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ルッキズム狂想曲〜哀しき女達の場合〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・遊子の場合〜ケースバイケース〜

 朝比奈遊子は涙脆い性格だった。今日も二十六時間テレビというチャリティー番組を見ていた。身体や知的障害者が頑張っている様子が流され、号泣。


「そうよ、私もがんばろ!」


 すっかり励まされてしまった遊子は、婚活にチャレンジする事にした。我ながら影響受けやすいというか、単純な性格だと思ったが、素敵な王子様がいればいいな♪


 今の時代は少子化対策とし、市が税金で婚活パーティーも開いてくれる。遊子は三十代女性とし、市が開催する婚活パーティーに向かった。田舎の公民館でやっているパーティーで薄々嫌な予感はしたが……。


 女性は比較的小綺麗だったが、男性陣がヤバ……。作業服、パーカー、キャラクターのシャツを着ている者もいて、遊子の表情は引き攣る。


 それでもなんとか笑顔。今の時代は美人は税金、ブスは福祉の時代だ。ポリコレ、差別にも超うるさい。なんとか本音を隠し、男性陣に話しかける。


 一人、作業服のYさんという四十代男性に話しかけた。作業服以外は比較的マシだったから。


「俺、実はうつ病で精神障害者なんだ」

「そうなんですかー」


 しかし唐突な告白。差別ではなく、フツーに人として距離感がないような??? 


 その後、Yさんは障害者雇用などの愚痴を語っていた。労働と賃金が釣り合っていないようで、愚痴、愚痴、愚痴……。


「そ、そうなんですね。大変ですね!」


 笑顔で対応するしかない。


「でも、女性はいいよね。お茶汲みだけで仕事あるし。最悪、上司に谷間見せて枕営業すればいいしな」

「は、はあ……(何言ってるの!?この人!?)」

「っていうか女性は高望みすぎるんだよ。遊子さんも高望みだろ、高望み。婚活女なんてこんなのばっかり」


 笑うのに疲れた。ほうれい線あたりがひくひくと痛い。


「こんな俺みたいな障害者は誰も理解してくれないよ。あぁ、でも鬱って頭いい人がなる病気だし。俺は高学歴で頭いいから。不運で可哀想な俺……」

「そ、そうなんですね!」

「頭いいって辛いわー。俺の不幸は可哀想だけど、他人については一切考えないからよろしく」


 こんな悲惨な会話をしながら思う。「障害者」とひとくくりにしてはいけない。


 ケースバイケース。人それぞれ。その人個人の性格をちゃんと見ないといけない。「障害者=いい人」と公式を作るのも差別だ。逆差別とも言えよう。もしかしたら今のポリコレも同じような逆差別が生まれている可能性もある。


 こんなYさんと出会い、かえって障害者への差別意識が減ってしまった。悲惨な婚活パーティーだったが、遊子にとっては良い社会勉強になったらしい。

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