番外編短編・恵子の場合〜白衣の天使の独り言〜
恵子はとある病院で看護師をしていた。何度か疫病騒ぎもあり、過酷な労働に疲弊していた。アラサーの恵子は転職も考えてはいたが、医療業界以外でやっていけるか不安もあった。
「しかし、本当ウチの病院、老人と生活保護受給者が多いよね」
休憩時間、タバコを吸いながら愚痴が漏れる。恵子が勤める病院は、老人と生活保護受給者で経営が成り立っているような所があった。
ある意味、恵子もそんな弱者のおかげで生かされているといえよう。ネットで老人と生活保護受給者叩きを見ながら、なんとも微妙な気分。こんな病院がなくなるのが一番の節税になり、弱者の自立を促すかもしれないが、現状はそうではない。共依存的な関係。恵子も仕事に嫌気がさしているとはいえ、医療業界の安定性や給料に目がくらむ。転職サイトを見ていても、やる気が失せてきた。「弱者を食い物にする仕事」が一番安定性があるなんて。
その後、婚活パーティーも行ってみた。看護師というだけでモテるが、何か幻想を抱いている男も多い。
「え? 恵子さん、タバコ吸うんですか?」
喫煙について話しただけでも驚かれるぐらいだ。
「ええ。看護師は白衣の天使じゃないですから。気が強い人も多いです。弱者を食い物にするような悪い狼っていうかね……。病院潰れた方が幸せになれる人が増えるんじゃないですか。実際、病院潰れた地域は健康な人が増えるっていうデータもあるそうですよ」
そういえば地元のヤンキーや評判の悪い体育会系も看護師や介護士になったと聞いた。恵子はその事も思い出し、婚活パーティーでも全く笑えなかった。




