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ルッキズム狂想曲〜哀しき女達の場合〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・イケメンとブス

 ある男、Yは自他共に認めるイケメンだった。子供の頃から周囲の女性からチヤホヤされていた。こんな容姿を活かさないのは勿体無い。


 だからと言ってYouTuberになって面白い動画を作ったり、演技力を磨いて芸能人になるのも厳しい。Yはそうった才能がない事はよく自覚していた。だったらホストになるのも良いと思い、軽い気持ちでこの道に進んだ。


 最初は全く人気がでなかった。自分のようなルックスだけでは人気は出ない。


 壁に当たったYは心理学や少女漫画などを使い「女性心」を徹底的に研究、実践し、人気ホストのなっていった。女のタイプ別のマニュアルを作り、今は業界内でちょっとした虎の巻扱いだ。もちろん、後輩ホストには高額で売りつけ、一石二鳥の商売もしていた。


「され、今日もブスをターゲットにしてカモるか」


 特に依存度が強く、シンデレラ症候群に罹っているブスでもターゲットにするか。受け身ブスが一番Yが騙しやすいタイプだったのだが。


「このままいくと世界が終わるわ」


 一人のブスを上手く誘い、カフェでお茶ましたのは良かったが、こんな事を言ってきた。


 ブスによると、今は綺麗なルッキズム社会。綺麗で優等生でネットで失言しないようタイプが好まれる。


「でもそれってAIでよくない? つまり人がいない社会を望んでいるというわけよ」


 ブスのくせに妙に話が面白く、気づくとYも耳を傾けていた。


「こんなに人が必要としない世界の行末は、どうなると思う?」

「どうなるんだ?」


 Yは配膳ロボットからコーヒーやケーキを受け取る。確かにこういうロボットも一般的だ。無人カフェやコンビニも珍しくない。


「世界の終わりよ。もう世界は終わるわね」


 ブスのくせに。


 そう思うが、このブスには量産型ではない、個性はある。


 そう言えば今の世界の美人って、ルッキズム拗らせすぎて、量産型ばっかり?


「お前、面白い女だな」

「よく言われる。でも、本当にこのままいけば、世界は終わる」


 別にこんなブスは、どうでもいいが、カモにするのは、やめておくか。


 Yだって少なからず良心はあるのだ。それに男は案外ストライクゾーンは広い。


 このブスもアリか?


 今のところはナシだが、この女の面白い話は聞いてみたい。


「で、いつ世界が滅びるんだ?」


 Yはニヤニヤと笑いながら、女の話を聞いていた。

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