックになるしかない。

しかし、いくら考えても原因が解らない。喧嘩っぱやい自分の事だから誰かと喧嘩したか、思いっきり転けたんだろうか。頭の中が、「?」でいっぱいではあったが、悩むのをやめ、なんとなく気持ち悪いと感じたその場から足早に立ち去った。


少し離れた所で先程少年と遭遇した男が歩いていた。

その男は青年と呼ぶにはまだ幼く、細身で 髪は銀色、瞳の色は深い蒼い色をしており、肌は白く、おおよそ“純粋な日本人”からはかけ離れた美しい容姿をしている。

そんな男は軽くジャンプしたかと思うと、瞬く間にビルの屋上に飛び移ったのだった。


そう この男は超能力者である。

通常の人間にはできないことを実現できる特殊な能力をもつ者。

決して科学では説明できない超自然現象。


この男の名前は神代泉雲かみしろいずむ


この物語の主人公である。

泉雲は身軽にビルとビルの間を難なく飛び移り、少し行くと徐に飛び降りたのだ。

そこにはアパートが数件立ち並ぶ住宅街、その中の一軒のアパートの階段を登る。二階建ての小綺麗なアパートの1室に泉雲は入っていった。


電気をつけるとガランとしていて、家具といえばシングルベッドと大きめのソファーと小さなテーブル。そして隅にはパソコンデスク。

電化製品は冷蔵庫と電子レンジのみ。

生活感があまり感じられない。

まだ10代ではあるが(たぶん)


泉雲には家族がいないのだ。


泉雲の生い立ちは不明である。実は正確な年齢も分からない。

まだ乳飲み子だった頃に、施設に置き去りにされて、捨てられていた。ただ赤子の首にかけられていたペンダントの中に泉雲の本名と思われる名が印されていたのだ。しかし、それ以外は何も解らないのである。もちろん両親さえも、生きているのか、死んでいるのか、不明である。

そんな泉雲はいつものように流しの下に手を伸ばし、日本酒をとる。そして手慣れた様子でとっくりに手を伸ばした。


そう 泉雲はまだ恐らく 繰り返し念を押すが、10代ではあるが(たぶん)

酒を呑む。

※お酒は二十歳になってから。


そんな事彼には関係ない。特に日本酒を好んで呑むのだ。

ひと仕事を終えると必ず呑む。仕事がなくても呑む。それが泉雲のステータス。そしてひと口呑もうとしたところで泉雲のスマホが鳴った。煩わしそうに、ポケットからスマホを取り出し、

その画面を一瞥すると、無表情のままスマホの通話ボタンを切り、ソファーにほおり投げた。


そして泉雲は何もなかったかのように手に取ったとっくりを口に運ぶ。するとまたスマホが鳴りだす。しかし、泉雲はフル無視を決め込む。すると暫く鳴っていたスマホがピタリと鳴り止み、今度はPCのメールが連続で届く。その後またスマホが鳴る。泉雲はフル無視。その不毛ともいえる状況を繰り返す事30分。


漸く投げたスマホをソファーに取りに行く泉雲。そして数分じっと画面を見つめて 諦めたようにホームボタンを押した。その時 泉雲の眉間にシワがよる。そこには不在着信の履歴が数十件。その上 LUINの通知がズラーッときている。それは全て 同じ人物からであった。泉雲は深いため息を一つついて、ホームボタンを押そうとした。その時 またスマホが鳴ったので、

