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失踪2

「一旦外に出るぞ」

 それが掛け声だったらしい。

 持ち場交代に後ろを向いたネザリア兵士。その背中をガレロ担ぎ上げ、ぽいと味方方面に投げてアナーキーとジャスミンは見事に巻き込まれた。

「あ、危なっ!? 何するんすか!」

 そんなアナーキーのことは全員が放置した。ジャスミンは機転が効くし動きも早くて、ガレロとの言葉のやり取りなしに自分のすべきことを分かっているみたいだ。流れるような動きで側のネザリア兵士に体術で勝っていた。

 ニューリアン一行が逃げるとなればネザリア兵士は果敢に飛びかかってくる。俺は特攻部隊じゃないから、時間をかけて勝敗を付ける方法はそんなに得意じゃない。

 それに、ここでネザリア兵士らを片付けている場合じゃない。

「こっちだ!」

 ガレロが叫んだ。戦いが苦しくなる前にガレロが突破口を導いてくれた。どこで手に入れたのか鉄のコートハンガーを両手に掴めば百人力だった。さすが槍使い。腹を突いてこそばすどころか次々に男兵士を押し倒していく。

「クロノス!」

「それ、やめろよ! 『おい!』とかで呼べよ、気持ち悪い!」

 階段に差し掛かると追っ手も減って少し話が出来たんだ。

「テレシア様は旧会館にいらっしゃる」

「なに? 居場所知ってたの!?」

「いや、勘だ」

「はあ!?」

 デカい図体で頭は空っぽか!? 階段を降りながらコートハンガーを振り回し、勘で外に出ようと俺を連れ出したってことなのか!?

「いやいや、待てよ」

 階段途中で足を止めさせた。その時振り返るとアナーキーとジャスミンが来ていないことに気付いた。ガレロも息を荒くしながら今気づいたらしい。

「何か作戦があるんだろ!? 実はリーデッヒと外で落ち合うとか、そういう動きじゃないのかよ!?」

 ガレロは、息をゼイゼイ言わせながらつぶらな瞳で見てくるだけだった。……って、それじゃ困る。

「旧会館ってどこにあんの?」

「ネザリア中心街の主要建造物だが……」

「そんな場所に誘拐してどうすんだよ!? どうせ勘なら港だろ!?」

 目をまん丸にするガレロ。その奥で「見つけたぞ!」と、ネザリア兵士と出会った。

 何でこんな状況になってしまったのか。

 喧嘩に乗るバカも大概だが、この大男ももっとバカじゃないか。コートハンガーをギュッと握りしめて「やー!」と突撃するのもやめてくれ。

 知らない間に平和ボケを喰らっていたみたいだ。考え無しの奴を天才と見間違えたり、槍使いを百人力だと思うところが症状だったのか。

 現に……槍の使い手が押し通そうと試みるその相手。下段の踊り場にてネザリア兵士は二人で現れてこっちに銃を構えていた。

 力押しと飛弾する鉄の玉だとどっちが早いと思う? 試しにガレロに聞いてみたら、またまん丸な目で俺を見つめてくるんだろうか。それも見てみたいと思うが。

「……!!」

 弾は二発撃った。俺の構える手の中からだ。ひとりは額に的中。もうひとりは無事でいて、しかし小銃を床に落としてしまってる。咄嗟だったが上手い場所を狙えたみたいだ、時間稼ぎができた。

 銃声に驚いたのか、ガレロの突撃はネザリア兵士まで到着せずに停止していた。槍バカに近未来の武器をかざしてやる暇はなく、俺が横をすり抜けて生きた方の兵士ところへ。そして銃口を突き付ける。

「テレシア女王の居場所だ。言えるだろ?」

「なっ……うっ……」

 恐怖しながらも落ちた小銃を拾おうとする。その右手を踏んで押さえつけたら、銃口もこっちにしよう。弾切れの心配もさせないように、目の前でカートリッジの中身を見せて入れ替えた。

「女王の居場所を言うだけだ」

 すぐに撃てると分かればネザリア兵士はぶるぶると震えている。留め具を触ってカチャリと音を立てたらネザリア兵士は急いで口を開いた。

「レ……レンジ港だ」

「港の船に乗ったのか?」

「ひいいっ!!」

 軽い質問をしただけなのに途端に怯えるか……たぶん違うことを言ったんだな。答えないより嘘をつく方が命拾い出来ると思ったのか。残念だ。

「いいか? 俺は優しいからな。最後のチャンスだぞ?」

 言いながら、この兵士が落とした銃を拾ってみる。それが新しい型の銃で感心した。こっちの国は、どっかの古屋敷に住んでいるような貧乏国と違って儲かっているらしい。

 銃口は二つ。

 ひとつは右手首。腱が切れたら使いもんにならない。

 もうひとつはこめかみに。自分で弾を込めた銃が突きつけられると本当に撃たれると確信し、より一層恐ろしいと分かったようで何より。

「み、岬にいる……レーベ海の岬に……。し、始末を目的に……」

「なるほど、そうか」

 俺は晴れやかな気持ちで笑顔にもなった。

 その心地のままでガレロのことを振り返った。階段の途中で何をじっと固まっているんだか。ぼんやりしてる時間なんかないんだぞ。

「おーい、聞いただろ? やっぱり海だ。早くしないと女王が殺されるぞー」

 なんて言いながらも、本当に殺されていたら俺が困る。どうしても女王の首だけは俺が必ずセルジオに持ち帰らなくちゃならない。

(((毎週[月火]の2話更新

(((次話は来週月曜日17時に投稿します


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