「チッ」

と舌打ちをし、漸く電話に出たのだ。


『もっしもーーし♪ 泉雲ちゃん?やっとでてくれたー♡ そんなに僕をいじめないでよぉおーー』


電話口で猫なで声を出す男。


「なんか用か ヘンタイ」

『ズッキーーン!ひどいっひどいよっ泉雲くんっっ だいたい君がいっつもすぐに電話にでてくれないからっ』


必死に訴える男。だが泉雲は

「切るぞ」

と冷たい。


『わー!まてまて 待ってよ!話があるから切らないでくれー!ほんと いつもいつも冷たいんだから お兄ちゃん泣くよ?』


その一言に、殺意が湧く泉雲。


「誰がお兄ちゃんだ 殺してほしいのか?」

『あははー 相変わらず 可愛くないね~』


ちょっと軽い感じのこの男は泉雲と親しいようだが、この男の説明はまた後にすることにしよう。


『さて…本題に入らせてもらってもいいかな?』


そんな男の言葉に

「やだね」


と一言。電話口の男はあははと渇いた笑いをもらし、コホンと咳払いを一つして、


『お前の編入先が決まったよ』

「行かねー」

とバッサリ。

『~まったお前はあー ダメだ!約束だ 』


泉雲のキッパリしたお断りにもめげずに返す。そして会話を続ける男。


『編入先は大和仁王学園だ。今回のガッコは私学だしぃ 校則もユルいしぃ♪ お前のその銀髪も 目の色も指摘されんだろ』

「そんなの知らん。学校なんか行かねーって」


そんな泉雲に対し、チョケてばかりいた男の口調が少し変わる。


『それはほんと ダメだ!高校はちゃんと卒業してもらうからな! 』

「…」


さっきとは打って変わって真面目な事を言う電話口の男。


『本当はな、入学式に間に合わせたかったけど、お前がいつまでもごねるからさー 』


「は? 誰がいつ 頼んだ?」


『あーまてまて ストップ! ーったく 話が進まないよぉ とにかく 編入手続きは今週までには済ませるからな。制服は来週までには届くと思う』


物事を勝手に決められ、苛立ちが増し、色々と思う事のある泉雲は、とっくりを口に運び、ぐびぐび呑んで更に抵抗する。


「勝手に決めんなよ オレは行きたくねーって言ってんだろ 」


イライラがこみ上げてきて、酒の力も借りてか、感情が昂ぶる。


『泉雲ちゃん? 誰がお前の面倒見てあげてる と思ってんの?」』


泉雲が一番言われたくない言葉。現に食事や 大好きな酒、住まいもこの男に提供されている。大人の狡さを目の当たりにし、泉雲は口ごもる。人とは異なる力を持ち、無敵のようではあるが、まだまだ未成年の泉雲には1人で生きる術を持っていない。ぐっと堪えて相手の用件を聞く体制に入る。そんな大人しくなった泉雲に対し、気を良くした男は、


『そーそー 子供は素直でなくっちゃね☆』


腹は立つが反論できない。早く一人で稼いで自立したいと思う泉雲である。そして男は話す。


『お前さー ガッコで友だち ちゃんと作れよ?』


この一言にまたイラっとし、


「余計なお世話」


と一言。そんな泉雲に、はぁーと大きなため息を吐いて、男は更に


『さっきの少年さ、怪我はしゃーないにしても、スマホで物の怪撮ってたろ? あれ ちゃんと後始末した? 』


イライラが増す泉雲。


「やっぱ どっかで見てやがったか ヘンタイ

どーせ 映らねーよ」


『そうとは限らんだろー現にあの少年には視えちゃって もーちょっとで喰われるところだったんだから』


「知らねーよ 無駄に“力を持ってた”んだろ?だから殺られそうになった。命助けてやったんだから問題ねーだろ。言われた通りに記憶も消した。だいいち あいつらが画像に残るかよ」


淡々と喋る泉雲に、


『でもな 泉雲 奴らの動きが最近おかしいだろ? 俺たち人間にとって奴らは脅威なんだ。普通の人間にはあいつら物の怪たちと戦う術がない。 だから慎重に 頼むぞ?』


「…めんどくせーな 弱い人間は」


皮肉とも取れる泉雲の一言。


『お前は特別なんだ』


男の一言に渇いた笑みを漏らす。

そんな泉雲を知ってか知らずか、男はまた茶化しながら


『んじゃ そゆコトで~♪ 今回もよろしく頼むな☆ それとな!泉雲 お前に一度しかない高校生活をエンジョイして欲しいってのも俺の本音だからな♪』


エンジョイ…しばらく聞かない言葉を聞いて やっぱこいつはオッさんだなと独りゴチり、もう反論は面倒だと思った泉雲が、


「…わかった ただし そこに行くのは6月からでいいよな それまではゆっくりニートさせてもらう」


『えー おま ニートて…6月て…中途半端な…』


しかし ここでまた口論すると、 やっと行く気になってくれた泉雲の気が変わるかもしれない。それは面倒なので、


『まぁ… ちゃんと行ってくれんなら いーかな。よし!分かった!お!そーだそーだ♪ こっちも店 移転させる手続きもあるしなー♪そのぐらいの方が都合いいかもな~♪』


「は? なに お前 こっち来る気?」


嫌な予感がする。


『あったり前だろー?俺はお前の保護者だぜ☆ 早速新しいスタッフの募集もかけないとな~♪』

「迷惑だ」


泉雲は言うが、男は聞きはしない。電話口で、忙しい忙しいと嬉しそうに言ってる声に、イライラが積ってきた泉雲は、ブチッと切れて、とうとう無言で通話を切った。また色々とめんどくさい事に巻き込まれる気がして、通話相手に殺意にも似た感情を抱きながら、ソファーに倒れ込むように横になり、ちらりと窓の方に目を遣る。もうすぐ桜が咲き誇る美しい季節がやって来る事を横目に見ながら、これからはじまるであろう新生活に、なんにも期待できない泉雲は


「めんどくさ」


と一言呟きそのまま眠りについたのであった。












異能者 IZMを最後まで読んでくださってありがとうございました!

「面白かった」

「続きが読みたい!」などなど思っていただけたらぜひ

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面白かったら星5つ つまらなかったら星1つ 正直に感じた気持ちで大丈夫です。


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何卒これからよろしくお願いいたします。



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